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インプットログvol.1【薬屋のひとりごと】

こんばんは、語部の郁です。
創作を学ぶ上で、また新しい創作物の作る上で
必要なインプット

インプットとセットで必要なのは
アウトプット

ログ程度にはなりますが
面白かったと思ったものの感想を
残しておきたいなって思います。

今回は『アニメ版 薬屋のひとりごと
原作も読んでいますが、
アニメ版をメインに触れようと思います。

※批評ではなく、あくまで好み・感想です。
 誰かを批判するためではありませんので
 不用意な意見の切り取りなどはご遠慮ください。


【あらすじ】

私なりの言葉でさらっとあらすじを
まとめてみるとこんな感じ。

『花街に暮らす薬屋の娘・猫猫(マオマオ)が
ある日突然人さらいにあい、
売られた先はなんと後宮。

下働き(下女)として勤務中
妃たちに次々と事件が起こる。
少しの正義感が捨てられない彼女は
ばれない方法でアドバイスをしてしまう。

猫猫のアドバイスは
後宮の宦官である壬氏(ジンシ)により発見。
その後、玉葉妃(ギョクヨウひ)の宮付下女に
出世し、後宮の事件解決を請け負うことに…』

【きっかけ】

アニメ版をみるきっかけは
Youtube Shortで流れてきたからかも。
TOHOアニメーションのチャンネルで
切り抜きが流れてたものでした。

声や演技が好きな私としては、特に
主人公・猫猫の声優:悠木碧さんの
演技力に引き込まれました。

漫画も読んでいたのですが
読んでいた時に頭の中で鳴っていた
猫猫の声にとても近かったんです。

元来、漫画自体もとても読みやすく
主人公は子猫っぽくて愛らしい。
そのキャラクター性を反映した、
的確な役作りだなと納得しました。

女性声優さんの中でも
役の幅がとても広い方なので
素晴らしい演技力と解釈力だなと
毎話拝見しています。

【時代背景】

時代背景は作者の方曰く
16~19世紀と幅を持たせた
中国風の架空歴史のようですね。
※アンケートなどから

中国歴史ドラマの主要時代として
よく登場する清の乾隆帝は
1735年~1796年。

それプラス文化的な幅を
持たせた形の世界観と
しているのかもしれません。

【後宮という社会】

後宮は皇后が主として管理を任される
妃・跡継ぎ・皇女たちが生活をするエリア
中国の場合、未成年皇族以外の男性は
立入禁止だったようです。

ただ荷物や力仕事・交渉事、
皇帝からの伝令などは男性の仕事

後宮に入ることのできる
男性士官が宦官です。

宦官は去勢された男性である必要があり、
元々は去勢する刑罰、
またはその罪人を
指す時代があったようです。

しかし明以降時代が下るにつれ
士官として見られるようになり
志願するものも多く現れ
現在知られる形となりました。

作品内では、
皇后が不在上級妃が4名
後宮を管理する宦官・壬氏
その下女・猫猫がいる構造です。

史実の後宮では前述の通り
皇后が後宮の主となるため
皇后が在位しない期間は
少ないに越したことはありません。

しかし作品中ではその混乱も
うまく描くようにするためか
不在位の期間をわざと作っている様子。
率直になるほど!と思いました。

【妃たちの出自】

作品内で取り上げられる上級妃は4名と
史実の後宮と照らし合わせると
人数は少なめに設定されている様子。
 ※乾隆帝は妃だけで同時期12名ぐらいいます。

中央集権かつ国王制度では
周りにいる貴族階級が
国王周辺との親族関係により
自身の一族の権力を高めていきます。

史実でも和平や貿易活性のため
各民族の貴族の娘を後宮へ入れます。
中国では八旗(ハッキ)と呼ばれる
民族階級が存在しました。

八旗の権力関係図は一概に言えず
武官、士官にかかわらず
一族の地位を高めるためにも
妃に取り立てられることはとても重要です。

これは国家、時代を問いません。
日本でも平安初期から藤原氏が
権力を強められた一因として
外戚関係を強めたことが言えます。

※大河ドラマ『光る君へ』の中でも
 取り上げられてる時代です。
 (2024年2月現在)

作品内では西、南ということで
明言を避けていますが、
異なる民族から輿入れさせている
状況がよくわかる描写です。

イラスト描写での細かい指定はありませんが
モンゴル、漢、満州、ロシア
遠くなれば東欧に近い民族も
想定しているかもしれません。

【猫猫という主人公】

「猫猫は主人公らしい子」
ではありませんが
実に人間らしい子だなと感じます。

元々の性格は、非常に好奇心旺盛で
正義感が強く、いたずら好き、
物事に対する興味の差が激しい
そんな傾向が見て取れそうです。

環境起因の行動傾向は、
『目立ちすぎない』
『労力を使いすぎない』
『生きるための選択をする』の3点です。

女性を武器に使う社会で
うまく立ち回るためには、
上記の3点が猫猫にとっては
最重要だったのだと思われます。

これは男女問わずいえることですが
排斥の元となる感情は、
嫉妬・恐怖】からなるとも
一部云えるかもしれません。

特に【嫉妬】という感情
精神科医の名越康文先生曰く
人類の最も古くからある感情の一つ
と過去にお話しされていました。

この作品では後宮のシーンも含め
色合いの違う女性たちが
沢山描かれています。

花街では美貌・教養・ユーモア
後宮では寵愛・カリスマ性・判断力
圧倒的に求められていそうです。

薬屋として関連産業の隙間を縫って
商売をしてきた彼女には
この生き方が必要だったのだと
想像に難くありません。

その点、この作品は
真っ直ぐな性格では描き切れない
『人間らしい部分』を
垣間見ることができます。

この作品と猫猫の大好きな部分です。
前述したとおり、悠木碧さんの演技から
その性格を読み取れてきました。
本当に素晴らしかったです。

【相手役・壬氏】

この作品での相手役・壬氏は
宦官で後宮の管理を含めた
皇帝の補佐を務める官吏の一人です。

猫猫はただの宦官ではない
疑っているものの
関わると災いになりそうだとして
積極的には関わらないようにしていますね。

傾国と言わんばかりの容姿と声
キャラクターはよくありますが
その場合、設定上ナルシスト
姿を毛嫌いするタイプをよく見ます。

しかし壬氏は
極端にどちらかの気質が強い
キャラクターとしては
描かれていません。

作品中で描かれていますが
自身の美貌や振る舞いが
正しく利用すればするほど
上手く働くことを知っています

文武両方の官吏や派閥・貴族たちが
大量の思惑を施策にぶつけてくる、
それを何とか躱しながらも
自らが生きやすい場所を作る。

そのためには使えるものは何でも使う
という意外とど根性精神でいる点は
とても面白い点だと思います。

根本が根性論に似たものがあっても
スマートに見える対応をする、それは
壬氏にとって最大のリスクヘッジ。
そんな気がしています。

そんななか壬氏に都合よく
しかも面白い能力・コマにもなる
猫猫という少女がやってきた。

彼女は優秀だが
自分(壬氏)に興味がない。
壬氏にとってそれが新鮮で
たまらなかったでしょう。

また猫猫の思考の一つとして
人の美醜の把握するが、
美醜で人を評価をしていません


壬氏の周辺で側近や世話係以外
その対応をしている人間はいません。
猫猫を面白がる理由もよくわかります。

性格が子猫っぽいところも含め、
壬氏は猫猫に対して好意的なことが
最初の2話分でもよくわかります。
 ※ネタバレになるのでここぐらいまでに…。

壬氏は少年と青年の間を
行き来しているきらいがあります。
猫猫に安心と信頼を求めている
のかもしれませんね。

大塚剛央さんの演技も
とっても素敵でした。
若さと美貌、信頼を
声で表現するのは本当に難しいと思います…。

アニメ版で動きと声がのってから
より壬氏という人が生き生きと
猫猫を追いかけられるように
なっていると感じました。

個人的にはアニメ版として
見ていて好きだなと思った部分です。

【毒と薬】

『良薬口に苦し』
『毒薬変じて薬となる』
薬と毒に関することわざはたくさんあります。

毒と知っていて使った
体に良いと思って与えたら毒だった
苦手と毒をはき違えていた
など事件になることもしばしばあります。

しかし、『毒』は毒に充てれば薬、
ひいては良薬になることを
経験則で手に入れていますよね。

薬を売る者は両眼、
薬を用いる者は一眼、
薬を服するものは無眼

健康でいるためにも
自分の身の回りのモノは
どこからが毒で薬か
改めて勉強したいと思います。

人にも毒と薬があると思っています。
今の自分にとって良くない人は
その時だけ毒の人。
逃げるしかありません。

心にも毒を撒こうと
息まいている人もいます。
作品を見ていて
ここにも毒・薬があるなと感じました。

私も気を付けなければ。

【推理と時代のリンク】

ここまでもずいぶん長く書きましたが
もう少しだけ。
私見が強くなるので、
あくまでも参考程度でお願いします。

いわゆる推理モノと時代モノは
想像力で楽しみを倍増できる
コンテンツだと思っています。
かけ合わせればなおさら。

『薬屋のひとりごと』では
設定場所が架空とはいえ
大枠は「中国系時代モノ」と
推理モノ」のかけ合わせです。

時代モノ、歴史が絡むものを見るとき
私が大切にしている視点はコレです。

「自分がそこに暮らしていたら
どういう行動をとるだろうか?」

PC、スマートフォン、電化製品
そんなものは一切ありません。
甘味、肉魚の選択肢も、
下手をすれば米もまともにありません。

中国史は知識が浅いので
日本史で少しだけ例えます。
例えば江戸時代の照明は
蝋燭かクジラの油の行燈です。
(そもそも太陽と寝食を共にする生活でしたが…)

クジラ油の灯りは燃やすと
黒い煤が大量に出て
長屋の壁や障子、顔は
すぐ真っ黒になります。

海の生物の油なので
少し痛みが早いですが
今より捕獲量が多かったので
安く手に入ったようです。

もしそこに自分が暮らしていたら
部屋中に煤があるわけですから
きっと顔は煤だらけ。

お風呂屋さんに毎日通う町人も
一部いたようですが
着物の選択は毎日できません。
替えても肌着ぐらい。

衛生状況はどの場所も
今より良くありません。
長屋の物品は厠なども含めて
共用のものがたくさんありました。

ここに住んでいる自分や周りに
事件が起こるわけです。

同じ長屋の隣の住人が
夜中何者かに襲われたらしい。
ケガだけで済んだものの
大事なものを盗まれた。

隣に住むのは脱藩した浪人らしい。
剣の腕はあるようだが
どうやら逃げる際に
藩から盗んできたものがあるようで…?

とまぁこんな感じです。

前提条件がなくても楽しめるでしょうが
自分がその場にいたとしたら
どこまで自分事にできるかが
楽しめます。

異世界転生ものが流行ったのも
自分事にする想像が
とても楽しいからだと感じます。

その時に得た日常生活に使えない知識が
教養として人間として知識のぜい肉を
つけていけるんだと思います。

【最後に】

総じてとても好きな作品でした。
アニメも人気でしたし、
原作の小説・漫画ともに
良かったです。

サントラが中華ドラマを参考に
作っている部分もありそうだなと
勝手に感じていました。
それくらい、らしい質感がありました。

原作・アニメすべてにおいて
展開のテンポ感が
受け入れやすいなと
感じていました。

久しぶりにいい作品を
拝見できたと思います。
ありがとうございました。

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