見出し画像

「五行歌人研究所」の思い出

 こんにちは。南野薔子です。
 だいぶ前に閉鎖した「五行歌サイト フラクタル」というのがあって、そこでの企画で一時期「五行歌人研究所」というのを開催していました。その話などを。
 
*******
 
 対談や座談会の記録を読むのは面白い。一人の人のインタヴューやエッセイを読むのとまた違った面白さがある。ありふれた比喩で云えば参加者どうしの化学反応という面白さだ。この場でこの組み合わせだから出たんだろうなというような話題、質問、そこからの展開、そういうのを感じるのが楽しい。
 実際に自分が対談や座談会といったものを楽しくできたらいいなと思うが、あまりそういう場で機転を利かせてちゃんとしゃべる自信というのは全くない。
 だが、そんな私でも、対談や座談会的感覚を楽しめる場があった。それが「五行歌サイト フラクタル」での「五行歌人研究所」だ。
 「フラクタル」は2002年に、福岡在住(当時)の若手(当時)五行歌人数名によって立ち上げられたサイトだ。現在の栢瑚では白夜さんと私がメンバーだった(元栢瑚メンバーの素音さんも)。フラクタルのメンバーのほとんどは現在も五行歌を続けている(休養後戻ってきた方もいる)。
 その「フラクタル」で数年にわたって開催されていた企画が「五行歌人研究所」だ。当時ネットでは掲示板文化が華やかだった。「五行歌人研究所」は掲示板を利用して、ひと月一人の歌人に「今月の歌人」を担当していただき、掲示板で他の方から自由に質問等投げかけてもらうことで歌に関するさまざまな対話を行うというものだった。企画アイディアは白夜さん。今月の歌人の選定や担当交渉は白夜さんをはじめとしてフラクタルの他メンバーも担当したが、私はあまり顔が広くなく交渉役などは苦手な方だったのでそちらではあまり貢献していない。ただ、掲示板の管理と、一応の進行役みたいなものは私が主に担当していた(今もだが、当時も比較的時間に融通のきく状況にあったので)。
 掲示板だと、リアルタイムでの進行ではないので、時間を取って考えて質問やコメントを書き込むことができて、また受け取った側も、ある程度時間をとって回答などを考えることが可能だというよさがあったと思う。そんなわけで、リアルタイムでのしゃべりがさほど得意ではない私も、大いに楽しんで質問やコメントを投げさせてもらった。あの企画があったことで得るものが多かったという意味では私が一番得をした(?)かもしれない。
 それにしても、今見返してもかなりそうそうたるメンツに今月の歌人を担当していただいている。のべ50名程度。かなり初期に、現在栢瑚メンバーである水源純さんにも今月の歌人を務めてもらっている。大御所といった方も多いし、当時の気鋭の新人といった方も含まれている。また今はもうこの世にいらっしゃらない方も。残念ながら現在は五行歌から離れられている方も。
 すべての記録が一応私の手元にあって、貴重なものだとも思いつつ、過去のものなのでたとえば何らかのかたちで公開したいとしても、それぞれの方に許可を得るとか、内容のチェックをしてもらうとかはなかなか大変かと思うのでちょっと実現は難しいだろう。ただ、あの当時、あの場があったことはそれなりに意味はあったのではないかと思っている。
 
 最近、栢瑚五行歌部(仮)の次の冊子『栢瑚 其ノ四』を準備するにあたって、久しぶりに「五行歌人研究所」の楽しさを思い出した。というのは『栢瑚 其ノ四』にはゲストの方をお迎えしており、その方に栢瑚メンバーから質問をさせていただいたのである。フラクタルの「今月の歌人」と比べれば分量は少ないが、密度の濃いやりとりができたのではと思っている。
 『栢瑚 其ノ四』は来月(2023年2月)発行予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

もしお気が向かれましたらサポートをよろしくお願いいたします。栢瑚五行歌部(仮)の活動資金としてたいせつに使わせていただきます。