校正者としての就活
今まで独学で、校正記号も直し方も見よう見まねのオリジナルものさしで行ってきた「校正」をあらためて勉強し、資格試験を受けてみた。
結果発表
11月に申し込み、12月に受験。結果は2月中旬頃とのアナウンスだったが、2月20日になっても通知がなく「試験結果を焦らされている」という誰の得にもならない記事を書こうかと思い始めたところ、それが届いた。
結果は……
果たして、
「合格」
やったーーー!!!
手応えとしては、実技試験(原稿引き合わせ2題、赤字引き合わせと素読み1題)はやれるだけやったし、時間配分もOK、大きな不安もなかった。
対して学科試験(校正知識、用字用語の知識、一般的知識など)では、記憶をたよりに答え合わせをしただけでも5問はミスがあり、ギリギリのラインかなぁというところだった。これがギリセーフだったのだろう。
時間も体力も試験勉強に全振りしていたので、成果が出て本当によかった……。上級の試験は1年に一度しかないが、タイミングが合えば受験したいと思う。
校正者の就活
私の目標は校正の資格試験に合格することではなく、仕事における校正の割合を大きくし、収入のベースとすること。その中で校正の対象を広げ、実績を増やし、その先の目標である「小説を1冊校正する」につなげること、だ。
3年ほど前に開業して個人事業主であるが、稼ぎたくて個人事業主になったとか、誰にも負けないスキルがあるとかではなく、「正規雇用で働くのが無理だった」からである。
人生の優先順位としては仕事は2番目で、最優先は家族との生活だと思っている。そのためバリバリ働いてストレスを溜めながら稼ぐのではなく、好きな仕事だけを受けて、仕事に見合う収入が得られればうれしい、というスタンス。
そのため、「これは稼げるな」とか「割りのいい仕事をもらえた」と思っても、好きになれないものは断って、好きなもののためのスペースを空けているのが今の状態である。
スペースはあるので、そこに入れるものを見つけ、手に入れなければいけない。つまり、就活だ。
校正プロダクションというものがある
情報がないのでとにかく調べるところから始めた。校正といえば、出版社に雇ってもらうのかと思っていたが、校正者の募集を出している出版社はほぼなかった。あっても今の自分の働き方と合わなければ働けない。なにせ正規雇用は何度もリタイアしている。
見ていくと、「校正プロダクション」というものがあるらしい。それから、自宅で仕事ができそうなのは外部校正者。クライアント先に出向いて校正をおこなう出張校正もあるが、これをいきなりやるのは未経験では難しそうだ。
いくつかの募集をリストアップして、求人情報やHPを読み込んで、惹かれるもの、やりたいことにつながりそうなところに応募してみた。
校正者の採用試験
校正者(正規、社内・外部、フリーなどいろいろ)として求人に応募する流れとしては、まずは書類審査がある。
「履歴書と職務経歴書を送ってください」というところや「(履歴書の内容にあたいする)応募フォームを埋めてください」というところもある。やはり今までの経験、特に校正の経験を見られているようだ。
書類が通ったら、そのまま外部校正者として登録して「仕事があれば連絡しますねー」という一次だけのところもあった。が、経験上そういうところから本当に仕事がきたことはない。
多いのが、書類審査の次に実技試験を設けているところ。試験用のゲラのデータをダウンロードして校正し、郵送またはスキャンで提出するか、出力したゲラを送ってくれるところもある。
試験の対象は、その会社で扱いの多いものになっていると見受けられる。小説、詩集、パンフレット、新書っぽい書籍の原稿など。そこでの校正のルールや記号の入れ方などもある。
そして最終審査として面接もあった。受けた中で1社だけ面接があり、コロナ禍もあって対面で人と話す機会が少なかったため服にも移動にも鬼のように緊張して臨んだ。そこでもやっぱり聞かれるのは経験で、あとはどれだけ柔軟にスケジュールを調整できるかという点だった。
仕事はじわじわと始まる
書籍も、教材も、みな季節による波があるもので、どれだけ働きたいと思っても仕事がないときはない。
それに新しい仕事となると、発注するほうは私の力量をはかりながら「これならいけるか?」と仕事を選ばなければいけないだろうと思うので、波の先端が白い泡となって砂にしみこんでいくように、じわじわ、じわじわと始まる。
年が明けてから3ヶ月強、実務と並行して就活を進め、新たに3社に校正者として登録していただいた。なかなか「自分の仕事」にはなっていかず、目の前の仕事を終えてしまって不安になること毎週だが、前進しているものと思いたい。
じわじわの隙間に、なるべく本を読んでおこう。
遠回りも悪くない
就活の中で経歴を聞かれると、どうしても小さくなってしまう。
大学卒業後、フリーターとなり、その後正規でついた仕事は1年ともたず転々としてきた。看護師、養護教諭、治験コーディネーター、児童発達支援員、庶務という名のなんでも屋。
飽き性だとか根気がないとか、社会人として弱いとか、ネガティブな印象になることが多い経歴だ。
しかも、校正にはかすりもしていない。今思えば大学受験を控えた高校生の頃から自分は文系だったし、読むことと書くことが好きだった。でも気づかなかったものはしょうがない。
「ずいぶんと遠回りをしたと思います」
面接でぽろっと口から出た、自分でも深く頷いてしまう自分のセリフ。これに被せるように、校正者の方が言ってくれた。
「でも、全部がつながって、生きてくるからね。校正は」
これにも深く頷けるぐらい、勉強して演習して、校正に触れていた。人生が生きる校正をしていきたいと思う、いい就活をできている。
読んでいただけただけで万々歳です。