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あれもこれもストーリー

テレビの通販番組は「これ便利」「あるといい」「欲しい」と思われ購入してもらうのが目的ですから、そういう流れ、構成ですね。

「こんな時あるでしょ?」「とても不便でしょ?」「そんな時にこれ」「とても楽チンです」「こういう機能があってさらに付属品もこんな」「でも使い方が難しそうですね」「その心配は当然。なのでサポートを充実させました」「ここまで付いてこのお値段」「採算度外視です。数量限定ですのでぜひこの機会に」

買っちゃいますねぇ。うまいもの。

普段の生活のあるある。そこに登場する新製品。その実演。でもいいことばかりじゃなく不安もある。ちゃんと拾います。拾うことでさらに信用を得る。そして不安への対応、払拭。値段を示してお得感。数量限定や期間限定のレア感。たまたま目にしたこの機会を逃がしていいの? 買います買います!

そこに導くための要素が無駄なく並び、これまさにストーリーですね。

メールのサポート業務を数年したことありますが、そこにもストーリー的な流れ、コツがありました。

まず問い合わせのお礼、挨拶。そして問い合わせの内容を確認する意味での反復。様々な可能性を潰して原因を特定し、でも文章は盛り込み過ぎると混乱します。案内はシンプルに、ストレートを心がける。やたら謝ったりはいけません。文字で残すのは危険。つけ込まれる。しかし「お手数をおかけすること」や「わかりにくい点」などの無難な点は詫びる。それは低姿勢を保つため。相手に冷静でいてもらうため。穏便に、納得ずくで終われるように話を持っていく。

電話では臨機応変な対応が可能です。やりとりの中で伝えたいことが伝わったか、理解されたかが窺えますが、メールでは難しい。問い合わせも回答も一方通行で何度も往復できません。相手によっては欲しい情報をくれず状況を想像するしかないことも。それでは案内が当然膨らみます。説明が多岐に渡りストレートな誘導は難しく、それでも極力緩やかなカーブを描き、時には事務的な箇条書きの方がよかったり。場合によって最適な方法を選ぶ。

データ分析の仕事もしましたが、これも同様、ストーリー的な思考が必要でした。

全部を報告するわけにいかないから取捨選択する。主要なものを集め、ただし似たものが多いと読む方は厭きる。1つ1つへの感銘度が落ちる。なのでなるべく多様なものを拾い、しかし近似のものはまとめて他と分ける。順番も大事です。メリハリをつけるよりグラデーションで見せる方が流れるように入る。ただし編集するにも限度、節度があります。順番は最後に持ってきたものが一番印象に残る。結論と取られる。何をラストに持ってくるか。取捨選択にしても削り過ぎてはオリジナルのニュアンスを損なう。報告なのでそこは変えちゃいけない。あまり特殊なものは省きますが、それは全体の印象を変えてしまうから。しかし引っかかりを残さないと意味ない場合もある。そこらの加減が難しい。

こういう頭の働かせ方は何も仕事だけじゃありませんね。日常のいろんな場面で、誰もが自然に使ってると思います。例えばおしゃべり。

まずは残念なケースから。オチを先に言っちゃう人っていますね。オチを前に自分で笑っちゃう人も。

台無しッスねぇあれ。

話が長い人もいます。何を話したいのか、どこに向かおうとしてるのかわからないと聞く方は不安なんですが、それに無頓着なんでしょう。気ままに自分の言いたいことだけしゃべってる。相手のことを考えてない。

苦痛ですねぇ。

話し上手な人はまず相手に興味を持ってもらおうとします。ツカミ。謎を提示したり、身近な話題から入ったり。そして説明ですが、これはクドいとダメだし足りなくてもいけない。相手を見て探り探り、微調整するものでしょう。カンがいい相手には最小限に。そうでない人には噛み砕いて、時には盛ったり繰り返したり。でも説明からオチが見えちゃうとダメだから話を散らす。あえてそっぽの話をして、そこからオチに持っていくと「へぇ」と感心される。

これらもストーリーを組み立てる能力ですね。いろいろ役に立ってるんだと思います。物語にするから伝わるし、理解されるし、円滑に行く。そういう意味でも物語は必要なものでしょう。

物語についてのエッセイ・目次

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