海外でもコロナ支援はそうでもないことが分かる話

日本において、飲食店や観光業などのコロナ休業補償、生活支援が話題になっているが、しばしば海外のそれと比較される。

ドイツでは、フリーランス(芸術関係者)にはすぐに補償がされたとSNSで広がり、アメリカでは中小企業支援制度の金額が積み増しされたとの報道がされている。

しかし、アメリカ在住の後輩、同期に言わせると、そうでもないようだ。

ikezawa氏のブログ「政府の救済策に頼るつもりはない」
「政府の救済策であるPaycheck Protection Program、通称PPPは結構なレベルで酷いことになっている。僕の周辺で同ローンを獲得したという話は一切聞こえてこず、分かっていることは応募が殺到し準備金額の上限金額に達したためあっという間に申し込みが締め切りとなったということくらいであった。僕は前職は銀行の融資部勤務であったので山積みになった申請書類の前で呆然としている銀行員の姿が目に浮かび、これは相当時間がかかるだろうなとは思っていたが、どうやら政府のアナウンスによると既に多くの企業がローンを獲得しているという。
おかしいなと思っていたところ、こんなニュースが流れてきた。
株式や社債の発行など資金調達手段をいくつも持つ多くの大企業が制度の抜け穴をかいくぐってローンの多くを獲得しているとのこと。
Shake Shack’s Repaid $10 Million PPP Loan Cannot Be Used To Make New Loans To Small Businesses
Shake Shackはその多くの企業の中の一社に過ぎない。こんな状態では、資金待ちの間に倒産となる中小企業が多く出てきてもおかしくない。」

引用が長くなってしまったが、このように、「多くの企業へ支援を」というのは、言葉は素晴らしく聞こえるが、実態はスピード感があるわけでもないし、審査できるような機関(日本では商工会や公庫含む銀行や労働局)にめちゃめちゃ人がいるわけでもない。また、大手の企業でもこういう資金に手を出すとなると、不公平感を生むばかりである。

ドイツでも、保証金を得られたのはベルリンに住むわずかな人たちで、その後保障の支払いは滞っているらしい。

今回の様々な日本の補償制度においても、様々な問題点があると思う。

①一律で10万円の意味はあるのか。

不公平感や、もらっている人の差別感をなくす異議もあるというが、「私はもらわない」という某元大阪知事の発言などのように、もらう側のモラルをいじくるような発言はどうしたって出てくる。高額所得者はあとの申告で取り返せるというが、ではどこからが高額所得者であるとか、高額所得者でも、仕事が大変だろうからもらうべき職業の方(医療従事者など)の切り分けは難しい。


②ゾンビ企業の延命問題

この補償金で、延命できる企業がある。しかし、その企業はもはや活動が行き詰まっていて、本来なら今年の4月や5月で廃業となるべき企業までが生き延びてしまう恐れがある。何のせいで売り上げが下がったなど、本来は知る由もない。コロナのせいで客足が、、、というが、それ以前に経費構造がおかしな会社はたくさんある。そういう企業まで生き残らせることがいいのかと思う。


③あくまで雇用維持が目的である海外の制度

アメリカ中部でビジネスを展開している同期が、「借りても人件費に使わないと返済しなきゃいけないし、ビジネス再開してないのに人を雇ってもさせる事ないし。(なので、PPP申請しなかった)
てかコロナはしばらく続くから、人の金に頼ってたらいずれ商売潰れるよ。」とFBで投稿してくれた。
海外で怖いのは何より過去された人間による社会不安、という考えがあるのかもしれない。日本においてはまだ失業率が普段から低い方だったのでそこまで考えられてもいないのかもしれないが。アメリカは何かあるとすぐ解雇するので。
ちなみに、日本においても雇用調整助成金は「ただでもらえるもの」と勘違いしている人が多い。休業補償として支払っている分の最大90%が国から支払われるのだ。


④このお金はどこのもの?

補償の原資は税金であるし、それは大なり小なり国民すべてが負担していく。だれをどう助けても、それは回りまわっていつか自分が支払うのだ。しかも、それは生産世代である50歳代以下が多くを負担する。今回公明党が、支持者から突き上げられた形で一律給付を申しだしたそうだが、50歳以下のこれからの税負担が増える人に対してどう説明しているのだろう。
その不公平感についてマスコミは誰も指摘していないのだが、どうするつもりなのだろう?消費税を下げるという議論があったが、これは愚の骨頂で、むしろ上げないと、高齢者年金世代や高額納税者からの税金が取れない。貧乏人の負担を増やすよりは、全世代全国民から等しく取るすべも税としてはあるべきなのだ。所得税重視からを資産課税重視に切り替える方法はあるが、海外資産移転防止策の整備とともに語られるべきだろう(ただこれは国際協調が不可欠で、中国とかアメリカとかが反対しそうだが)。


⑤ 問われるのは自分自身のビジネス倫理観

先の同期の言葉にあるように、「人の金に頼っていたらビジネスつぶれる」のが第一なのである。
支援は必要だが、限られた金額で限られた人にというのが持論である。リーマンショックは金融システムの崩壊だが、コロナでは経済・生活基盤が揺らいでるという見方もあるが、それは詳細を分析していない。
固定費が高く、流動経費が高い(単純に言えば仕入れ率や人件費率が高い)産業が一番ダメージを受けている。すなわちラウンジなど夜の街だ。お店の家賃が一番の支出である。また、都心部の飲食店・カフェ(タリーズの元経営者が今更何かわめいているのもこれが理由)もこれにあたる。ごはんとお酒に地価が反映されていればするほど厳しい。ホテルなど観光産業などもローンが大きな負担となるだろう。農水産業は災害と考えれば、普段からの資金援助はそれなりにある。拡大すべきかどうかの議論はあるが。
鉄道・交通会社などインフラへのダメージも大きいが、長期的に見れば回復が目指せるので銀行が長期融資はできる余地はある。ただ、上記のお店は厳しい。そういう切り分け、雇用の維持の問題、どこに同資金を使うことが大切かを深く議論せず、「国民の生活を守る」ということで走り出してしまった。それに乗っかる企業がゾンビ含め続出していることがさらに拍車をかけている。このツケは大きくなることだろう。

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