唐渡千紗『ルワンダでタイ料理屋をひらく』 書評

ルワンダでタイ料理屋を始めた著者によるルポルタージュ。

この本に登場したするルワンダの人々は
・レシピ通りに作ろうとしないシェフ
・電子レンジを水洗いしてぶっ壊す清掃スタッフ
・店のインテリアを勝手に客に売るスタッフ
・断水の原因はわからないという水道局員
・家賃を水増しする大家
・何度催促しても来ない施工業者   etc.

これだけ見ると、とんでもないように思える。実際、著者はその時々で怒り浸透だ。しかし、彼らを「悪」として突き放したり、陳腐な「日本スゴイ」論に陥ることはない。

その根底にあるのは、著者の東京での経験だろう。

ルワンダの生活と対比されるように描かれる、シングルマザーとして「擦り切れ続けた」の東京での生活は、読んでいるこちらもしんどくなるほどだ。

孤独な闘いからの「解放」を求めて始めたルワンダ生活は、前述のとおり、全く順風満帆というわけではない。むしろトラブルの連続。ルワンダも決して「楽園」ではない。スタッフを粘り強く教育し、トラブルに根気よく立ち向かう。
しかし、また時には戸惑いながらも自分の考え方を変えていく。そのきっかけのひとつが、「ルワンダ虐殺」についてのスタッフから語られる壮絶な体験談だ。スタッフたちは壮絶な過去を経験しつつも、また現在も困難を抱えつつも、折り合いながら日々を生きる。
特に、元ストリートチルドレンの「イノセント」という名前のスタッフとの静かなやりとりが沁みる。

よくあるインスタグラム投稿のように、海外生活での「キラキラ生活」だけをひたすら描くものでは、全くない。まさに体当たりのルポルタージュ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?