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電楽の短編

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2019年9月の記事一覧

魅々子です。お菓子を作りにきました。

魅々子です。お菓子を作りにきました。

 秋風が吹く深夜の住宅街。大音量のJ-popが虫たちの眠りを覚ます。騒音はアパートの105号室、ブブ崎の部屋からだ。彼はいつも通り女とソファに腰掛け、ボボ谷とベベ村をフローリングに座らせていた。

「ナァ!昨日でいくらよ。」

 ブブ崎は空のビール缶片手に、ベベ村の方を向く。ベベ村は自己肯定感の低そうな笑みを浮かべながら答える。

「き、昨日は3万でした……。な、なんか高校生はあんま金持ってないみ

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1e+200物語

1e+200物語

部屋には、白い血管のようなものが形作った椅子とテーブルが生えている。その日、素体回収科の涪h4は同僚の麽c6の部屋にお邪魔していた。
素体回収科とは、不慮の事故やトラブルで稼働不可になった天者の体を、再利用のため回収する仕事だ。そして彼らの話題といえば、決まって稼働停止理由の推理だった。涪h4は今日起こった出来事で普段より熱が入っていた。

「それで部屋に入ると、素体は胡座を組んでたん

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