部活の思い出「卓球部と私」ジブリ風
なぜ、部活の思い出を書くことにしたのかというと、その発端はこの記事です。
今月からスタジオジブリ全作品の場面写真を順次提供することになりました。今月は、新しい作品を中心に 8作品、合計400枚提供します。
常識の範囲でご自由にお使いください。
素晴らしい! なんて太っ腹!
お言葉に甘え、ジブリの写真を使ってnoteを書いてみたいと思ったのです。
テーマは、う~ん。
ジブリと言えば、やっぱり、ちょっとレトロな青春感動巨編が似合いそう。
・・・ということで、私の部活の思い出話を書いてみることにしました。胸を打つ感動的な物語が書けそうな気がします。
卓球部と私
昭和40年代のお話です。
中学生になってすぐ、どの部活に入りたいかアンケートが回ってきました。
眼鏡をかけている方が私、かけていない方が友人Aだと思ってください(友人Aの方は、かなり盛りすぎな感じです)。
私:先生が必ず運動部に入れって言ってたけど、どの部活に入る?
友人A:僕らって、あんまりスポーツ好きじゃないし、っていうか運動おんちだし困るよねぇ。
私:水泳部とか入ったら溺れるし、野球部の「バッチ来い、バッチ来い」って、なんだかバッチい感じがして恥ずかしくて言えんじゃん。
(バッチ来い=バッター打って来い)
友人A:卓球部がいいような気がするけど、どう? あんまり厳しくなさそうだしさ。
見た目も中身もさわやかな二人は、このようにして、どの部活にするかを決めたのでした。
しかし、実際の部活には大変なことが待っていました。
「柔軟」と称して、腕立て30回、腹筋30回を5セット、みたいな過酷なトレーニングがいきなり始まるんです。
1年生男子は7人いましたが、そんなの、急には誰もできません。
「できない奴は、罰として体育館の外回りを5周走ってこい」
卓球って浴衣でやってもいいぐらいの気持ちで入部したのに・・・。こんなに厳しいなんて知りませんでした。
柔軟が終わり、さあ球を打たせてもらえるかと思ったのですが、違いました。
「俺らのフォームのマネをして、素振りの練習をしろ」といって、先輩達は試合を始めます。
「ちっくしょう、やりやがったな。ようし、今度はジュース賭けようぜ!あっはっはっはっは。」
「おい、ジュース買ってこい」
歓声と笑い声が体育館中に響き渡ります。まさに酔っ払いが温泉で卓球しているのと同じです。見て覚えろと言っていましたが、どこを覚えればいいのでしょうか。人生の楽しみ方? たぶん飲んでないと思うけど、酔っぱらい方?
地区大会、毎回1回戦負けの理由がわかった気がしたのです。
・・・
そんなことがあっても、真面目な私はくじけず、卓球の本を読んでフォームを研究し、家でも素振りは欠かしませんでした。
しかし、友人Aはそういう努力をする奴ではありません。
彼は、素振りをしているだけなのに、なぜか汗びっしょり。
ラケットの面が変な方向を向いているし、どう見ても卓球のスイングではありません。なんだか激しい盆踊りのようなんです。
阿波踊りとか郡上踊りとか、そんな感じ?
阿波踊りは、下半身は後ろに蹴り、上半身は前に倒すのに、腕は上にあげるという、なんとも理不尽な姿勢を取るんです。これがキツイ!
ああ、なんとも理不尽なフォームだから、きついんだ。だから、あんなに汗びっしょりなんだ。
でも、こいつのこういうところが前から好きなんだよな、とも思ったのでした。
「素振りやめー!」
先輩の号令で素振りが終了。これで、やっと打たせてもらえると思うでしょ?
違います。球ひろい!
先輩が打っている後ろに一人ずつ配置され、玉が飛んで来たら素早くキャッチし、先輩に投げ返します。
その時、直立不動で突っ立っていると、ひどく叱られるんです。
「中腰だって言っただろ!」
両足を開き、両ヒザに手を置き、中腰で顔を上げ、一心不乱に球の行方を追わなければいけません。
この姿勢に何の意味が?
球ひろいのフォームは丁寧に指導してくれました。ありがたいことです。っていうか、球を打つ時のフォームを指導しろよって話です。
これには、まだ続きがあります。
球をキャッチできずに後ろの壁に当ててしまうと、罰として、体育館をウサギ飛びで5周しなければいけなかったんです。
私たちは、いったい、どれだけ罰を受ければいいんでしょうか?そんなに前世で悪いことをしたのでしょうか?
こんなことなら、恥ずかしいけど「バッチ来い、バッチ来い」って叫んでいた方がマシかなとも思ったのでした。
さらには・・・
その中学校の卓球部では、スマッシュを打つ時の音が、たいへん重要視されていたんです。
球がラケットに当たる時の音?
違います。
スマッシュを打つ時、利き手を振り回すでしょ。その時、体のバランスが崩れないように、利き手と反対側の足を前に出すでしょ。その足で、力いっぱい床を踏み鳴らし、大きな音が出る方がよいと言われていたのです。
スマッシュを打って、「バーン」と大きな音が体育館に鳴り響くと、どこからともなく称賛の声が聞こえます。
「お、いい音だねえ」
ナイス・スマッシュ!じゃなくて、ナイス・サウンド!ですよ。なんなのそれって話です。
実は、中学生になると、祭りには強制参加という掟がありました。
地元の祭りの大太鼓は、直径2.5mもありました。1mのバチで太鼓を打ち鳴らす時、より大きな音を出すために、握りこぶしも同時に太鼓に当てます。やがて、手からは血がにじみ、太鼓は徐々に赤黒く染まっていくのです。
そういったルーツがあるために、無意識のうちに大きな音にこだわってしまっていたのかもしれません。
言うまでもなく卓球はスポーツです。ナイス・サウンド!では勝てないと思ったのでした。
・・・
このあたりが通常のメニューでしたが、さらに特別版も用意されていました。
体育館から海岸まで約1kmを走り、海水を口に含み、海水をこぼさないように走って戻ってくるという、特殊なトレーニングです。
鼻呼吸と皮膚呼吸だけでマラソンするなんて、完全にどうかしています。
実は、この私でさえ、こんなさわやかに走ることはできませんでした。この少女の絵に、鼻水と涙を足し、口を半開きにした感じだったと記憶しています。
しかも、体育館に戻ると口の中をチェックされ、海水が十分に残っていないと、罰として、もう一度チャレンジしなければいけません。
そんな時は、ついこんな気持ちになったものです。
しかし、2回目になると、こちらも頭を働かせることができました。
そもそも、海水か、唾液かって見分けがつかないよね。たぶん、先輩は舐めて確かめるようなことはしないはず。
海水を口に含む真似だけして(見張りがいました)、体育館到着のちょっと前から唾液をためてごまかしました。
結果は、無事合格です。
このようにして、私はごまかすことを覚え、ずるい大人になっていったのです。
他にも、とてもここには書けない特別メニューがありましたが、今、こんなことをしたら廃部ものです。まったく。
私たちの世代になって
先輩たちは3年生になると、受験勉強のため、だんだん姿を見せなくなりました。
やっと、私たちの天下です。
友人Aの盆踊りは、さらに磨きがかかっていました。ラケットの面が変な方向を向いているのも相変わらずで、彼がスマッシュをすると、バーンという床のすごい音と共に、あらぬ方向に球が飛び、かなりの高確率で相手の顔に当たったものです。
そもそも、相手側のコートに球をバウンドさせなければ得点にならないというルールは、彼にとっては何の意味ももたなかったのです。
みんなからは「試合に負けても、勝負に勝つ男」と恐れられていました。
その後、友人Aは司法書士となりました。卓球のルールを無視する人物が世の中のルールを守れるのでしょうか。心配です。
・・・
後輩の指導方針は、2年生みんなで話し合い、基礎体力トレーニングのメニューを適切な量に減らし、球ひろいや特別メニューも廃止しました。スイングフォームも丁寧に指導したのは、言うまでもありません。
その成果が出て、当時の1年生が2年生になった時には、地区大会で準優勝したと聞きました。
すごくないですか?
・・・
それから十数年の時がたち、私はこんな好青年に成長し、妻と出会ったのです。
(妻は、ちょっと盛りすぎです)
若かった二人は、今はこんな感じになりました。これは、菜の花畑に行った時の写真です。
若い頃とほとんど変わっていない自分の姿に驚愕しました。
菜の花の辛し和えは、最高に美味しいです。
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