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【フィクション】能動性と男性性は違うのではないか?

 ひょっとしたら、世間で求められる男性性をフィクションに落とし込むなら、それは能動性とは違うものなのではないかと思うようになった。今回は、そんな話をしたいと思う。

 現実の男性性の有り様とも関連する話ではあるが、ここでのメインは、フィクションの中で男性キャラクターの能動性や男性性をいかに描くかの話である。

 最近はジェンダーバイアスなるものが問題視されている。

 つまり「男性は(女性は)こうだ」「こうあるべきだ」そんなのは極力やめていこう、個人差があり、ケースバイケースですよと、言われるようになって久しい。

 一方で、やはり男女には傾向としては違いがあるし、その違いを認め合うべきだとする考え方もある。

 さて、古来より男性性は能動性や積極性と結び付けられてきた。女性性は反対に、受動性、消極性と関連付けられてきたと思う。

 つまり、男性は外に出て、能動的かつ積極的に、スポーツをしたり経済的な活動をしたりする。

 女性は家にいて、家事や子育てをする。外で仕事をするにしても、事務所で静かに事務仕事をする。

 そんな受け身でやや消極的な生き方であったほうが、女性としては生きやすいと言われてきた時代が長い。

 なのだが、私はここで、ひょっとしたら世間で求められる男性性は、能動性とは違うのではないかと思うようになった。

 たとえば女性から見て、付き合っていて安心できるタイプとは、著しく能動性が高いタイプではない気がする。

 それよりも安心させてくれる態度や振る舞いが必要ではなかろうか?

 フィクションの話なのに、そんな事を考えなくてはならないのか? と言われるかも知れない。

 ここで取り上げるフィクションは、かなりリアリティレベルが高いタイプを想定している。

 もっと言えば、読んでそのまま人生のお手本にできるような、少なくともそれを目指して書かれた物語である。

 フィクションの中だから許せる、好きになれる、ではなく、本当に女性がその人と付き合いたいか? そんな視点から書かれた物語である。

 県大会決勝で負けたその直後に「俺は世界一のストライカーになる!」と言って、できたばかりのバトルロイヤル的な試合の渦中に飛び込むような奴と本当に付き合いたいのか?

 海軍大佐だが、それ以上出世もせず、悠々自適の年金生活にも入らず、戦闘機パイロットであることに命を掛け、無茶な飛行をして不時着、民間人の使用するレストランに突然、ボロボロの格好で現れるような奴と本当に結婚したいのか?

 と、リアリティレベル高めに考えると、特にエンターテイメント性の高いフィクションで主人公になるようなタイプは、実は男性性が高いとは一概に言えなくなるのである。

 ここで言う男性性の高さとは、イコール『現実に』女性から選ばれるかどうか、である。

 ありていに言えば、そして究極的には、男性性の高さとは、『良き父親、良き夫』になれるかどうか、ではないか?

 現実においても、特に日本は、母権制社会だとよく言われる。とりわけ、大きめの組織の中や田舎社会で暮らすとなると、あまりに能動性が高いのは、正直なところ、あまり有利に働くとは思えない。

 なぜなら能動性が高いタイプは、枠の中に収まらない事が多いからである。チャレンジ精神旺盛なのは別な見方をすれば、次に何をやらかすか分からないタイプだとも言える。

 よく言われる、女性が男性に求める経済力とは、要するに安定性・安心感である事が多いのではなかろうか?

 バリバリ稼ぐけどチャレンジ精神旺盛で、次に何をやらかすか分からないタイプではないのではないか。

 現実に、そんなタイプを支えた奥さんが称賛されることもあるが、大抵の女性はやりたくないことをできたから称賛されるのだと思う。

 つまり、男性性の高いタイプとは、実は極端に能動性の高いタイプではなく、むしろやや受動的なくらいがちょうどいいのではなかろうか?

 あくまでも、『やや』であるが。

 行動力や問題解決能力はあっても、女性の安心感をおびやかすほど能動的であってはいけない。そのあたりのバランスである。

 一方で、極めて能動的な男性主人公を扱っていても、比較的リアリティレベルが高いフィクションを書くのも可能だとは思っている。

 実は私が書いたフィクションはそうであると思っている。これまでの記事で取り上げた、ホフマンの『砂男』もそうである。

 まあ『砂男』を読むと分かるが、能動性は良い方向にだけ働くとは限らない。悪い方向へその能動性を使うと、破滅する最期が待っている。

 そのような幻想文学の男性主人公は、能動性は高くても男性性が高いとは言えない。

 さて、今回の記事はここまでである。次回は、もしできたら、極めて能動的な男性主人公と、やや受動的な男性主人公の、女性への振る舞いの違いを書いてみようかと思う。予定だから絶対にやるとは言えないが、近いうちにやろうと思う。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。また次回の記事もよろしくお願いします。

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片桐 秋
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