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想像だけじゃ、人の温もりやエネルギーのぶつかりあいってわからない -群馬県 多文化共創担い手育成事業-(後編)

令和5年度、カタリバと群馬県は、地域で暮らす外国にルーツをもつ高校生がこの先も群馬県で自己実現ができるとともに、多様な背景をもった方々が共創し活気あふれる地域で在れることを目指し、連携を締結しました。群馬県多文化共創カンパニーに認証された地域企業(※注1)で、企業に赴いての1Dayインターン体験を軸に、約半年間のメンタリングと高校生自身が設定したキャリア実現への1歩「マイアクション」に取り組みました。

取組概要

半年間のプログラムを駆け抜けた高校生たちと、高校生たちが社会に手を伸ばしてつながった大人の方々との対話の様子をお伝えします📢

▼Rootsインターン実施までの想いや当日の様子はこちらから▼


企業との1Dayインターンが開催され、2ヶ月〜3ヶ月が経ったころ、Rootsインターンを共創してくださっている関係者を中心に群馬県庁で報告会を実施しました(群馬県町32階NETSUGEN)。報告会の前半では、外国ルーツの高校生たちがインターンを経て感じたふりかえりや、体験から触発されたチャレンジ(「マイアクション」)をプレゼンテーション形式で報告し、後半では大人・若者がともに今回の活動をふりかえる時間を持ちました。

共愛学園前橋国際大学国際社会学部の西舘先生をファシリテーターにお呼びし、3つの問いでお互いの体験をふりかえりました。

問い1:企業での体験をした当時と2ヶ月たったあとの自分をふりかえってみて、どう感じますか?

西舘先生:高校生の皆さんに、(企業での1Dayインターンに行った)当時の自分をふりかえってみながら、 今どういう風に感じてるのかなということをきいてみたいと思うんですけど…?

参加高校生Kさん:ふりかえってみて、今までにない経験をさせてもらって、これからの人生に役に立つと思っています。

西舘先生:これからの人生に役立つって、例えばどういうところが役立ちそうですか?

Kさん:CAD(コンピュータ上で製図を行うためのツール)をつかって家とか作って、そういう発想とかを他のところにも使えるんじゃないかって思ってます。

参加高校生Rさん:このインターンに参加して、私の1番大事の変わり(変化)は研究が好きになりました。 前に(進路や興味関心の)研究とか元々もしてたんだけど、そんなにしっかりやってなかったんですよ。

あと、自分は今までは、一番下ばっか。アルバイトでは下から2番のレベルで働いてるんですけど、(Rootsインターンで立場的に)上の人に会って、上は優しい人もいることに気づきました。あと、応援する社長さんとかもいます。それを考えて自信が上がりました。

参加高校生Tさん:久しぶりに相京さん(受け入れ企業の方)と会って、人の温もりを感じました。

大舞台に、緊張と照れながらも自分のことばで語る高校生たち

問い2:この事業を他の企業におすすめしたいですか?

西舘先生:次は企業のみなさんにお伺いしたくて、他の企業さんにおすすめしたいかどうかっていうことなんですが、いかがでしょうか。他の企業さんもありますけども、もし、みなさんがRootsインターンをもう1回やりませんかと言われたらどうしますか、ということも含めてお答えいただいてもいいかなと思います。

石川建設株式会社 髙橋さん:最初は(高校生が)緊張してるっていうのが、第一印象でありました。こちら側もちょっと緊張した面はありました。ですが、それ以外は特に日本の学生と変わったことはなかったですかね。逆に色々知りたいっていう気持ちが強いというのを感じました。 もし、継続どうですかという質問があれば、やらせてくださいっていうことですね。

石川建設株式会社 提箸さん:当日完成しなかったものを今日完成させていて、非常にびっくりして、いい作品ができていたと思います。高校生の発表をきいて本当に色々感じるものをですね、(これから彼らに出会う)みなさまも感じてもらって。彼ら(若者)も成長しながら今後も活躍できるんじゃないかなと思いました。

グローリーハイグレイス有限会社 相京さん:他の企業さんにもぜひこれやっていただきたいなと。日本の高校生を受け入れてる企業さんって多分たくさんあると思うので、 ぜひ(外国にルーツをもつ)彼・彼女たちの選択肢を広げるっていうのもあるんですけど、日本の地元の中小企業の方の選択肢を広げる、自分たちの視野を広げるっていうことでもプラスになるのではないかなと思います。

有限会社 農園星ノ環 星野さん:この事業、お話いただいた時は、戸惑いながら受けいれさせてもらいました。うちは農業法人だったので、来てもらう子たちが持って帰ってもらえるようなものがあるのかなっていうのは、すごい不安でした。でもインターンの当日もちゃんと形になってその時も良かったなと思ったんですけども、また今日こうして発表聞かせてもらって、本当にやってよかったなっていう風に感じました。

こんなふうにうちに来てくれたことを感じてくれて、また新たな自分の具体的なプランで、夢であったり、そういうのを発表してくれたっていうのはとても嬉しかったです。 感動しました。農業法人でも、今日みたいな形で、いい結果になったのかなと思えたので、 ぜひ、県内色んな業種の方がいらっしゃるいますし、自由に内容も相談させてもらいながら組み立てられるので、企業さんにやっていただければと思います。

多文化共創についてどんなハードルがあって、それをどう乗り越えていけばいいのか

西舘先生:これから初めてインターンを受け入れたり、外国の方を雇っていきたいなって考えている企業さんに向けて、例えばどんなハードルがあって、それをどうこう乗り越えていけばいいのかなということを感じたのですが、その点、どうでしょうか?

髙橋さん:ぜひ、学生さんを見て判断していただいて、 採用に向けて、こういったインターンにまず参加していただければいいかなと思っています。

相京さん:おっしゃるように1人目って、すごいハードルが高い。で、1人〜2人入ると、 コミュニティー、ネットワークがつながっていくのかなと思っています。外国の方も共通で業務をやっていくとか、丁寧に(つながっていく)。本当に基礎なんだけれども、それが実は日本人と外国人も同じ方向に向かってやるための話なのかなと。

星野さん:今回の事業は色々驚きがたくさんあって、やっぱり知らない世界というか今まで接点なかった子たちと会うというのは、非常に大きな驚きがあって。会社経営していく中で、そこでどういう風に考えて一緒に議論しながら、新しい道を作っていくかがすごく大切なことだと思うので、どうなるかわかんないけど、やってみる。面白いかもよっていう言い方でしか薦められないんですけど、でもきっといいことあるなっていう風には思います。

西舘先生:わかりました。ありがとうございます。同じようなクエスチョンを、高校生の皆さんにもきいてみたいと思います。

1つ1つ、高校生に、参加者に伝わるように
ことばを紡いでくださる企業のみなさん

問い3:今後インターンを他の生徒におすすめしたいですか?

西舘先生:今後のインターンなんですけども、他の生徒にすすめたいか、お友達にすすめたいかどうか、どうですか。

Kさん:貴重な体験をさせてもらったんですけど、こういう体験ってあんまりないですし、そういうところではやはり友人に薦めたいとは思います。そういう体験をして、これからの人生が変わるかもしれないし。 体験したとしてないではやっぱりそうやって違うものがあるので。(自分についても)もう一度やれるチャンスがあるなら、やりたいですね。もう一段階上に行けるチャンスでもあるので。

Rさん: 外国人のみじゃなくて、日本人の生徒たちもこういう機会に参加した方がいいと感じています。なぜなら、他に日本人の生徒たちもこの社会に出てくるんですよ。この社会の一員になる。なので(いっしょに参加することで)文化的に勉強になるかなと思います。

最初にカタリバさんがこういう機会をつくりました。あと、県庁の人も頑張りました。 あとは企業さんも私たちも色々なことを話しました。 私たちの話を聞いて、自分の話を聞かせて、私たちはどこでちょっと間違えてるか。それをこうすればいいかなとか。とても勉強になりました。

Tさん:すすめたいとは思ってるんですけど、やっぱり同じ高校生として、そこに行くときに1個大きなハードルがあるなって思っています。単純にめんどくさいってことで。もちろん1日インターンだとか、実際に行うときはすごいワクワクするし、楽しかったんですけど、その前の事前準備だとか、その後の振り返りだとか、なんの意味があるんだってちょっと考えちゃった時があって。

高校生としても、若い時って本当に自分がやりたいことしかやりたがらないわけで。でも、そこを1歩踏み出して、ふりかえりや準備がここ(報告会)に来た時に意味を見つけた感じにはなったんで、めんどくさいっていうとこを1歩踏み出してやってみる価値はほんとにあるなって思いました。だからすすめたいと思います。

西舘先生:友達はなんかめんどくさいって言うかもしれないけど、そういう友達にはどういう風に説得しますか?

Tさん:本当に経験してみないとわからない部分でもあるんで。想像だけじゃどうしても人の温もりとか関わりだとか、エネルギーのぶつかり合いっていうか、そういうとこは想像しきれない部分なんで、無理やり連れてくるしかないですね(笑)

まとめ:描くこと、つながること

西舘先生:今回のお話のポイントをまとめると、大きく2つあるかなと思います。

最初、理念的なところなんですけど、皆さんのこの事業の目的を2つあげてましたよね。「将来のイメージを描く」と「社会との繋がりを持ってもらう」こと。 今回のお話を聞いていて、将来のイメージを描いていくっていうことが、 すごく生徒さんたちの中に実感として、かつ、具体的に出てきてんじゃないかなと思いました。

生徒のプレゼンテーションの中で、さらっと流れてしまったかもしれないんですけども、実はすごくいいポイントがあって。例えばKさんだったら、最後の方に「何事にもぶつかって挑戦してみよう」っていう気になったって言ってましたよね。皆さんぶつかるって結構大変ですよね。ショックですし、疲れるし、大変だし。でもそこにぶつかっていこうという気持ちになってるんですよね。

Rさんは10年先の自分を考えてみるというキーワードがありました。このプログラムを通して10年先を想像できるようになったっていうのは、すごいことじゃないかなと思うんですね。さらに、Tさんはやりたいことの手がかりを探すっていうこと。 やりたいことはあるんだけども、どこから始めていいかわからないけど、手がかりをこのインターシップで描くことで、見出すことができたっていうメッセージを言ってくれてるのだと思います。

2点目はですね、 企業の方のディスカッションの中で僕もすごく気づいたんですけども、企業さんと高校生だけでは、このプログラムってやっぱり実現できなかったんですね。Rさんから「県庁の人も頑張って、企業も頑張った」と言ってましたけども、県も企業も学校もなんですけども、実はNPOさんですとか、そのような立場の人が関わっていく意義っていうのはすごく大きいなっていう風に思うんですよね。まさに2点目のポイントで、やっぱり繋ぐ人や、繋ぐ段階の重要性ということかなと感じました。

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県の事業担当者:皆様、今日はお集まりいただき、どうもありがとうございました。群馬県として初めて開催した事業ですけれども、今、参加した生徒さんたちの報告を聞いて、「本当に良い仕事ができたな」と実感をいたしました。また、生徒さんたちからも「県庁の方も頑張っている」と今後の励みになる言葉もいただき、うれしかったです。ただ、この事業は、カタリバさんのコーディネートを軸に、学校や参加企業の方、そして西舘先生のご協力があって実現できたと思っています。参加した生徒さんたち、企業の方たちから「(この事業は)良いことしかない」と言っていただけたので、来年度も良いものをつくっていきたいと強く感じました。本当に今日はありがとうございました。

さいしょの一歩を踏み出した参加者同士で、お互いをたたえあいました。
みなさん、ありがとうございました!

NPOカタリバ Rootsプロジェクト(外国ルーツの高校生支援事業)では、引き続き、社会とともに誰もが活躍できる仕組みの構築を目指していきます。noteでも発信を続けていきますので、気になってくださった方は今後も見守っていただけると嬉しいです🌞

●当日のスライドはこちらからご覧いただけます(高校生の発表スライドはp16~)


※注1 群馬県では、令和3年4月に施行した「群馬県多文化共生・共創推進条例」に掲げる多文化共生・共創社会の実現に向けて、県内企業の外国人材受入環境作りを促進するとともに、外国人材に群馬県を「働く場」として選んでもらうため、令和3年6月に「群馬県多文化共創カンパニー認証制度」を創設しました。外国人材を雇用し、彼らを「仲間」として迎え入れ、ともに活力を創り出している事業者を認証しています。

サムネイルの写真は、参加高校生である伊勢崎工業高校定時制課程2年のラハマンさんが提供してくれました。


■群馬県「多文化共創担い手育成事業」とは
「多文化共生・共創推進条例」を制定している群馬県では、その実現に向けて、ともに価値を創造する外国人材の確保が課題となっています。そこで、群馬県は、将来を担う若い世代の多文化共創への参画を推進するため、今年度から新たに「Rootsインターン」の取り組みを始めました。この取り組みにより、外国人県民を多文化共創社会の担い手として育んでいきます。

■「Rootsプロジェクト」とは
Rootsプロジェクトは、国籍や生い立ちに関係なく、日本にいるすべての人に「社会に居場所がある状態をつくる」ことを目指し、学校内外での学習支援・キャリア支援に取り組む事業です。Rootsインターンは、外国ルーツの高校生がキャリアを考える中で直面する言語・文化・価値観の違いで生まれる社会との壁を、職業体験を通じた対話を通して子どもと企業が双方に考える機会をつくっています。この取り組みは、彼らへの認知・理解や日本で働くことへの期待を育むことを目指しています。

問い合わせ先:
認定特定非営利活動法人カタリバ Rootsプロジェクト(外国ルーツの高校生支援)roots@katariba.net