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唐渡千紗『ルワンダでタイ料理屋をひらく』 書評

ルワンダでタイ料理屋を始めた著者によるルポルタージュ。 この本に登場したするルワンダの人々は ・レシピ通りに作ろうとしないシェフ ・電子レンジを水洗いしてぶっ壊す清掃スタッフ ・店のインテリアを勝手に客に売るスタッフ ・断水の原因はわからないという水道局員 ・家賃を水増しする大家 ・何度催促しても来ない施工業者   etc. これだけ見ると、とんでもないように思える。実際、著者はその時々で怒り浸透だ。しかし、彼らを「悪」として突き放したり、陳腐な「日本スゴイ」論に陥ること

    • 【ネタバレ有】橋本昌和監督「映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝」(2022)

      前回のクレヨンしんちゃん映画「映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」は、過度なエリート教育への批判と多様性の尊重がテーマだった。 今回の映画は、地球の持続可能性。パンフレットなどで製作側が言及しているわけではないが、間違いなく意図しているはずだ。 ストーリーの肝となるのが、人知れず暮らす忍びの里にある「地球のおへそ」。巨大な金塊が「地球のおへそ」から「ニントル」と呼ばれる地球のエネルギーが噴射するのを塞ぐ栓の役割を果たしているという設定だ。 忍びの里の長老は、

      • 散歩とラジオ

        ラジオを聴きながら散歩をするのが最高の贅沢だ。 4歳児と1歳児をパートナーと2人で育てていると、休日でも「独り」になる時間がとても少ない。 子どもはとても可愛いけれど、一緒に外に出ると、子どもに注意を向けていなければならないので、どうしたって気疲れしてしまう。 なので、実家に帰ってジジババが子どもの相手をしてくれる時などに、「独り」でラジオを聴きながら散歩をすることが、とても贅沢だ。 独身時代や子どもがいなかった時期から考えると、自分が散歩を楽しむようになるなんて思いもよ

        • 鈴木智彦『ヤクザと原発』(文藝春秋 2011)

          暴力団関係の取材を主に行っているジャーナリストによるルポルタージュ。 https://www.amazon.co.jp/ヤクザと原発-福島第一潜入記-鈴木-智彦/dp/4163747702/ref=nodl_ 福島原発での事故後に,取材のため作業員として潜入した顛末を記録したもの。 タイトルは「ヤクザと原発 福島第一潜入記」であるが,実際は原発での作業に従事した記録が中心で,ヤクザと原発との関係について触れられている箇所は思いのほか少ない。 とはいえ,事故後の原発での

        唐渡千紗『ルワンダでタイ料理屋をひらく』 書評

          【読書録】山田ルイ53世『ヒキコモリ漂流記 完全版』(角川文庫 2018年)

          「ルネッサ~ンス!」で有名なお笑いコンビ「髭男爵」のツッコミ、山田ルイ53世による自伝。 行きつけの古本屋で何となく購入してみた。 幼いころから勉強もスポーツもできて、クラスでも中心人物だった著者が、中学2年生の夏のある出来事をきっかけにヒキコモリとなり、東京での極貧生活など紆余曲折を経てお笑い芸人となるまでの経緯が描かれている。 著者は、ヒキコモリになるまでは、典型的な「良い子」として振る舞い、周囲の評価も高く「神童感」を抱いていた。ところが、あることをきっかけに登校

          【読書録】山田ルイ53世『ヒキコモリ漂流記 完全版』(角川文庫 2018年)

          【読書録】ひろゆき『1%の努力』(ダイヤモンド社 2020年)

          著者は「2ちゃんねる」や「ニコニコ動画」などのサービスを手掛けてきたひろゆき氏(西村博之氏)。 私は普段、ビジネス書や自己啓発本はほとんど手に取ることはないが、たまには関心がない分野の本にも手を伸ばそうと、読んでみた。 まず、私自身の著者(あるいは「IT系」の人)の印象や、本のタイトルと帯から勝手に想像した本書の内容はこんな感じだった。(大変失礼な話だが) 「俺は自分の思考法でめちゃくちゃ稼いだんだけど、凡人の君たちにも教えてやるよ。これで君らも、「成功」して、稼げるよ

          【読書録】ひろゆき『1%の努力』(ダイヤモンド社 2020年)