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【かすみを食べて生きる 10 一般病棟⑥ 】ワレンベルグ症候群による嚥下障害のリハビリなどの記録

脳梗塞 発症8日目:一般病棟6日目
・食事:飲み込みができないため絶飲食。水分、栄養とも点滴。鼻からの経管栄養を準備中。
・状態:理学療法のリハビリで立つ練習中。この日は20秒立つことができ、病室の入口とベッドの往復を歩けた。嚥下訓練は「ごっくんのごっ」まではいいところまでいくが「くん」は「く」の頭くらいまで。

<発症7日目:一般病棟⑤   発症9日目:一般病棟⑦>


主治医からの説明

昨日診断結果が判明したことを受けて、家族と一緒に主治医の町田先生(仮)から説明を受けた。

  • 首を通る動脈が裂けている。

  • そこから血管が詰まり、脳梗塞が起きている。

  • 出血はしていない。

  • 脳を守る薬を使いつつ、血圧のコントロールをする方針。

  • 今週受けるCT、MRIに大きな変化がなければ良好。リハビリテーション病院への転院が可能になる。

多分、そんな話だった。
この時車いすに座った状態で一般病棟から外来に行き、相談室的なところで説明を受けた。
長時間座った状態でいるのは久しぶりで、話を聞くのがぎりぎり。
手術をする必要があるのではないかとおびえていたが、それはないらしい。
この理解であっているのか、もっと頭がしっかりする日が来たら先生に確認したい。
そして8日ぶりに見る家族の顔。
子どもは説明の間中、私にくっついて手を握っていた。
説明後、もう少し家族と一緒にいたい気持ちもあったが、めまいと気持ち悪さが出てきたので病室に戻った。
この後夫はリハビリ病院への転院についての説明を受けたらしい。
私は病室でしばらく、ぐったりだった。

トレパンデビュー

2日前に車いすでトイレに行くことができるようになったが、その際困っていた、マジックテープを開けるとおむつが下に落ちる問題が解決した。

トレーニングパンツ(トレパン)に昇格!!

そうだった。そうだった。
子どもも寝た状態ならテープタイプのおむつがつけ外ししやすかったけど、足をバタバタさせたりはいはいをし始めたら、パンツタイプの方がはかせやすかった。
トレパンならトイレに行っても普通のショーツと同じように下せる。
あとテープタイプはテープの角が太ももにあたることがあって時々痛かった。そのストレスからも解放!
まだ看護師さんがいないとトイレには行けないから間に合わない時もあるし、トイレにいけるのは日中だけだからおむつは外せない。
でも私は、失ったものをまた一つ取り戻した。

病室内の盾矛バトル

向かいのベッドの患者さんが、点滴の針を刺すために血管を探す看護師さんに話をしている。
「私、血管が細くていつも針が刺せないのよ」
担当看護師さんでは入らず、先輩看護師さんが呼ばれてきた。
その人でも入らない。
とうとうラスボスの管理職看護師さんが登場。
「ぼく、取れちゃうんですよ」
いつも血管が見つからないご婦人 VS 必ずルートをとれる看護師。
病室内で突如始まった、ルート取り盾矛バトル。
Fight!
一瞬の沈黙。
「はい、入りましたよ」
すごい!ほんとに取れてる!
カーテン越しに他人事ながらドキドキした。
私も血管細い族なので、ルートを一発で取ってくれる看護師さんは神に見える。

ニベアのチューブが出てこない

私の症状の一つに、感覚異常がある。
首から下は右半身の温度感覚と痛覚が鈍い。まったくわからないわけではないけど、右は注射の針が刺さっても、刺されたことは分かるけど痛くはない。
そして右半身に軽いしもやけのようなしびれがある。
それゆえに右手、右足に少し力を入れにくい。
上体を起こせるようになってきて、ベッド上でできるスキンケアを始めた。
手足が乾燥するのでチューブのニベアを使う。
右手でチューブを押す。力が入らないので中身が出てこない。
麻痺ほどではないけど、右手に力を入れようとすると嫌なしびれが来てしまう。

日常動作の困りごとは作業療法士国島さん(仮)に相談した。
指先を使う訓練をしていくことと同時に「気にしない」ようにすることを教えてもらった。
そこで何かその辺にあるもので指を動かせないかとベッドの周囲を見ると、空になったティッシュの箱が目に留まった。
ちょうどいい厚み。これを破ろう。

ティッシュの空き箱

・両手で全部の指で
・しびれのある右手の親指と人差し指で
・右手の親指と中指で
・右手の親指と薬指で
・右手の親指と小指で

右手の親指と薬指で破る

学生時代吹奏楽部でフルートを吹いていたが、速いフレーズで指が回らない時、フレーズを分解して指の動きを練習した。
(ドレミならドレ、レミと分ける感じ)
その要領で、各指の動きを分解して練習してみた。
最初はしびれで力が入らなかったり、そもそもそんなに力のない薬指や小指は指が笑うような感覚があった。
でも同じ動作を繰り返すうち、手がしびれに慣れてくる感じがあった。
やっていくと動くようになる。
「気にしない」という意味が最初はよくわからなかったが、なるほどこういうことかと思った。
このしびれは発症後初めてやる動作のたびに現れ、毎度ひゃっ!と声を上げることになる。

ティッシュ箱のこま切れ

ーーー振り返って

患者への病状説明、難しいなと思いました。
頭が回りきらない中で聞いたことがないような話を聞いて理解しなければならなかったのはしんどかったです。
患者自身というより家族向けのものかもしれませんが、自分のことは知っておきたかったです。

トレパンはほんとに画期的でした。
テープタイプよりはき心地が断然いい。
そんなこと知りませんでした。
そしてルート取り大会に感動したのは、しんどい中でも少しづつ周りの状況に目(耳)を向ける余裕が出てきた頃だったのかなとも思います。

嚥下の訓練は難航していましたが、立って歩くことやそのほかの動作は、少しずつできるようになっていきました。

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