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「現代刀職展2023 前期展示」を見て【後編】
昨日の続きで「現代刀職展2023」を見て個人的に特に気になった作品の紹介です。
前編は以下からご覧ください。
④鐔
・福山葵(愛遠移)さん
![](https://assets.st-note.com/img/1693832743714-jPZiWQvYCR.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1693832282513-AnwenvPrIO.jpg?width=800)
葉の部分が左側は彫り込まれているのですが、右側になると途中から立体的に飛び出してきています。
そのような動きのある表現や金属を変える事で色を変えた葡萄の構図、捻り耳の造り込みなど上手く、引き込まれました。
時代の色も付き素銅の色がくすんでくると更に風情ある素晴らしい作品になりそうで経年変化も楽しめそうな鐔に感じました。
・柳川清次さん
![](https://assets.st-note.com/img/1693832827320-jHnWyjylO2.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1693832821865-37jWRNdieH.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1693832913377-D8TrDeh6Z8.jpg?width=800)
荒木東明の粟穂図を写したと思われる作。
金で作られた粟穂を1つづつ付けている作風は本歌の手法そのままで、葉の先の色を色金を使い変えるなど非常に細かいところまで再現されている印象を受けました。魚々子も円形に綺麗に配されていました。
側面から見ると粟穂の立体感も実感出来ます。
・片山恒(重恒)さん
![](https://assets.st-note.com/img/1693832670913-7eZCqdymPn.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1693832641027-PsokO8YQGb.jpg?width=800)
こちらの鐔、Twitterで製作背景を知っていたのでずっと気になっていた鐔でした。
『黄銅地 茜図 短刀鐔』
— ガルシアP (@gar_cia_P) June 22, 2023
亡き妻を偲んで鐔の作成を依頼しました。図案を「茜」の花で、とお願いしました。
妻の名です。https://t.co/euhTFpt0m7
亡き奥様を偲び奥様の名前から「茜」の花を鐔に入れて頂いたようです。
毛彫の文字は万葉集「あかねさす 紫野行き標野行き(野守は 見ずや君が袖振る)」であり、現代語訳はこちらのサイトを見ると、「紫草の生えた野を行き、標野を行きながら(標野の)見張りが見やしないか、いや、見てしまうでしょう。あなたが(あっちへ行きこっちへ行きながら私に)袖を振るのを。」という恋の歌のようです。
鐔としての完成度が高いのは勿論ですが、それ以上に感じる物が一番あった一枚でした。
⑤鎺(ハバキ)
・三島幹則さん
![](https://assets.st-note.com/img/1693834490418-zQKQtsH944.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1693834442943-SlFyZ6bSST.jpg?width=800)
二重鎺なので、下の黒い部分(下貝)と上の金の部分(上貝)で分解出来るようになっているのですが、下貝は素銅地に赤銅、上貝は素銅に金を着せて作られています。
このように赤銅と金を合わせるような色味の鎺は古い物では殆ど見ない気がして現代流行っているようにも感じますが、何とも上品で格調の高い仕上がりに見えました。
常に見る金着二重鎺よりも刀身がかなり映えそうです。
⑥刀装
・松島享さん
![](https://assets.st-note.com/img/1693835011656-FBxMBZWYSD.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1693834991680-bbsr9MllWg.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1693835002009-3WCyo8oU0c.png?width=800)
鳳凰の図を加賀蒔絵で表現した豪華な合口短刀拵。
鳳凰の顔や葉の一部に螺鈿を施す事で、指色となり全体の色の均衡が保たれているように感じ非常に美しかったです。
このような美しい蒔絵が出来る方が今もいらっしゃる事に嬉しさが込み上げてきます。
⑦柄巻
・久保謙太郎さん
![](https://assets.st-note.com/img/1693835358595-Kr3xTHnZ5A.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1693835346039-0EGI7PvD2X.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1693835320610-L4IerPmYOJ.jpg?width=800)
柄巻きについては私自身もまだまだ分からない事だらけなのですが、折角なので以前飯山隆司さんから教えて頂いた柄巻きの上手い下手の見方を基に見ていたところ、一番気になった作品が久保さんの柄巻で上手いとされる条件を全て満たしているように見え、美しく感じました。
⑧終わりに
という事で、個人的に特に気になった作を紹介しました。
当然の事ながら個人の趣向が多分に含まれていますので、このブログに載っていない作品で素晴らしい作品も沢山あります。
いずれにしても日本にいるトップクラスの刀の職人方の作品の中から自分の好きになった作品やお気に入りの職人を探す、というのは現代刀職展の醍醐味のような気も最近はしています。
因みにこの現代刀職展、最高賞を獲っても賞金は微々たるもので、刀を1振作れる金額すらももらえません。
かつ職人と愛刀家を繋ぐサービスが提供されるわけでもなく、日刀保は本当に職人を応援する気があるのか?と個人的には疑問に感じます。
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これは賞を一回獲ったくらいでは生活がままならないという事であり、生活していく為には当然ながらお客さんが付かないといけないわけです。
そんな背景もあるので、是非気に入った職人さんが見つかった場合は研ぎでも拵作りでも仕事を依頼されると職人の方も生活ができて良いかと思います。
ただ中には連絡が途絶えてしまったり納期を守らないルーズな職人もいるようで、直接依頼するにはそうしたリスクもあります。
この辺り日刀保を経由してリスクを最小化しながら自由に依頼出来たりするとありがたいと愛刀家視点で思うのですが。(刀剣店経由だとお店と付き合いのある職人に依頼することになるので、依頼したい職人が居た場合にどう頼めば良いか分からなくなってしまいます)
故にコンクールで気になった職人に例えばQRコードなどを読み込んでその場で日刀保経由で依頼出来る(もし何かトラブルがあっても日刀保が保証してくれる)、そういう仕組みがあったら便利だなと思った次第です。
話が逸れましたが、現代刀職展は前期展示が9/10まで、後期展示が9/12~10/15までですので、気になる方は是非行かれてみてはいかがでしょうか!
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今回も読んで下さりありがとうございました!
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それでは皆様良き御刀ライフを~!
前編はこちら↓
![](https://assets.st-note.com/img/1693837461931-9S1qUUi2rx.jpg?width=800)
↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
![](https://assets.st-note.com/img/1693837461892-ZwC9LXdCaq.jpg?width=800)
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