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【犬と私の出逢いの話 『犬と私のあぶくの足跡』② 】

“2003年4月2日生まれの
ミニチュアダックスの女の子が居る“と
知ったのは

2003年5月27日

仕事から帰って
疲れ果て
ソファーに横になり
「先住犬」を撫でながら読んだ

地方紙のフリーペーパーだった


✳︎

そう
犬が来る前

我が家には
既に
ミニチュアダックスの
先住犬の女の子(7歳)が居たのだ

私は
先住犬に出逢った瞬間に恋をして
其れは其れは
メロメロになって

世の中の
生まれたての赤ちゃんを見た瞬間
多くの親御さんが思われる感情

「目に入れても痛くない程の可愛い」とは
この事か!
と身に染みてわかる程

おもちゃを毎日買って帰り
おもちゃを壊されては喜び勇んで
また新たなおもちゃを買い

晴れた日にはお散歩へ行き
雨の日には犬がギブアップする迄
ボール投げや
家での運動会やかくれんぼをし

私が見てないと
ごはんを食べない先住犬の
ごはんタイムにずっと付き合い

ほんの少し耳を痒がる(数ミリの耳垢が付いてた)
ほんの少し食欲が落ちた(おやつは食べてる)
と言えば
ドクターの元へ連れて行き

東に美味しいおやつがあれば買いに行き
西に無添加のおやつがあれば買いに行き
南に無農薬で育てた牛の牛乳があれば買いに行き
北に体に良いカリカリがあれば買いに行き

蝶よ花よと
あらゆるモノを
貢ぎに貢いだ先住犬

✳︎

私は
そんな
“恋しくて堪らない“
7歳になった先住犬が

犬の寿命で言えば
折り返し地点に入った
先住犬が

死んじゃうのが
怖くて怖くて堪らなくなってきていた


✳︎

そんな時

フリーペーパーに
ダックスの女の子が居ると見た私は

「先住犬が死んじゃったら
生きていけないから
先住犬の
“スペア“になる犬が居たら良いかも知れない」

そう思ったのだ

✳︎

犬には
本当に申し訳ない動機だったと思ってるし
謝っても謝り切れない

そんな理由で
命を買ってはいけなかった

『命にスペアなど無い事』

若い私には
わからなかったのだ


✳︎

先住犬との
恋に落ちる出逢いとは遥かにかけ離れた
出逢いであったが

其れでも

犬と
犬がくれた
20年8ヶ月の時間のお陰で


これ以上

「命と“愛し愛される“事は無くても良いな」

そう思えている事

見えなくなった
死んじゃった犬に
ありがとうを届けたい

✳︎

さて
フリーペーパーを見た私は

先住犬と共に
すぐさま
ペットショップへと向かった

先住犬の「スペア」として
犬を
見に行ったペットショップ

小さくて
其れは其れは汚いペットショップ…

そして
肝心の犬はと言えば…

生後2ヶ月とは思えない2キロを超える大きさ


目と目が離れ
ダックスには珍しく
目に濃いアイラインが入り

毛並みは
茶色に黒の模様が不思議なカタチで入り混じる


お世辞にも
「かわいい」とは言えない姿形をしていた

✳︎

其れでも

犬は

私と先住犬を見た途端

飛び跳ねて 
短い尻尾をぶるんぶるんと振り
体全部で
「喜び」を表現してくれた

『ずーっと待ってたんだよ!
早くおうちに帰りたいんだよ!
早く連れて帰ってよ!』

そんな声が聞こえそうな喜び様だった

✳︎

私は
そんな喜びを体全部で表す犬を見ながら

先住犬の「スペア」を見に来たという事より

この汚いペットショップ
この犬の可愛いとは程遠い見た目

「このまま、此処にこの子を置いていけば
この子の命は長くは無いんだろうな」


という事が
頭から離れなくなったのだ


✳︎

そして
有無を言わさない勢いで
犬に付けられた「値段」の
お金を下ろす為に
銀行へと向かい

お金を握りしめ

慌てて
ペットショップへ戻った

✳︎

その
銀行からペットショップへの道中

名前だけは
“あっさり“
“すっと“決まった


その名前は
私が本当は付けて貰う筈だった名前で

その名前しか
相応しくない
そんな気持ちだけは
ただ強くあり

『15万円』で
犬を買った

✳︎

「自分勝手」に
スペアとして買いに来て

この犬の命を救うなんて
果てしなく「傲慢」な事を思う

其れが
犬と私の
美しくも無く
感動も無い
『出逢い』の話

✳︎

犬が死んじゃった今は
この出逢いの意味が
鮮明にわかる

✳︎

私が付けて貰うはずだった『名前』まで背負い
私の“分身“のように生きる為に

私の死んじゃった犬は
この世に生を受けたのだと


『私が犬を救ったんじゃ無い

犬が私を救いに来てくれたのだ』と

そんな事が
今の私には
痛い程
わかるのだ

✳︎

これが

20年8ヶ月
この世で
私と
“人生共同体“として生きた犬との出逢いだった


→【犬と犬と私の話  『犬と私のあぶくの足跡』③波乱の幕開け】






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