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かすみを食べて生きる63:さよなら杏仁豆腐

脳梗塞 発症1か月と30日目:リハビリ病院2か月目⑩
食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事はミキサー食(朝・昼食)と鼻からの経管栄養。首を左に向けると飲める。食事以外の時間は一口にスプーン半分の量の水分であれば飲んでもよい。
状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。きょろきょろすると少しめまいがする。

この日は体調が悪かった。
「杏仁豆腐は一生食べない!」と駄々をこねたりした。

これまでの記録はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症1か月と29日目:リハビリ病院2か月目⑨
 
発症2か月と1日目:リハビリ病院2か月目⑪>


右半身がビリビリ

今日は朝からなぜか、脳梗塞後遺症の右半身のしびれと感覚異常が強い。
身体全体は肌寒いのに右腕だけひどく暑がっている。
左顔面に軽いしびれも出ている。
前夜疲れて肩に湿布を貼らずに寝たのがよくなかったのだろうか。
昨日よく雨が降って今日は午後から晴れるから、恐らく気圧は下がりきったところから上がっている途中。
天気はまだ曇りで雲が厚い。
そして予定では月経がもうすぐ来る。多分、元凶はここ。
月経直前でメンタルはぐちゃぐちゃ。
全身がざわざわしている。
隠しようもなく、今日は絶不調。

朝ごはん#6

体調がよかろうが悪かろうが、食事はしなければ。
せめて食べやすいものだとありがたい。

あかゆアート:Fun!

絶不調だけど、せめておかゆは楽しく。
献立はこちら。

  • チンゲン菜の煮びたし

  • マンゴーペースト

  • ソフール

  • おかゆ

うん。この緑は間違いなく葉物。
チンゲン菜、前食べた時は他の葉物より繊維が強い印象だったけど今日は比較的喉どおりがいい。
葉物はおかゆとの相性はあまりよくないので、単品でいただく。
おかゆはマンゴーペーストと混ぜて乗り切る。
所要時間は1時間弱。
不調だけど、それなりに食べれている。

お昼ごはん#19

今日はしんどいので自主練はお休みにした。
理学療法、言語聴覚のリハビリの後は窓辺でぼんやりして過ごした。
ぼんやりしていても昼ごはんは来る。

おかゆアート:ハート

おかゆ以外のおかず。今日は上に何かのっている。
とくにピンク色の方はハートに見える。
ベージュの方もハートに見えなくもない。
おかゆに梅ペーストでハートを書いてみる。
全部ハートかもしれない。
献立はこちら。

  • 鯛の桜蒸し

  • 大根のかき玉あん

  • おかゆ

桜蒸し。初めて聞くお料理。
食べてみると鯛なのだけど、いつもより少しのど通りが悪い。
蒸し料理ということは煮物より水分が少ないのかしら。
それともこのピンクの餡が飲みこみにくいのか。
この餡何でできているのかな。
大根は安定の飲みこみやすさ。
ベージュのところも卵で比較的食べやすい。
所要時間1時間10分。
少し時間がかかった。

さよなら杏仁豆腐

今日から担当の言語聴覚士下浦さん(仮)が連休でしばらく不在というタイミングに、私の中でちょっとした事件起きた。
私は食事以外の時間、水分であれば看護師さんに報告のもと、病室で食してよいという許可が出ている。
これまでも飲むチョコクロワッサンなど、変わった飲み物をいくつか試している。
この日不調で気が滅入っていた私は、気分転換を求めて売店に行き「トロトロ杏仁豆腐」という柔らかプリンを買った。
朝食でソフールも食べているし、トロトロならいけるだろうという考えだった。
それをいつものように看護師さんに、今から病室で食べますという報告をした。
その方はあまり見かけない看護師さんだった。
その人は私に待てをかけた。
そしてカルテを見て「何かあっても私は責任を取れないからやめてください」と言った。
手元には食べるのを止められた杏仁豆腐が残った。

思えば水分を過大解釈した私が悪かった。
しかし不調で気落ちした自分の機嫌を、何とか杏仁豆腐で取ろうとしていた私のストレスは行き場を失って軽い爆発を起こした。
頭ごなしに「やめろ」というのではなく、担当の言語聴覚士に確認を取るから待ってなど言われたら納得できたが、「私が責任を取れないからやめろ」はどう捉えていいのかわからなかった。
私のメンタルはとどめをくらった形となった。
結局、その杏仁豆腐は捨てた。
もう一生杏仁豆腐は食べない、と思った。


ーー振り返って

入院中は、なるべく病院スタッフの方に手間や迷惑をかけないように気をつけてきたつもりです。
でもこの日はいろいろ悪いタイミングが重なって、普段なら流せるストレスを流しきれずに直撃をくらったような日でした。

申し訳なかったのは代打で入ってくれていた言語聴覚士の渡辺さん(仮)と、その日病棟の言語聴覚士リーダーだった島根さん(仮)。
私のメンタルが底辺に落ち、へそを曲げ「もういいんです!杏仁豆腐は一生食べません!!」と駄々をこねるのを聞いてもらいました。
私、大人げない。恥ずかしい。
翌日には島根さん(仮)に謝りに行き、リハビリに来てくれた渡辺さん(仮)にも謝る形となりました。

急性期病院の時にもあった、見慣れない看護師さんに出会った時に起こる不和。
看護師さんは悪くない。
杏仁豆腐は飲みものではない。
でも今後何か確認を取る時は、これまでを共有している看護師さんにした方がいいかもしれないと思いました。

杏仁豆腐を見ると、あの日の苛立ちとセラピストさん達に八つ当たりしてしまった恥ずかしさを思い出します。
渡辺さん(仮)、島根さん(仮)、あの時は本当にすみませんでした。
おかげさまで、杏仁豆腐、今ではおいしくいただいています。

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