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  • 魔法の石

    小説です。8章までの魔女の話は無料です。 番外編の男の子の話は有料です。

最近の記事

人間にそれほど多様性はない

人工知能自体はただの処理能力で、 この事態で学ぶ必要があるのは物事の多くはパターン化が可能であるという事実だ。 押して転がすなら丸いタイヤになり四角いタイヤが生まれないのは当たり前だが、その事象がそうなっているパターンが複雑でもそのパターンが見つかっているということが新しい。例えば蝶が羽ばたいて嵐が起こる手順や風が吹いて桶屋が儲かるパターンを明確化できる。 これはIT処理をしなくても手動でも可能だ。ITは速度に過ぎない。夕焼けなら明日は晴れ、という天気予報のような

    • 画力があり過ぎて萌え絵需要に追いつけない人へ

      シンプルに描きたいのに難しく描いてしまう人、自分のデッサンを線でなぞればいいと思う。そこから便化して必要な曲線だけを残せばシンプルになる。 日本の目が顔の半分を占める系統の漫画は大正ロマン風の銅版画と元々ディズニーをパクった手塚形式由来だ。 つまり西洋のデッサンの精選された銅板やディズニーの写真トレス絵が由来であり、元を辿ればデッサンなのだ。それが簡略化されて漫画絵になる。 シンプルが先じゃなくて精密なデッサンが先にある。今は整線されたものにあふれている故に

      • 櫂に纏わりつく花弁

        川縁に白い花弁が流れている。空中を雪のように舞う花弁が水面に触れてひたりひたりとその群れに続き、水面を白く飾って流れていく。 一人きりで象牙の船をこいでいると銀の櫂に花弁がまとわりついた。 もしこの花弁を拭き取ろうと思えばその花弁は擦れて痛み、醜い茶色に変色して捨てられそのまま土にかえることだろう。 櫂の重みに嫌気がさしてふと顔を上げると新しい生活を始める人々が歩いていた。花見は休日に済ませたのだろうか、桜を眺める人もいない。私自身も風景として見過ごされていく。今日は平

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        • 日本蜜蜂の王国

          傲慢な女王蜂を革命家の働き蜂が倒した。革命家の働き蜂は女王蜂になった。 革命家の女王蜂は働き蜂が働きやすいように法律を整え、 働き蜂を褒めた「あなたたちは女王蜂より尊い」と。 すると働き蜂はこう言った。 「自分が偉いのであれば、自分も働かずに女王蜂のように生きるべきだ。それなのに私たちを働かせるとはどういうことだ。」 当の働き蜂自身が自分の労働の尊さを知らなかったのだった。 働き蜂は女王蜂に憧れていたがそれに手が届かないと思っており、自分自身を憎んでいた。

        人間にそれほど多様性はない

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        • 魔法の石
          9本

        記事

          これは貴方のことではない。

          貧乏人でも無欲で清らかな人もいるでしょう。 無名でも優秀な人もいるでしょう。 凡庸でも楽しい人や誰かを幸せにしたり喜ばせたりできる人もいるでしょう。 でも貴方じゃない。 金持ちと見れば狡いといい、 美人と見れば性格は悪いといい、 才能があれば調子に乗っているという貴方ではありません。 貧乏で凡庸で目立たない人間こそ本当は凄いのだと叫び、いざ自分より弱い人間を見ても自己責任だと言って嘲る貴方ではありません。 金持ちになって調子に乗って傲慢になる人もいるでしょう。 だから

          これは貴方のことではない。

          炭鉱に連れて行かれるカナリアの走馬灯

          私はなんの役にも立たないが、歌を歌う。 餌をやるうちに私に愛着を持つ鉱夫もいる。なんの愛想もしたわけではないのに優しい人だなと思った。 私は体が小さいので毒の許容量が小さく、毒を感知すると真っ先に悲鳴を上げて死ぬ。 「これ以上先に進めば毒で死ぬぞ」 「まだカナリア程度が死んだだけならば大丈夫だ。こいつの体が弱かったのかも知れん。よくあることだ。」 工夫達は奥へ進み続けた。 手ぶらで帰るほど、裕福な暮らしはしていなかったのだ。 だから毒ガスの多い炭鉱へ連

          炭鉱に連れて行かれるカナリアの走馬灯

          何もわかってない都会虫

          段ボールを抱えている子供がいる。 「それ捨てるの。」 うん。 こどもっぽいから。 これ持ってると、もう遊んでくれないって言われたの。 そんななんの役にもたたないものもっているほうがおかしいって。 「へぇー。そうなの。」 うん。じゃあね。 「おい、おまえ何持ってるんだよ。」 えっとこれは、わぁ! 「!おまえもこれ好きなのか!」 え… 「いや、本当にいいよなこれって!なあ!」 …うん!

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          何もわかってない都会虫

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          9章:(男の子の話)僕は救う

          さびれた街道に子供が座っている。住む家がないのだ。 学者風の痩せた人が通りかかった。 学者風の人は子供に言った。 「おいで。」 --------------------------------------------------- きれいな服と食事、そして物語風にした子供が楽しめる教育(魔女はとても教えることが得意だ。)、毎日を過ごす暖かい部屋と眠る場所、そして小さな子猫、 魔女は子供に全て与えた。 わあ、と子供ははしゃぎだした。風呂に入れて髪の毛を整えて服を着

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          9章:(男の子の話)僕は救う

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          夢日記(教員の夢)

          夢のなかでは教師をしていた。 小学校教師だった。 結局希望の職種に就職ができなかった私はデザイナーになれず、 家で通信教育をして教育免許を取り親の希望通りに教師になったらしい。 教師にもかかわらず子供を深く大事にしようなどとも考えることはできなかった。自分が子供のころは大人は全て子供のために最善を考えていると勘違いしていたが、案外みんな今の私のような気持ちで教壇に立っていたのかも知れないと思った。 作文を書く時間だった。 反抗する子供、 気に入られよう

          夢日記(教員の夢)

          「夢をあきらめない」という思想の退廃

          堅気の人と会話していると、夢をあきらめない系のコンテンツは縮小するだろうなと考えた。 殆どの人間が夢をあきらめなかったら、小学生の頃の将来の夢ランキング通りの割合になって国が崩壊するので、仮にすべての国民に「夢をあきらめない」意志が植え付けられたとしたら、国を挙げて阻止する事態になる。 まあ、実際そのような意志が全人類に根付くことはないからそのようなことにはならない。ここで言いたいのは単純計算して夢を叶えなかった人間のほうが圧倒的多数と言うことだ。 ただ、夢を売りたい教

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          「夢をあきらめない」という思想の退廃

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          第八章:私はなぜ救うのか

          実際宝石職人が死ぬかどうかはどうでもよかった。 既にすべてを失っているのだ。 ところで地中に埋めておいた宝石は無事だったようだ。 魔女は人里離れた場所に移り住み、宝石を使って生活した。彼女一人であれば宝石職人がいなくても生きていけるだろう。 魔女は宝石と子猫を交換しようと思い、学者風の姿に扮して街へ出かけた。 目当ての猫を買って店の外に出ると、さびれた街道にみすぼらしい子供が座っている。住む家がないのだ。 痩せこけて容姿は醜く、臭いもひどく、猫のように撫でてやりた

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          第八章:私はなぜ救うのか

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          第七章:瓦解

          ある朝、魔女が目を覚ますと宝石職人は一人もおらず、宝箱は空だった。 寝ぼけてまどろんだ眼は、虹彩も瞼も痛いほどに見開いた。目覚まし時計が止まっていたのに気が付いた時のような表情をして倉庫や工房を確認し、しばし唖然としたかと思うとはっと気が付いたように男のもとへ走った。 最悪の事態を想定しながら走ると、男は砕け散って宝石になっていた。 女は足が傷つくのも気にせずに細かな宝石の破片の上に崩れ落ちた。 しばらく人型の形に散らばった宝石を眺め、そこに男の姿を見つけ出そうとする

          第七章:瓦解

          第六章:宝石職人たち

          男は娘をあまり外に出したがらなかった。娘がいろいろと知ってしまえば自分を尊敬してくれないのではないかと思ったからだった。意図して命令して外に出さなかったのではない。無意識に奨めなかったのに近い。 娘は娘で猫を撫でて本を読んで学に興じ、ボードゲームの勝法を考案していれば満足だったので外に出たいとも思わなかった。 ある日男は魔法の石をつくれなくなった。 娘が持っていた残りの石を使って生きることはできたが、娘は不安定になり、男は自分を追い詰めた。 「どうして石がつくれなくな

          第六章:宝石職人たち

          第五章:魔法の石のつくりかた

          宝石で家を建てて娘は隠れ住んだ。宝石が半分になってくると、娘は不安になった。この先何があるかわからないのにこれで足りるのだろうか。 不安そうな娘を男は抱きしめた。 「心配しないで。君は魔法使いだったんだね。見てて。」 男は手をぎゅっと握るとしばらくして手品をするように手を開いた。そこには魔法の石があった。 「僕は魔法の石をつくることができる。少し疲れてしまうけど、君を助けるだけなら十分だ。」 「すごい!私ずっと宝石がどこで手に入るか知りたかったの。」 魔法使いが閉

          第五章:魔法の石のつくりかた

          第四章:追放

          魔法使いは帰ってくるなり娘の寝室を叩きあけた。 「その男はこの部屋には置けない。あちらへ返さねばならない。石をとられてしまう。」 服を着ていない男女二人にさして驚く様子もなく魔法使いは言った。 男は急な来客に怯えて慌てて下着をはこうとしながら床を這って隠れ逃げようとた。男は転倒し猫の尻尾を踏みつけて引っかかれている。 娘はその無様な姿に「情けない男だとは思っていたが、ここまでとは思わなかった」と呆れた。まあ、確かに魔法使いのことを知らないのであれば無理のない反応だ。裸

          第四章:追放

          第三章:猫を撫でる

          助けた男は大変感謝した。そしてしばらく自分をかくまってくれるという娘に好意を抱いた。若かったこともあり、同じ生活圏に容姿に問題のない男女が一緒にいれば自然なことだった。娘は珍しく彼を拒絶しなかった。理由はわからない。 「なぜ追われていたの」 「逃げ出してきたんだ。あそこにいたらいずれ乾いて死んでしまう。殺される。」 「大変な目にあったのね。」 あまり大変だった理由に興味はなかった。そんなことより今まで彼女を得ようと遠回しの駆け引きをしてきた連中とは異なり、純朴に自分の

          第三章:猫を撫でる