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東風吹けば…竹に鶯


立春です🌸 


そんな春の歌と、尺八を詠った浮世絵のご紹介。
細身の尺八に、優雅な模様の尺八袋と立派な袋房紐。この尺八の細さは女性が吹いていたのでは?と想像してしまいます。



画人は抱亭五清。葛飾北斎の門人です。姓は砂山、名は金蔵。はじめ北鵞、のち方亭、抱亭と号した。砂山を画姓にし、青々、東一とも号している。江戸に住んでいたが、信州松本に移り住み、1835年、同地で没した人気浮世絵師。

なぜ、松本に移り住んだかは謎だそうですが、松本では狂歌が流行っており、抱亭の名も狂歌を通じて知られていたと思われ、その縁でこの地を訪れたと推測されるとのこと。

参照元はこちら↓


浮世絵に書かれた狂歌を読み解いていきたいと思います。



    難波屋松久
東風ふけハ 
  梅かからくさ
    やまとくさ
 ふしよ揃うふて 
   竹の鶯


    神楽堂守明
鶯も竹に告けり
   古年と
  春と行合ひ
   むかひちの曲



まずは難波屋松久の歌。
「東風」「梅」「鶯」「春」と、春らしい言葉が並んでいます。


「東風」は七十二候の一つ『東風解凍(はるかぜこおりをとく)』で、
周期的な低気圧の通過により、春の兆しとなる暖かい春の風が吹き始め、、冬の間張りつめていた氷を少しずつ解かし始める頃とのこと。


「やまとくさ」は調べてみましたら、大和草「ヤマトグサ」とありましたが、明治時代に植物学者、牧野富太郎博士(1862-1957)によって新種として名づけられた植物のこと。自ら創刊に携わった「植物学雑誌」に、新種ヤマトグサを発表し、日本人として国内で初めて新種に学名をつけたそうです。

んー、年代が明治の事なのでこの「大和草」とは違うようです。


「やまと」の「ま」と「と」元の漢字は「満登」なので、これも調べましたら、創業明治35年(1902)東京八重洲にある小料理屋に同じ「や満登」の名前がありました。

んー、しかしながらこれも明治ですか。。。


勝手に訳して見ると…


春風が吹いてきたよ、
梅にからくさ、やまとくさ。
節も揃って、竹に鶯。


「からくさ」と「やまとくさ」と韻を揃えて、
ついでに、竹の節と鶯の声の節も揃っているよ。

なんて感じでしょうか。


お次ぎは神楽堂守明の歌。

鶯が竹に告げる、
行く年と春の出会い、
むかひちの曲。


七十二候の『東風解凍』は第一候で、一年の始まりでもあります。
鶯の鳴き声が春の到来を告げたんでしょうね。
「むかひち」は現代でも古典本曲に『霧海篪(むかいぢ)』という古い曲が伝承されていますが、尺八研究家の神田氏曰く、同じ曲であるだろうとのこと。虚無僧の代表的なレパートリーであったのが、この歌でも伺えます。


中世の頃の『霧海篪』に関して書いてます↓


さて、抱亭五清が尺八を吹いたかは不明ですが、歌口の部分の切り口が尖ってます。これは丸い尺八には不可能な形。恐らく抱亭五清は吹いたことは無かったのではと推測します。

尚、崩し字の解読は尺八研究家の神田可遊氏に協力を得ております。感謝🙏

画像出典元・Metropolitan Museum of Art


まだまだ寒いですが、梅もチラホラ咲いてます。確実に春は近づいていますね🌸

古典本曲普及の為に、日々尺八史探究と地道な虚無僧活動をしております。サポートしていただけたら嬉しいです🙇