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おとうさんは魔法使い〜後編〜

今回は後編になります。
もし、前編をご覧になってない場合は、そっちを読んでからこっちを読んでください。

前編をご覧になった方々、恐らくなぜおとうさんが魔法使いなのか疑問に思っている方も多いと思います。
今回で、その辺がようやく分かるかと思いますので笑

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ファミコンが遊べなくなって数日。
失意の中、抜け殻のように過ごしていたある日。
父がいつものように帰ってくると、何故か治せないはずの壊れたACアダプターをいじっていた。
そんな父、不意に信じられない一言を発する。

「これなら、治せるかもしれんぞ。」

ACアダプターを触っている時点で淡い期待はあったが、前回、父は同じことをやってアダプターを分解できないと宣告した張本人だったので超ビックリして、なんでなんで!?と理由を最速で聞く当時の僕。

「ネジを回すために特別に作ってきた。」

父はACアダプターが治らないと分かったあの日から、特殊ねじを回すため、仕事で使わなくなったボルトの先端を特殊ねじの形にあうように加工していたのだ。

ACアダプターと特殊ねじ(画像はネットより拝借…)

まさに上の写真の様な形状をしていたことを今も覚えている。

父は早速、自家製特殊ねじ用ボルトを使って、特殊ねじを回そうとすると、特殊ねじはその時を待っていたかのように簡単に回った。
カバーが空いてしまえば、後は父の領域である。
断線した導線をうまく処理し元通りにカバーを閉じる。

僕は手際のよい作業にしばし見とれていた。
そのうち、父から試しに本体に接続して電源を入れてみるよう促された。
そう、ACアダプターのことで完全に忘れていたが、ACアダプターが原因でない可能性も残されている。仮に、これで電源が入らない場合は次は本体に原因がある可能性が出てくるので、そうなると以前に増して望みは薄くなる。
僕は急いでセッティングし、カセットには当時大好きだったF1レースをセレクト。
いつものように、いや、今回は起動してくれ~の願いを込めて、
2度息をカセットに吹きかける。

カセットフーフー(これ誰が始めたんだろうね)

そして、電源のスイッチを入れる。
・・・
すると、居間のブラウン管には間髪入れずにF1レースのスタート画面が表示されるとともに最初のBGMが勢いよく流れた。
いつも見慣れた画面と音楽のはずなのに、もう出来ないかもしれないと思って数日間過ごした僕には、どんな神曲、どんな神ゲーのスタート画面よりも輝いて見えた。

そして、それを修理した父はもっと輝いて見えた。
この人は何でも治せる。なんでもできる人なんだと。
不可能を可能にできる魔法使いみたいだなと本気で思った。
そして、代用できるものを買うなり持ってくるなりするという選択肢もあったはずなのに、最後まで修理することにこだわった父が子供ながらに職人のように見えた。

そんな僕が小学校を卒業する際、卒業文集の将来なりたい職業には父と同じ電気工事士と自信満々に書いたことを今でも覚えている。
結局その後、幾度となく父からの猛反発を受け、電気工事士は断念することになるのだが、大学生以降ずっと工学分野の仕事をしている僕のルーツなのかなーと思ったりする。
そして、ゲームが好きになった理由の一つであることは間違いない。

今日のBGM
ANAMANAGUCHI - HOPES AND DREAMS ( from UNDERTALE )

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