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#資源管理

資源急回復で海に溢れんばかりのクロマグロ②定置網の混獲を国別上限の別枠に~韓国政府がWCPFCに働きかけ

資源急回復で海に溢れんばかりのクロマグロ②定置網の混獲を国別上限の別枠に~韓国政府がWCPFCに働きかけ

 クロマグロがあふれかえっているのは日本の海だけではありません。お隣の韓国でも同様です。

「最近盈徳郡でマグロが1日500~1000匹ほど漁獲される。定置網にかかったマグロが死に、漁民は死んだ状態のマグロを海に放流するほかない」

 2022年7月28日夕、韓国の朝鮮日報オンライン版は慶尚北道盈徳(キョンサンブクド・ヨンドク)の海岸に数万匹の死んだマグロが見つかり行政当局が回収に乗り出した、とい

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資源急回復で海に溢れんばかりのクロマグロ①沿岸漁業者による放流の記録1906枚

資源急回復で海に溢れんばかりのクロマグロ①沿岸漁業者による放流の記録1906枚

 青森県から行政文書一部開示決定通知書が届きました。令和4年度(2022年度)まで直近5年以内の沿岸漁業者による太平洋クロマグロの放流状況を記載した行政文書の情報公開を請求していたのです。
 
 開示されるのは7つの文書で、合計枚数は1906枚でした。定置網漁業によるクロマグロ放流の記録は令和元年度(2019年度)から4年分、漁船漁業による記録は令和2年度(2020年度)から3年分ということです。

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TAC対象のクロマグロ管理「投棄・自家消費分も漁獲報告は義務」と水産庁

TAC対象のクロマグロ管理「投棄・自家消費分も漁獲報告は義務」と水産庁

 太平洋クロマグロのように国が漁獲可能量(TAC)を設定している魚種のことを特定水産資源といい、漁業法では漁業者に漁獲報告を義務付けています。水揚げして魚市場で売ったものはもちろん、漁業者が自分で販売したもの、自家消費したものを含めて漁獲報告をしなければならないのです。

 昨年7月、気仙沼市魚市場で計量後に漁獲上限を超えたことがわかって船にクロマグロを持ち帰ったことが水産関係者に目撃された大目流

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マグロ相対売買を隠ぺい、取引データを「その他鮮魚」に偽装~静岡市中央卸売市場の卸売・三共水産

マグロ相対売買を隠ぺい、取引データを「その他鮮魚」に偽装~静岡市中央卸売市場の卸売・三共水産

 データを偽って報告するなんて、公共インフラの一つでもある「中央卸売市場」に事務所を構えて商売する卸売会社がやることではありません。静岡市中央卸売市場の水産荷受け、三共水産は青森県大間のマグロを「その他鮮魚」だと偽って、マグロの相対取引が禁じされていた2019年当時から市場外の仲卸業者に販売していたことがわかりました。そのようにしてまでしてマグロを売ろうとした理由は一体何なのでしょうか?

訂正で

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大間マグロの謎を解く⑤漁協の出荷シェア3割~脇売り業者隆盛の背景「ヤミ漁獲」

大間マグロの謎を解く⑤漁協の出荷シェア3割~脇売り業者隆盛の背景「ヤミ漁獲」

 大間でのヤミ漁獲の調査が長引いているもう1つの原因は、その問題の根深さにあります。昔からヤミ漁獲が当たり前のように行われていたのです。

「大間漁協の前で水揚げをみていたって、全部がわかるわけじゃないからね」

 2014年12月下旬、翌年から始まる沿岸漁業へのクロマグロ漁獲規制の影響を大間漁協周辺で取材していると、ある寿司屋の店主がいいました。

「マグロを揚げる場所は何カ所もあるんだよ。教え

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大間産マグロの謎を解く①規制お構いなしの過剰漁獲?豊洲だけで2021年は190トン超の出荷

大間産マグロの謎を解く①規制お構いなしの過剰漁獲?豊洲だけで2021年は190トン超の出荷

 東京都中央卸売市場・豊洲市場から2021年(暦年)中の青森県大間町からのクロマグロ出荷に関するデータを取り寄せました。都の情報公開制度を利用して関係文書の開示を請求したもので、手続きをすればだれでも入手可能なデータです。

 開示された資料を分析したところ、2021年1月から12月までの間に豊洲市場に出荷された大間産マグロの総量は2210本、196トンという結果になりました。このうち管理年度が異

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大間産まぐろ「ヤミ漁獲」~水産庁・青森県はなぜ告発を躊躇しているのだろうか?

大間産まぐろ「ヤミ漁獲」~水産庁・青森県はなぜ告発を躊躇しているのだろうか?

出荷業者から情報提供得られず
「海産物を取り扱う事業者として、水産資源のサステナビリティを担保しなければならない立場であるにもかかわらず、漁獲枠内であることの確認が十分にできていなかったことは有ってはならないことと認識しております」

 回転ずし大手のスシローを運営するFOOD&LIFE COMPANIES(以下、フード社と省略)が3月31日夕、「食材に関するお知らせ 続報」と題するプレスリリース

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いま思えばかわいいものだった金子岩三農相の事務次官人事介入~ベテラン世襲議員2人は水産業界ドンの息子

いま思えばかわいいものだった金子岩三農相の事務次官人事介入~ベテラン世襲議員2人は水産業界ドンの息子

 岸田内閣の財務相が元首相鈴木善幸さんの息子の鈴木俊一さんで、農相が元農相金子岩三さんの息子の金子原二郎さんとは、タイムマシーンで水産業の全盛期1980年代初頭に戻ったのかと錯覚してしまいます。

 親たちは自民党水産族のドン。岩手の善幸さんは定置網、漁協、長崎の岩三さんは大型まき網業界をそれぞれ仕切り、農林水産省の事務次官に水産庁長官を抜擢しようと画策して、同省内に激しい抗争を引き起こしたのが、

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