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刀鑑賞は茎から

刀鑑賞と言えば一番に目がいくのが姿や刃文であり次に地鉄だったわけだが、一番先に見るべきは実は茎であり、その次に地鉄や刃文に目を移すべきというのが刀に少しのめり込んできたら感じる事ではないだろうか。

地刃は研ぎで見た目を変える事も出来るし、研ぎが上手い人は傷も上手く隠すし、刃の無い所にまるで刃があるかのように刃を描くのも上手い。
しかし茎はいじれば何かしら跡が残る。
銘を消したりすれば鎬筋に微妙なブレが生じたり、錆付し直す必要があるので鎺下を見ると錆色が不自然に変わっていたり、雑なものだと妙に錆際が真っすぐになっていたりする。
茎が繋がれた場合も反り具合や鎬筋の繋がりに違和感が出るし、出ないほどに上手く繋がれても繋いだ部分は表裏に線が出ていたり、その上で錆付し直したような跡が見られたりする。
茎がカサカサして銘のあたりが白くなっていたり、やたらと表面がゴツゴツしている場合は一度火に焼けているかもしれない。

こう考えていくと、地刃を見れば研ぎ減り具合や疵の有無、刃の有無などは分かるかもしれないが、もっと根本的な問題、偽銘や再刃かどうかなどの後に大問題になるような判断箇所は茎に集中しているようにも思える。
故に極論を言ってしまえば、茎を錆付けし直した跡が見られれば警戒するに越した事はないと感じるのだがどうだろうか。
まぁ上手い人はそこすらも完璧にこなしているかもしれないが、そうした場合はもう判断のしようがないのでしょうがない。

そんな事もあり鑑賞会などでは茎を見れる時間というのをもっと長く取ってもらいよく鑑賞したいというのが本音なのだが、鑑定刀になると入札時間と解説に多く時間を取られてしまい結局解説後、撤収までの数回、数分程度しか茎を見る事が出来ない。
既に正真作と判断され鑑定刀に並ぶような刀であれば茎もしっかりしている場合が殆どであるし、作者を当てる事だけにフォーカスすれば茎を見る必要はないので姿や地鉄、刃文だけ見てれば良いというのも分かる気がするが、そのような見方だけだと何かもっと鑑賞における重要な点を見落としているような気にもなってくる。

またオークション等で本物か偽物かの判断をする際も、刃や地鉄が正真作と似ているか、銘の形が正真作と似ているなどを本と見比べながら判断するよりも、茎がいじられていないかだけを見る方がまだ難易度が低いのではないだろうか。
銘はもはやそっくりに切られているし、地刃の出来なども写真だけで判断するのはなかなかに難しい。
銘がそれっぽくても茎が変な刀はオークションに実に沢山存在しているが、そうした刀に凄い金額が入札されているのを見ると茎を重視して見ている人はそう多くないのかもしれない。

茎がいじられた形跡がなければ仮に偽銘として過去に審査に落ちたような作であっても、本当に偽銘なのかなど自分なりに研究する余地が残っているという点で楽しめる作が多いような気もする。
これは仮に研ぎ減っていたとしてもしっかりした時代のある刀という点で入札する価値のある刀ではないだろうかと個人的には思う。
一方で重要指定になっていても茎が変な刀が少なからず存在している。
こうした事が「紙だけを見て買うな」と言われる所以だろう。

「茎千両」という言葉があるが、その言葉の真意はこうした所にあるのではないかと感じる今日この頃。
因みに茎の見方について参考になった本を挙げると以下のようなもの。

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