嘉多里みち(かたりみち)

まずは自分のために綴りたい。その本音が、いつか誰かの心を”掬えたら”幸せです。

嘉多里みち(かたりみち)

まずは自分のために綴りたい。その本音が、いつか誰かの心を”掬えたら”幸せです。

最近の記事

春の夜に、遺書を書く

遺書は、初めて書く。 いざ書こうとすると何を書いていいか分からない。まだ22年しか生きていないし、働いたことだってない。 店頭に並ぶ、さくら色のクッキー、さくらの香るコロン。 パステルカラーに身を包んだ、春限定の雑貨を眺めながら、ショーウィンドウにうつる自分は、まるで透明人間になりかけたように、ぼんやりとした輪郭だ。 色なんてこの世から消えさったような、リクルートスーツに身を包み、来年の自分が骨を埋める墓場を探す。 就活と、終活。 「同じシューカツなんだから、まずは遺書

    • 夢の途中

      エメラルドグリーンは、海の色。 いつか人魚になりたいと、望んだ月日は過去のもの。 泡と消えゆく運命(さだめ)とは、異なる運命(さだめ)に息詰める。 希望の羽根をすりつぶし、土くれの中に忍ばせて。 輝くレンガで城建てて、ひとり静かに閉じこもる。 魔女は呪いをかけたんだ。 なりたい自分を押し込めて。 自分に呪いをかけたんだ。 かつて憧れ羨んだ、人魚に呪いをかけぬよう。 遠くに見えるエメラルド。 窓から見てはため息を。 海風のせて、運んだら。 レンガの壁からこぼれ出す、 希望

      • 私の漢字、2020

        自分にとっての「今年の漢字」を考えるのが好き。 私にとって今年は「整」えた一年だったなと思う。 未来の自分に、私はこんなふうに生きてたよ、と耳打ちするように、今年の私を振り返ろう。 社会人になって数年。不安定になる心の扱い方にそろそろ慣れたい。そう心に決めて、心を整えるべくいろんなことに手を出したな。 ひとつずつ、私を今年助けてくれた出会いを綴るからね。 【生活編】 ①食洗機 半年米を炊かないなんてざらな、外食大好き女子な私。ファミレス大好き。でも、コロナで在宅期間が長く

        • これが私

          びっくりするくらい、泣いている。 予約したクリスマスコフレのレビューを見るため、Youtubeを見ていたつもりだった。 早く届かないかな〜と上機嫌でメイク動画の一覧を眺めてたはずなのに。 サジェストでなぜか、この動画が目に入った。 「ヒュー・ジャックマンも感涙!映画『グレイテスト・ショーマン』「This Is Me」ワークショップセッションの様子」 気づけば泣いていた。号泣だった。 今日の私は、落ち込んでいない。 お気に入りの雑誌の最新号を買って紅茶を飲みながらそれ

          結婚も死も、もっと遠いものだったはずなのに。

          実家に帰るのが、いつからか苦手になっていた。 家族とは不仲ではない。  ただ、ここは思い出が多すぎる。   大学を卒業するまで、ずっとここにいた。 入学式も卒業式も、初めて告白された日も、初めてキスをした日も、初めてデートに行った日も、初めてバイトに行った日も、最後のバイトから帰った日も、ずっとずっとこの家で過ごした。 目を瞑れば、昔の私がそこにいる。 リビングは母と深夜のニュースを見ながら、毎日他愛もない話をした。学校が早く終わる日は、ミヤネ屋のあとの再放送のドラマ

          結婚も死も、もっと遠いものだったはずなのに。

          君の敵は、うつよ

          私は文章を書きたい。 文章で人を救うプロになりたい。 自分がかつて文学に救われたように、救う側にまわりたい。 「そっち側に行かせてよ」 消費者でいつづけることは、あまりにも無力だ。 誰かがつくったものをありがたく享受しつづけるーーそれはなんらおかしいことでも、恥ずべきことでもないとわかっているのに、なぜか自分はそこから抜けだしたいという感覚が、子供の時から抜けない。 自分も作り手にまわりたい。 どろどろした気持ちが、いつも胸の中で渦巻いている。 なのに。 いつも向こう側