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スタートアップファイナンス

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スタートアップのファイナンスやIPOに関するnoteをまとめています。
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#ストックオプション

1円SO(ストックオプション)を発行する場合の会計・監査上の取扱いについて

 初めまして、KOSOパートナーズの水地です。  本日は国税庁が発表した1円SO(セーフハーバールール)を発行する場合の会計・監査上の取扱いについて記載させて頂きます。  1円SOを出しているミドル以降のスタートアップには必須の内容なので参考にして頂けると幸いです。 I. はじめに  2023年7月に国税庁が「信託型ストックオプションは給与課税の対象!」という見解を示し、スタートアップ界隈が騒然とした日、国税庁はこれまで曖昧だったストックオプションの権利行使価額の考え方を明

1円行使価額のストックオプション発行できる?

⑴ はじめにスタートアップ公認会計士の中辻です。 この度は記事をお読み頂きましてありがとうございます。 なお、noteだけでなく、X(旧Twitter)でも情報発信を積極的に行っていますので、フォロー頂けますと幸いです。アカウントは👉@Naka_CPAです。 さて、本題の方に入らせて頂きます。 昨年の発表によって、理論上は行使価額1円のストックオプションの発行が可能になりました。なお、ストックオプションの税務上および会計上の取り扱いに関して、ご興味ある場合は以下の記事を

ハイグロース企業のインセンティブストラクチャーに関する考察

昨今、スタートアップ界隈でSOなどの株式報酬に関する話題が盛り上がっています。今後、(北米などと同様に)日本でもスタートアップやハイグロースな企業に多くの優秀な人材が流れ、それが日本経済成長の牽引装置となっていくためにも、より「魅力的な株式型報酬の必要性」に焦点が当たっていることは歓迎すべきことと思います。 また(未上場のスタートアップだけでなく、)コーポレートガバナンス改革の流れも汲み、上場企業においても、経営陣の短期思考を是正し、より中長期の企業価値成長にアラインしてい

ストックオプション「業績条件」について、2023年 IPO企業とGENDAの発行条件を解説

「目論見書分析note」とは 目論見書分析noteは、起業家、スタートアップで働く方、スタートアップ企業の成長背景に興味がある方を主な読者として、noteを書いています。 今回は、スタートアップ企業がストックオプション(SO)を設計するときに検討する「業績条件」(業績ハードルなどと言うこともあります)について解説します。 上記のとおり、業績条件とは、SOを行使するために必要な売上や利益の目標であり、当該目標を達成できなければ、SOを行使することができません。 今回、20

ストックオプションへの影響の考察~国税庁と経済産業省の発表を受けて~

⑴ はじめに5月29日に「スタートアップの経営者や支援者のためのストックオプション税制説明会」が開催され、主に信託型SOの税務上の取り扱いとSO価格算定に関しての公式な発表がされています。 今回の発表内容は、ポジティブな面とネガティブな面の両方の側面があります。信託型SOの面だけを取り上げると、紙面にあるようなセンセーショナルな内容になってしまいますが、SO価格算定という面においては、長期的にスタートアップ業界にとってはポジティブな内容であったかと思います。 既に多くの方

税制適格ストックオプションの権利行使価額に関する通達案を読む

喧々囂々であった信託型ストックオプションや有償ストックオプションに関するQ&Aについてはまた別稿といたしますが、5月29日に国税庁からスタートアップ関係者向けに説明のあった、税制適格ストックオプションの権利行使価額に関する通達案は、これまでの税制適格の権利行使価額の設定からみるとパラダイムシフト的なものといえますので、少し検討してみたいと思います。 (速報的に記載するものであり、正確な内容を踏まえて随時調整をすることをご容赦ください。実際の検討の際には、別途税務アドバイザー等

Ubieが社員数250名を超えてもストックオプションを全正社員へ配布することにした理由

こんにちは。Ubie共同代表で医師の阿部( @Ive0209 )です。 今年は久々に楽しそうに花見をしている人たちも多く、春風も気持ちよく、やっぱり春はいいな〜と思いながらこのnoteを書いています。 Ubieも総勢250名を超えて来ました。かつては、「何もないぞ!必要なことはみんなで何でもやるぞ!」という世界観だったのが、大切な資産が積み上がり、役割分担が進み、コーポレート機能も整備が進んできて、それぞれが自分の得意領域で会社に貢献する世界観になってきました。 私自身も

ストックオプションを設計するために決めるべき5つの条件とは?

「目論見書分析note」とは 目論見書分析noteは、起業家、スタートアップで働く方、スタートアップ企業の成長背景に興味がある方を主な読者として、noteを書いています。 今回は、スタートアップ企業がインセンティブプランとしてストックオプション(以下「SO」)を設計するときに、必ず決めておくべき5つの条件について解説します。 2月初めに、Signifiant Inc. 共同代表の小林さんの「SO、ちゃんと確認してますか?_Nstock KIQS勉強会 2023.2.1資

税制適格SOの適格要件の"真の意味"

#0_適格要件の意味は意外に勘違いされているほとんどのスタートアップで税制適格SOが用いられている。 税制適格SOは、法律上の適格要件を満たすように設計することで、SOホルダーが大きな税制メリット(SO行使時非課税、SO行使後の株式譲渡時点で株式譲渡所得として分離課税)を得ることができるものである。 意図された税制優遇を受けるためには、法律上の適格要件を確実に満たす必要がある。 しかし、SOの実務に携わっていると、税制適格SOの適格要件の意味が意外に勘違いされていることが

2022年振り返り:ツクルバが挑戦するスモールキャップ上場のリアルと、上場後再成長する中で感じた上場スタートアップへの誤解と課題

初めに背景・目的 これは何か 私は金融専門家でないのであくまでスタートアップ経営者の立場としてお話します。 2022年の振り返りと、誰も教えてくれなかったスタートアップ経営の上場前後の実体験を交え、本気で上場後の中長期成長をやり切ろうとしている上場スタートアップは面白いぞ、ということをお伝えするのが本稿の目的です。 (取材協力 グロース・キャピタル株式会社) 2022年 スタートアップ冬の時代へ 2022年は米国を契機に市況が急激に悪化した混乱の1年でした。上場企業の

SOのべスティング条件の整理_上場日・入社日・割当日

#0_前提日本の未上場スタートアップが、税制適格ストック・オプションを用いる場面を前提とする。 税制適格ストック・オプションにはほとんど全てのケースで、行使条件の一つとして会社の上場が設定される(税制適格要件の一つである株式保管委託要件との関係で事実上必要となるため。株式保管委託要件について詳しくは以下noteを参照。)。 この「行使条件としてほぼ必ず上場条件が設定される」という日本独特の事情が、日本のスタートアップのべスティング条件の考え方を独特なものにしている。 べ

知らなかったでは済まされない!無償ストックオプション発行時にスタートアップがミスしやすいポイント(3)~税制適格要件編~

はじめにこの記事は「無償ストックオプション発行時にスタートアップがミスしやすいポイント」シリーズの3作目の記事です。1作目,2作目を読まれていない場合は、下記よりご確認ください。 1作目(会社法編) 2作目(行使条件編) 3作目となる今回は、SOの中でも広く国内スタートアップで利用されている税制適格ストックオプションについて解説します。 略称一覧ストックオプション:SO 無償税制適格ストックオプション:適格SO 無償税制非適格ストックオプション:非適格SO 無償ストッ

スタートアップ「NOIN」が自社のストックオプション(信託型SO)の制度とその設計プロセスを完全公開します

ノイン株式会社では、2021年1月よりストックオプション(以下、SO)の設計を開始しました。2021年5月に信託型SOを使ったインセンティブ制度を導入し、2021年10月には上半期の評価(初めてのポイント付与)を終えております。 社外に公表できるようなフェアな制度を作れたので、今後SOの設計をする経営者や実務家の方の参考になればと考え、会社の同意を得たうえで当社の制度を作っていったプロセスを私のnoteで公開することにしました。 インセンティブ制度に込めた想い世の中には起

知らなかったでは済まされない!無償ストックオプション発行時にスタートアップがミスしやすいポイント(2)~行使条件編~

はじめにこの記事は「無償ストックオプション発行時にスタートアップがミスしやすいポイント」シリーズの2作目の記事です。1作目を読まれていない場合は、下記よりご確認ください。 2作目となる今回は、無償SO設計における行使条件について解説します。 略称一覧ストックオプション:SO 無償税制適格ストックオプション:適格SO 無償税制非適格ストックオプション:非適格SO 無償ストックオプション(適格SOと非適格SOの総称):無償SO 有償ストックオプション(いわゆる時価発行新株予約