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【かすみを食べて生きる 11 一般病棟⑦ 】ワレンベルグ症候群による嚥下障害のリハビリなどの記録

脳梗塞 発症9日目:一般病棟7日目
・食事:飲み込みができないため絶飲食。水分、栄養とも点滴。本日鼻からの経管栄養が始まる。
・状態:日中、車いすで看護師付き添いでトイレ可 ベッド横で少し立って荷物を取る程度は立って動けるがすぐめまいがする。嚥下訓練は難航中。

誤嚥性肺炎からの発熱がやっと37度程度に下がってきた。
とうとう、待ちに待った経鼻栄養がスタートする。

<発症8日目:一般病棟⑥   
発症10日目:一般病棟⑧>


眠れぬ夜の脱出ゲーム

緑の光は怖い

夜0時ころ、目を覚ました。
私はどこかの密室に閉じ込められている。不穏な緑の光。
どうやら突然デスゲームが始まったらしい。
謎を解いて脱出しなければならない。

また目を覚ます。さっきは寝ていたようだ。
でも誰か殺されたらしい。
誰か来る。早く逃げなければならない。
怖い。このままここにいては危ない。

また目を覚ます。これは夢じゃない?どこまで夢だった?
本当に目を覚ましているのかどうか、わからない。

この繰り返しが夜中の3時くらいまで続いた。
悪夢なのか幻覚なのか妄想なのか。
たぶん昨日つけられた点滴のスピードを管理する機械が、暗い中だと緑色に光って不気味で、それが恐怖心を煽ったのだと思う。
一度寝るのを仕切りなおそうと、夜中にごそごそとおむつ替えをした。
おむつを替えると疲れきって、朝4時ころやっと眠りについた。

経管栄養始まる!

眠れぬ夜から、朝5時20分に起床。
今日から誤嚥性肺炎のため見送られていた、鼻の管から直接胃に栄養剤を入れる経鼻栄養が始まる。
鼻から栄養を入れることを、こんなにうれしいと思う日が来ようとは!
なぜなら点滴と違って胃に栄養が入る!!
つまり満腹感をえられる!!!
これであの荒れ狂いそうな空腹感とはおさらばできる、はず。

前日私は看護師さんにお願いをした。
「(経鼻栄養を)楽しみに待っているので、他の患者さんと同じように「お食事をお持ちしましたー」って持ってきてくださいね!」
うざい患者だったかもしれない。
でも申し送りをしっかりしてくれたようで、その後どの看護師さんも栄養剤を持ってくるときは「お食事をはじめましょかー」などと言いつつ持ってきてくれた。
ありがたかった。
これは私の覚悟。
この経鼻栄養を食事と位置づけ、必ずや口から食べる食事までたどり着く。

まずは朝6時、お水を100ml投入。
胃に物が入り満たされる感覚。幸せ。
しばらくすると久々のお水に胃が驚いたか、グルグルと音を立てた。

そして昼。来ました、久々のお食事。先にお水を100ml入れた後でこちら。
ペプタメンスタンダードを60ml。
封を開けたところで匂いをかがせてもらった。
甘い、バニラ味のプロテインみたいな香り。

栄養剤ペプタメン
栄養剤を入れるスピードをコントロールする機械

栄養剤が急にたくさん入ると胃がびっくりするので、入れる速度をコントロールする機械を通して、60mlを1時間半ほどかけて入れていく。
上につるされたパックに栄養剤を入れて、機械につなぐ。
機械から出ているチューブを、私の鼻から出ているチューブにつなぐ。
先行する水100mlは10分程度で入るから、栄養剤はかなりゆっくり。

「いただきます」と手を合わせる。
甘い栄養剤が胃に染み渡る。うれしい。
なぜか口の中が甘く感じる。
そして急にやってくる眠気。
一方で痰も出てくる。少し甘みのある痰が上がってくる。口から出さなきゃ。
でも眠い、すごく眠い。
お昼の12:30頃から栄養剤をいただいて、ポンプが止まったのが13:45。
つないだチューブを外してもらってリハビリまで少し眠った。
久しぶりの食事は、おなかが満たされると異常に眠たくなることがわかった。(前夜寝れていなかったこともある)
このお食事を夜もいただいた。

嚥下障害で一番困った事

嚥下障害になる前、飲み込めなくなって困る事とは、飲んだり食べたりできなくなる事、だと思っていた。
しかしそれ以上に困る事があった。
唾液だ。
人の身体は日々大量の唾液を分泌して、それを飲食以外の時間も無意識に飲み込んでいる。
寝ている間も。
それができなくなっている。
嚥下反射ができなくても唾液は出る。
口に溜まり過ぎてうっかり飲んでしまうと、飲めなくて自分の唾液に溺れてしまう。
嚥下ができない今、唾液は口から出すしかない。
これが眠れない理由でもある。
寝ても口に唾液が溜まるので口から出さないといけない。
発症当初は全く飲み込めなかったので、常に口から唾液を出し続けなければならなかった。
今は寝る時少しリクライニングをあげ、左を向いて寝ると、多少眠れる。
頭の下にはタオルを敷いてよだれが落ちてもいいようにしている。
嚥下障害は唾液との戦いだった。


ーーー振り返って

突然の脱出ゲーム。
脳梗塞をしてからの悪夢は脳がバグっているからか気持ち悪いくらいリアルで、ありえない状況も信じ込んでしまうので、本気で怖かったです。

そして、始まりました経管栄養!!
8日間お預けだったので、ほんとにうれしかったです。
おなかがいっぱいになると元気になると思っていたのですが、とにかく眠い。どろどろに眠い。頭がぼーっとする。
久しぶりの消化は、エネルギーをがっつり持っていかれる感じでした。

唾液問題。
悩まされてはいるのですが、唾液が出ることは悪い事でもないので悩ましかったです。

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