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2021年5月の記事一覧

無銘にも色々

無銘にも色々

一言に無銘と言っても誰もがこれは○○の作だと言う無銘もあれば、見せる人皆バラバラの意見が出る作もあります。
前者はいわゆる典型作と言われるものです。

①誰が見ても納得の典型作例えば以下の悠樂菴さんの刀は無銘月山ですが、これだけ綾杉肌が顕著に出ていれば誰が見ても「あ、これは月山だ」と言うでしょう。

以下の長光の作も長光の特徴とされる三作帽子がよく見て取れますし、刃文も匂い口が締まりつつも刃が明る

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「あ、この刀同じ作者だ。」は画像からも感じる

「あ、この刀同じ作者だ。」は画像からも感じる

以前所有している刀と同じ刀工作が入札鑑定で出ると時々直感的に「あ、この刀は○○だ」と分かる時がある、という話を書きましたが、これは入札鑑定の時だけでは無くて画像で見ている場合も同じだったりします。
ただ画像の場合は刃文が見えない事も多いので、姿や地景といった情報からのみの判断となってしまうわけですが。

という事で所有刀とe国宝の掲載刀を比較してみてどう同じだと感じたのかを書いてみます。
(同じだ

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小さな展示ルーム、兼作業場を作ります(続)

小さな展示ルーム、兼作業場を作ります(続)

兼ねてより作業の合間を見ながら少しづつ進めている刀の展示ケースを飾る展示ルームですが合間で少しづつ進めていて、この度照明の交換と壁紙の貼り換えまで終わりました!
前回の記事はコチラ。

以下が初期の部屋。

家賃が安いだけあって所々ボロい…そして何といってもライトが昭和…!
という事でライトの変更はマスト。
刀を飾るのでスポットライトを取り付け。
次に壁紙。
写真で見ると結構白く見えるんですが、近

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刀の画像が見放題「e国宝」

刀の画像が見放題「e国宝」

今回は言わずと知れた名サイトを紹介します。
刀好きであれば気に入るサイトだと思うのでまだ見た事が無い方は是非一度クリックして見て下さい。
という事で今回は「e国宝」のここが凄い!を紹介します。

①e国宝のここが凄い!・画像のズーム倍率の高さ何といっても画像をかなり大きくズーム出来る点です。
例えば童子切安綱。
元はこのサイズですが、、

なんとここまでズームできます!!

刃の部分もこの通り。地

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寝刃(ねたば)とは

寝刃(ねたば)とは

刀の切れ味を良くするために刃先に細かな疵を数多くつけたものを「寝刃」と言います。(どう疵をつけるかは③に書いています)
また寝刃をつけることを「寝刃を合わせる」とも言います。

今回の記事を書くに当たり、以下のサイトと日本刀大百科事典(著:福永酔剣)」を参考にさせて頂いております。

①寝刃による切れ味の変化上記ブログでは、まず綺麗に研ぎ上がった状態の刀の刃先にティッシュを小さくたたんで何重にもし

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刃切れの刀はなぜ公の場であまり売られないのか?

刃切れの刀はなぜ公の場であまり売られないのか?

刀の疵の1つに「刃切れ」があります。
この疵は刀の疵の中でも最も嫌われている疵の一つと言っても過言ではないと思うのですが、恐らく初心者の人からすればその見た目から「そこまでの傷なの?」と思う人もいるかもしれません。

①刃切れとは刃から横にスッと線のように入った疵のことを言います。
これは焼き入れの際に刀が反ろうとする力に耐えられなかったり、外部から強い衝撃を加えられたことによって入るとされ、この

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眠い刃とは

眠い刃とは

見ていると眠くなる刃…ではありません。
(…いやもしかすると過去に眠くなった人がそう名付けたのかもしれない。呼び方の由来は不明)

刀の刃文は明るくキラッと目に飛び込んでくるものもあればその反対もあり、眠い刃とは後者の事を指します。
刃文の境目である匂口がはっきりしないようなものを指すようで、「沈んだ匂口」と近い意で使われていると思われます。
一般的にあまり褒め言葉としては使われないようです。

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初期刀が生駒光忠という愛刀家

初期刀が生駒光忠という愛刀家

初期刀、つまり初めて手にした刀。
それが現国宝の「生駒光忠」という何とも贅沢な愛刀家がいました。
それが細川護立(1883年~1970年)です。
一体どんな人だったのでしょうか。
今回は古今東西の第1級の美術品から書籍、文房具まで、己の眼を信じひたすら美を求め続けた希代の美術蒐集家である細川護立氏について迫ります。(この記事は「薫山刀話」を参考資料にして書いています)

(画像転載元:古美術光悦)

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江戸時代の武士の服装は身分ごとに決まっていた(下級武士編)

江戸時代の武士の服装は身分ごとに決まっていた(下級武士編)

前回は位の高い武士の服装について書いたので、今回は位の低い下級武士の服装を上から順に紹介します。

①黒紋付羽織&着流し同心のスタイルです。
同心は江戸幕府の下級役人の一つで、与力の下で庶務や見回などの警備に就いた者を指します。
諸藩において藩直属の足軽階級の正式名称を同心としているところも少なくないとのこと。

(画像転載元:目で見て解かる時代小説用語)

②尻端折り(しりはしょり)足軽の更に下

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江戸時代の武士の服装は身分ごとに決まっていた(位の高い武士編)

江戸時代の武士の服装は身分ごとに決まっていた(位の高い武士編)

江戸時代は武士の中でも身分が細かく規定されていて、それらの差が一番はっきり分かるのが装束であったようです。
(装束は単なる服装ではなく、身につけることに様式や格式といった特別な意味を伴う衣服)

ですがそもそも武士とは「士農工商」の身分の中では一番上になります。
なので武士の中で一番身分が低くとも、武士自体の身分が高かった事は忘れないでおきたい所です。
今回は大名や旗本など位の高い武士の服装に限定

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廃刀令までの流れ

廃刀令までの流れ

武士と刀の終焉とも言える廃刀令は明治9年3月29日に発令されました。
そこに及ぶ議論は7年前の明治2年から始まっていて、廃刀令に絡む様々な施策がその間着々と進んでいました。
個人的に結構面白かったのでまとめてみます。

・廃刀令までの流れ■明治2年(1870年)・森有礼が佩刀禁止を求めるも否決
廃刀令より遡る事7年前の明治2年、森有礼が佩刀禁止を公議所に提議したことに始まります。
しかし王政復古(

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日本刀を切断するコレクターのお話

日本刀を切断するコレクターのお話

今朝、以下のツイートを見てこの話を思い出したので、今日は日本刀を切断するコレクターについて書こうと思います。
にしても偽物が多いオクにおいて、こういう切断されてしまった刀に限って本物っぽいという、悲しい現実。。(実際にこの大和守安定が本物かは不明)

・日本刀を切断するコレクターという事でこれは以前刀屋さんから聞いたお話ですが、どうやら何十年も前にアメリカに行った際にコレクターの家を訪ねたそうな。

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マイナーだけど面白い刀工シリーズ① 「寿格」

マイナーだけど面白い刀工シリーズ① 「寿格」

長光、景光、吉光、来国俊、来国光、正宗、貞宗…などなど有名な刀が美しいのは周知の事実として、よく玄人の方が言われるのはマイナーな刀工にも面白い作はあるよということ。
それを見つけてこそ刀趣味というもの、と言い切る人も居るほど。
という事で今回から不定期で「あくまで個人的に」面白いと感じたマイナー刀工の作を紹介するシリーズを初めてみます。

マイナーの基準
本記事はあくまで刀の初心者を対象にしている

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粟田口に沸映りあり。

粟田口に沸映りあり。

粟田口の刀は青い清涼な地鉄をしている。
私だけかもしれませんが、粟田口と聞くと「地鉄が美しい」という一種のおまじないのような先入観が頭にこべりついていて、恥ずかしながら粟田口にも映りがある事すら知りませんでした。
本を見ると粟田口は来と同様「沸映り」と紹介されています。
確かに以下の押形を見ると沸映りが見て取れます。

(引用元:「五ヶ伝の旅 山城編 著:田野邊道宏」)

因みに以下も沸映りとの事

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