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散文詩

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#小説

電脳街案内板、まだ目の覚めている君へ

僕らはいつだって、ぼんやりとした硬さの石を頭に抱えながら、忘れたふりして生きている。偏頭痛の電流が、たしかにその不安が眠っている場所を教えてくれる。

∴∴∴電脳半身浴∴∴∴

いんたーねっと中毒者の君へ

この世界は全部酸素不足で

息苦しさに終わりはない

この海へおいで

どうせなら甘い煙の中で

溶けてしまおう

 むかしむかし、街には掲示板があった。電信柱があった。高架下に落書きがあった

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対なるもの

対なるもの

河原のチガヤと自転車

補習ノートとガリガリ君

溶けた氷と背骨のくぼみ

サバの頭と転んだ箸

威勢のよいセミと夏のすべて

対なるもの

河原の鉄橋と自転車

サボったプールとガリガリ君

脂汗と背骨のくぼみ

甲子園ラジオと箸の一方

忘れた嫌悪と夏のすべて

対なるもの

河原の鉄橋と一万円

サボったプールと腕の痣

脂汗と喘ぐ息

甲子園ラジオと日常

忘れた嫌悪とカラス

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備忘録a、薄いピアス

 私は何者で、どこから来て、どこへゆくのか。
 待ちゆく人も同じである。どこから来て、どこへゆくのか、我々は徹底的に無知である。

 しかしながら、私達は出会う。出会うとそこには事実が生まれ、事件が起こり、その時初めて我々は感じる。

「生きているのだ、確かに、この時を。それだけは、疑いようのない…」

 今朝の夢で新たに知ったことが2つあった。唇にあけた薄いピアスに触れた時の危うい愛おしさ。そし

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礼拝

我が主人よ
三帰三礼をもってその御名に応えます
三界への招福と光なき者共への許しを
ここに願います

我らが主人よ
固き誓いと日々の礼節をもってその祝福に応えます
御名の下にある王国に招かれることを
ここに願います

我らが主人よ
この身この心は主人の為に
心ばかりの安寧と慈悲をここに願います

予感

私たちは世界に散らばる粒である

粒であると同時に波でもある

粒としてぶつかり、波として交わる

そうするうちに、夜、予感が芽生える時が来る

今夜は、女神に会える

身支度をし、森へ旅立つ心積もりをする

願わくば、実りのある巡礼であることを

陽と影と人の間よ

陽と影と人の間よ

陽射しの下では 涼風を求め彷徨い
木陰に入りては 人目を憚る
どこか居心地がよく、落ち着ける場所はないものか

川を眺めては 眩しさに目がくらみ
喧騒より隠れ 物陰を見つける
雑踏は遠く聞こえ、座り込む地べたは心地よい

見上げては遠く、空の間に雲が征く
我がうちによぎる寂しさを感じる
前を見ては壁あり、横を見ても壁あり
我がうちに積る焦りを感じる
不安より声を上げようとし、思

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夏の終わりに吹く風に

夏の終わりに吹く風は遥かに
航空機をのせ雲を北へ運ぶ
揺れる提灯は月を演じ
うかれて忙しなく揺れる
のんびりとした雲が一つ
老婆の顔をして南海を睨む
灰を落としもう一服
寂壮を空に返す