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おとうさんは魔法使い~前編~

今回は僕の思い出のはなし。

そもそも、なぜこの話を思い出したのかというと、これも両親に
「なんでそんなにゲームが好きになったんやろねぇ」
と、ふと実家で聞かれたのがきっかけです。
この話は僕が小学校低学年の時まで遡ります。

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当時の僕は、親戚のお兄さんが持っているファミコンを譲り受けて、狂ったように毎日ずっと遊んでいた。
当時のゲームにセーブ機能なんて便利な機能はないし、そもそもセーブが必要ないようなシンプルなゲームばかりだけれど、とにかくコントローラーを触れば、画面上のキャラが動く。それだけで楽しかった。
たまに友達がうちに来て、一緒に遊ぶことも多かった。
当時はインターネットなんかもなかったし、スマホなんてもちろんなかった。
だから、一緒にゲームの攻略法とか考えたり、たまに勝敗の結果から喧嘩になったりしたり。
生活の中心は間違いなくファミコンだった。

ファミリーコンピューター(今見てもかなりカッコいい)

そんなある日、ファミコンが壊れた。
学校から帰っていつものように電源のスイッチを押すが、テレビ画面は反応なし。
実は少し前にも同じようなことがあったが、その時は昔の家電製品にはよく使った必殺技「たたく」ことにより治った。
(必殺技なのに治るというツッコミはなしで。)
が、今回は、それも効果なし。
カセットフーフーなんてもちろん効果なし。
万策尽き果て、途方に暮れていると父が帰ってくる。
実は父は電気関係の仕事をしていたので、渡りに船とばかりに帰宅直後の父に今まさに起こっている悲劇を超詳細に伝えた。
父は一通り話を聞いた後、ファミコンを簡単に点検する。
そして、すぐに原因を突き止めた。
流石は、本職。
ちなみに、この時点で僕はもう治った気でいた。

さて、具体的にどの部分が悪かったのかというと、原因は本体側ではなく電源を供給するアダプター部分の断線であった。
ファミコンのアダプターってとっても大きいハコみたいな形をしていてその箱から出ているケーブルが付け根で断線していたということだ。

ファミコン用ACアダプタ(なつかしー)

まさに上の写真みたいに保存していたせいで、ケーブルの付け根に負荷がかかっていたっぽい。

原因が分かれば、ケーブルの修理なんて父からすれば朝飯前である。
母の夕食が出来たという声を制して、仕事のでっかい工具箱を取り出した。
中には、訳の分からない電気工事に使う工具が揃っている。
この時点ですでにかっこいい。
父はそのまま、アダプターの箱を固定しているねじを外そうとした。
が、ここで信じられない言葉を口にした。

「ありゃー。こりゃ治らんぞー」

少年は耳を疑った。
ありえない言葉に一瞬時間が止まった。
理由を聞かざるを得なかった。
なんで、原因は分かったのに、治らないのか知りたかった。

父によると、アダプターの箱に使われているネジが特殊な形をしていて通常のプラスドライバーやマイナスドライバーだと開けられない構造をしているということであった。
それはそうだ。電源部分なんて感電や火災によって最悪、死に至る危険すらある一番デリケートな部分。
一般人が勝手に修理や改造をしないようにメーカーは配慮したのだろう。

プラスドライバー(普通ならこれで何とかなるが…)

諦めるように父に諭され、とても悲しい気持ちになったことを今も覚えている。

当然、諦められるわけもなく、代わりがきくようなアダプターを探したりもした。がそんなものはうちにない。
両親に新しいアダプターを買ってくれとお願いしようともした。が、そもそもこれは貰い物。しかも諦めろと言われた両親にお願いなんてできるわけないと子供ながらに思って言い出すことはできなかった。
最終的に、僕はプレイできないゲームの説明書をただただ熟読し、真っ黒なテレビに向かって想像でコントローラーを握り、脳内でプレイするだけ。

少年の世界は何も映らないブラウン管のような闇に包まれた。

前編 ~完~
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どうでしたか?
実は今回は前後編にするつもり無かったんですが、書いているうちにどんどん長くなってしまったので、急きょ、このカタチとしました。
最後のあたりなんかは、書いているうちに色々思い出して今の自分まで悲しくなりました笑
後編も近いうちに投稿しようと思います。
乞うご期待…はしない程度に待っててください笑

今日のBGM
Anamanaguchi - Lorem Ipsum


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