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高機能性をうたう野菜は売れるのか

よく、「カロチンたっぷり!」「アントシアニンたっぷり!」みたいな言葉をPOPに書いている野菜を目にする。

トマトだと、そういった差別化をしようという狙いを持った人は多く、高リコピンの商品も売り場に最近よく並んでいる。

もちろん、こういう技術開発が将来的に世界の食糧危機を防ぐ可能性もある(少量で十分な栄養が摂れれば、その分面積当たりで人の命を救うことはできる)


しかし、これが現実の小売店で売れるかというとそうでもない。

つい先日、とある野菜の消費者アンケートを取ったが、その野菜の特長の一つである栄養価等に興味を惹かれる消費者は多くなく、「食べ方」「料理の方法」を求める消費者の方が多いということが分かった。


これは、2つの理由があると思う。

1つは、日本の小売業では、野菜を選択する際に「どう美味しく食べられるか」情報を求める人が多い

もう1つは、その野菜単体の「栄養価」ということを気にするより、「バランスの良い食事をする」ということが生活の中で健康維持に大切なことだ、ということが浸透しているから。

スーパーマーケットでは、数多くの野菜が並ぶ。そのため、日本では真冬においても、夏野菜のピーマンやナスを使って料理ができるし、真夏でも白菜は(数はわずかだったとしても)手に入る野菜である。どの野菜をどう組み合わせて料理をするか、ある意味「恵まれた」状態である。トマトしか買えないのであればトマトの機能性を重視して買い物をしていくことはあるだろうが、夏場にトマトしか並んでないわけでもないし、これから先何らかの理由でトマトしか食べられなくなるわけではない。おそらく様々な栄養を色々な野菜、料理で摂ることができる。

なので、日本において、量販店向けの「機能性を高めた野菜」は、まだそこまでニーズは広くないだろうというのが私の見方である。実際、低カリウムの野菜など、一時期いくつかのお店で見ていたのが、だんだんとその数が少なくなっている。

ちなみに私は血圧の理由で低塩分のベーコンや食パンを買い求めるのだが、そこそこ高齢者が多い町に住んでいるにもかかわらずその品ぞろえは少ない。食パンは消費期限が圧倒的に短いということもあるが、少なく見積もって80種類程度のパンが並ぶ中で2種類しかなく、しょっちゅう品切れしている。

これから先、機能性が高い野菜のニーズも高まっていくのだろうか。もちろん、高齢化によって健康志向が高まることは事実だろう。

しかし、それを「機能性の高い生野菜を買うことで」健康になろうというよりは、「普通の野菜をたくさん、新鮮なうちに食べればよい」という考え方には及ばないかもしれない。結構、野菜を数多く食べてれば健康維持ができているだろうという考えの人は多いと思う。下記のリンクなどでもそうだが、「一日に数多くの野菜を摂りましょう」という情報の方が圧倒的に多い。それもそれで健康維持には大切なことだが。

では、高機能な野菜は必要ないのかというとそうではない。病気やそのほか理由があって食べるというだけでなく、一般の人がその野菜も使いたくなるようなことをしっかりと打ち出していくことが必要だと考える。

それには、『未病』などの考え方の普及、料理にしてさらに美味しいという付加価値がしっかりと入った高機能の野菜の登場というところが必要だと考える。ただの『栄養たっぷり野菜』だけではブランディングにならないということは十分注意して商品開発や販売をする必要がある。

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