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公務員にもマーケティングは必要ですか?(5) ~STPの設定~

前回までの復習をすると、まず3Cを分析してそこから4Pを生み出す。
そして4Pを顧客(住民)目線で4Cに変換して、マーケティングミックスをする、という流れでした。
今回は、3Cから4Pや4Cへ展開するためのヒントとなるツールをご紹介します。

5.STPの設定

STPとは、以下の3つの単語の頭文字を繋げたもので、一言で言えば顧客設定です。

Segmentation(セグメンテーション):細分化
Targeting(ターゲティング):細分化した中からどこかに絞る
Positioning(ポジショニング):空白の市場を見つける

この3つは、そのままS→T→Pの順番で設定していきます。

Segmentation(顧客の細分化)

まずは、3Cの一つCustomer(顧客)を細分化して、漠然としていたターゲットをより具体的なものへ展開していきます。
細分化には、様々な切り口(視点)が必要です。

・人口統計(年齢、性別、職業、・・・)
・地理(地域、気候、・・・)
・心理(個性、趣味、ライフスタイル、・・・)
・行動(購入回数、頻度、金額、・・・)
・製品サービスの属性(品質、性能、・・・)
・顧客ロイヤリティ(信頼性、評価)
・価値観や考え方

上記以外にも様々な角度からの切り口があると思いますが、ここで私が特に重要だと思うものは、価値観や考え方です。
共感(sympathy)できるかどうかのカギがここにあります。
言い換えれば、「自分事」になるかどうかの最大のポイントがあると考えます。

Targeting(細分化した中からどこかに絞る)

どんなに優れた素晴らしい商品やサービスを生み出しても、世の中の全ての人に当てはまることは絶対にありません。必ず否定的・批判的な意見を持つ人や価値を感じない人は存在しますし、そこには正解も不正解も存在しません。当てはまる人と当てはまらない人がいた、ただそれだけのことであり、両者を納得させようとしても、あちらを立てればこちらが立たず、という状況になります。

また、個性や多様性を重視し認める現代社会においては、これまでは一つのジャンルでまとめられていたものが、個性や多様性によりさらに細分化され、もはやジャンル分け(カテゴライズ)できなくなるくらい複雑化しています。音楽やファッション、アートなどにおいてその傾向は特に顕著に見られます。

そんな状況下では、万人ウケすることを狙っても成功しないのは明らかなので、自分に共感してくれる人に訴えかけることが重要になってきます。
今は、「共感」でどこまでも繋がっていけるSNSという強力なツールがありますので、例え少数でもファンを作ることが結果的に一番効果的な宣伝になると私は考えます。
共感してもらうためには、自分の訴えかけていることが相手にとっても興味関心のある「自分事」になるかどうかが大切で、そのためには価値観や考え方が合っていることが必要なのです。
したがって、細分化したCustomer(顧客)の中から、価値観や考え方の合う人をメインターゲットとして的を絞っていきます

Positioning(空白の市場を見つける)

メインターゲットが決まったら3CのCompany(自社)をCompetitor(競合)から差別化するために、Positioning(空白の市場を見つける)を設定します。
競合するライバルたちと比べて、自分の強みは何なのかを明確にし、似たような「その他大勢」の中から抜け出すために、2つの軸を組み合わせたポジショニングマップというものを活用します。

それぞれの業界ごとに、その時々のトレンドや類似したものがたくさんあります。
芸能界で言えば、オネエタレント、ハーフタレント、塩顔イケメン俳優、美人すぎる○○など。一人面白い人材が出れば、類似したキャラが次から次へと登場してきます。
これを主軸とし、彼らは「その他大勢」に埋もれないように、料理やスポーツ、マニアックな趣味などの特技や個性というもう一つの軸を掛け合わせてオンリーワンになれる空白の市場(ブルーオーシャン)を探っています。

これは行政の施策や事業においても同様の現象が起きますが、中でもゆるキャラが分かりやすいと思い、軸を変えた2種類のポジショニングマップを作ってみました。
くまモンやひこにゃん、ふなっしー(船橋市非公認ではありますが、とりあえず同様に扱います)を筆頭に、全国各地で様々なゆるキャラが生み出されました。彼らをポジショニングマップで分類してみると、有名なキャラは「その他大勢」から抜け出した空白の市場にいることが分かります。

まずは、機敏かどうかという軸としゃべるかどうか(Twitterなどで文字を使用して会話することは除いて、声を出して話せるかどうか)という軸で見てみると、ふなっしーが突出していることが分かります。
また、他の知名度の高いキャラも、上手く「その他大勢」を抜け出していることが分かります。

余談ですが、にゃんごすたーとちぃたんは私も好きなゆるキャラです。
にゃんごすたーは青森県黒石市のゆるキャラで、X JAPANの『紅』という曲の高速ドラムを叩くというギャップが印象的。
ちぃたんは高知県須崎市の観光大使で、その可愛らしい見た目とは裏腹に、「中身(中の人)」がケガをするんじゃないかとヒヤヒヤする体当たりチャレンジをしている動画が話題となっています。
どちらもYouTubeなどで動画が見れますので、まだ見たことのない人は一度見ていただきたいですね。

もう一つのポジショニングマップがこちらです。

こちらは、多くのゆるキャラが「カワイイ」を主軸に置いているのに対し、真逆の「キモイ、怖い」というベクトルで「その他大勢」を抜け出した、ハイリスクなチャレンジ型のゆるキャラです。
一歩間違えば、クレームが殺到しそうですが、面白いとキモカワイイのぎりぎりのラインを攻めていますよね。

ここで注目したいのは、くまもんのポジショニングです。
あれだけ有名なキャラでも「機敏×しゃべる」という軸では、その他大勢に埋もれてしまいますが、「カワイイ」という軸においては突出しています。
つまり、軸を何にするかで強みも弱みも両方現れるということです。Company(自社)の強みを引き出せる軸を見つけることで、Competitor(競合)との差別化が図れますし、それが細分化して絞ったターゲットの価値観に合うものであれば、なお良しということになります。

以上、STPで3Cを深掘り・具体化することで、4Pや4Cのヒントが見えてくるという説明でした。

つづく

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