【かすみを食べて生きる 2 救急外来】ワレンベルグ症候群による嚥下障害のリハビリなどの記録
脳梗塞 発症1日目:救急外来
救急車で搬送され、救急外来に担ぎ込まれた私は、いきなり思いもよらない問題に直面することになった。
救急外来に到着
恐らく15分程度で救急車は病院に着いた。
救急車から板状のものに載せられストレッチャー、そこから院内のベッドに移った。
看護師さんやお医者さんからいくつかの質問をされたように思う。
合間に救急隊員の方が、帰りますねと挨拶をしてくれたが、喉がガラついて思うように声が出ず「ありがとう」をちゃんと言えなかった。
はじめてのおむつ
検査に行くのを待つ間、トイレに行きたくなり看護師さんに申し出た。
看護師さんは「脳に何かあったら動かない方がいいから、おむつを当てときましょう」と言ってくれた。
大人になってはじめてのおむつ。
マジックテープのついた大きめのおむつと、中には分厚い尿漏れパッド。
「出たら言ってくださいね。すぐ替えますよ」と看護師さん。
尿意は感じているのに、出ない。
いや、出せない。
横になっているからかいつもは意識せずとも出せていた尿が出せない。
どうやって出していたのかわからない。
検査の前には出しておきたいのに。
いや、おむつだからそのまま検査でも大丈夫なのか。
頭の痛みはそっちのけで、どうやって排尿すればいいかで頭がいっぱい。
結局CTが終わった頃によし出してみようと思い立ち、下腹部に力を込めるとやっと出始めた。
そうか、排尿にはおなかの力が必要だったのか。
尿意はループする
そして救急外来に戻り、できれば早くおむつを替えてもらいたいけど、この時に限って様子を見に来てくれるのは男性の看護師さん。
コールを押す程の緊急度はないけど、濡れたままのおむつはとにかく気持ち悪い。
でも男性の看護師さんにおむつを替えてもらうのは忍びない。
しばらくして女性の看護師さんが様子を見に来てくれたのでおむつ替えをお願いした。
看護師さんはさっとおむつを替えてくれた。
きれいになったおむつ。
途端に尿意を催した。
そういえば子どものおむつを替えていた頃、替えた途端にまたおしっこをしておむつが汚れまた替える、という無限ループが度々起きた。
あれは自然の摂理だったのか。
しばらく我慢したがそう長くは持たずおむつにて用を足した。
…言えない。ついさっきおむつを替えてもらったのにまた替えてほしいと言い出せない。
ここは救急外来。
看護師さんも忙しそう。
言い出せぬまま次の尿意がきてもう一度同じおむつで用を足した。
尿漏れパッドは優秀で漏れる感じはなかった。
脳の血管が裂け、さまざまな機能に障害が及んでいるであろう矢先、私の一番の関心事はおむつだった。
結局救急外来では言い出せぬまま、病棟に移って落ち着いたところでやっと替えてもらった。
そしてこのおむつを替えてほしいと言えない問題は、その後しばらく私を悩ませる事となった。
救急外来での診断
頭部と腹部のCTの結果を見て、
先生「おなかに炎症が見られるから、急性の胃腸炎だろう。自分で家に帰れる?」
いやいやいやいや、無理です。
頭をぶんぶん振って気持ち悪くなった。
私「頭部は何も出てないですか?」
先生「特に何も出てないね。念のためにMRIも撮っておこうか」
そしてMRI。20分位騒音にさらされる検査を受けた。
誰かが脳外科の先生に画像を見てほしいと電話をかける声が聞こえた。
程なくして人が来た気配、しばらくごにょごにょと話をする声の中で聞こえた。
「これは裂けてるね」
そして緑の服を来た脳外科の先生が私の横にやってきた。
目に光を当てたり、先生の指を眼で追ったりいくつかの簡単な検査をした。
「脳の血管の一部分が裂けているようです。入院して詳しい検査をしましょう」
私は脳の血管に疾患のある患者として、そのまま入院する事が決まった。
家族との別れ
救急外来からHCUに移動する時、夫と子どもに会えた。
看護師さんが「今コロナで面会ができないから、しばらく会えなくなるよ」と教えてくれた。
怪訝そうな顔の子どもの手を握った。
少し話をしたような気がするけど覚えていない。
ぎゅっと抱きしめたいなぁと思ったけど起き上がる事はできなかった。
そして私はHCUに入る事になった。
---振り返って
MRIを撮ってくれて、そして血管の裂け目を見つけてくれてありがとう、それに尽きます。
うっかりあのまま帰っていたら、今頃どうなっていたかわかりません。
(いや、それはできなかったけれども)
そして唐突に直面したおむつ問題。
排泄は人として何か大切なもの、大袈裟でなく尊厳に関わるのだなぁと初日から痛感しました。
振り返ってみると、非常事態で身体を動かす事は危険なのだから、おむつを当てて汚れたら誰かに替えてもらえばいいと普通に思います。
そうわかっていても、排泄の処理を人に任せるのは恥ずかしい。
任せるとしてもできれば同性にお願いしたい。
「女性の看護師さんをお願いします」と言えばよかっただけの話だけど、忙しそうな救急外来で言えなかったなぁ。
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