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うつは突然に①

 「私たちは卒業します!」小学校の卒業式よろしく、今日お薬の卒業指示が出た。かれこれ1年近く飲み続けたお薬だ。どこか悪かったのかと言われると「脳」だ。頭が悪いのは仕方ない。そうじゃなくて、もっとわかりやすく言えば「ココロ」だ。そう、私はうつを患っていた。送辞をもらったからには、答辞がいるよなと思い筆を執ってみることにした。

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◆うつになるまで
 うつというと、長時間残業による過労やストレスなどが原因と思い浮かべるかもしれない。自分の場合、そうした環境とは無縁だった。新卒で入社した会社では、良い先輩に恵まれて残業時間としては並以下だった。「俺が責任取ってやる!どんどん勝負しろ!」と頼もしい先輩だったから、恵まれていた方なのだろう。

 原因を探ると、過去に遡る必要がありそうだ。大学3回生の時、突発性難聴になった。よくよく考えてみると、あの頃からシグナルは出ていたのだろう。ストレス耐性は、それほど高くない。あの時、そう気づけただけで幸いだったのかもしれない。ストレスは十人十色だから、一概には言えないけれど、自分の場合は蓄積型だったのだろう。

◆思考のクセ
 入社して数ヵ月で配属先が決まる。営業だ。絶対に向いてない。脳内でアラームがガンガン鳴り響く。ここがポイントだ。やってもいないのに、自分は無理だと決めつける。今思い出すと苦笑いしか出てこないけど、当時はこの世の終わりだと思っていた。メーカーの営業で知識も何もない。生来の鈍クサさで覚えは人一倍悪い。自己嫌悪も甚だしく、自分は役に立たないマヌケ野郎だと泥沼にハマっていった。

 時系列は前後するが、うつになって産業医さんと面談があった。その際聞かれたのが「しつけは厳しい家庭でしたか」という質問だった。たしかに厳しかった。ここでは書かないけど、しんどい思いや理不尽なことも経験した。「思考にはクセがあります。無意識の内に刷り込まれているものです」と教えていただいた。少しミスをすると、自分を全否定するのはその典型だ。そうしたクセは1日や2日で出来上がるものじゃないと改めて理解した。

◆うつの足音
 営業に配属されて、まず現れたのが不眠症状だった。中途覚醒と呼ばれる、夜中に何度も目が覚めるタイプだ。早朝覚醒も出てきた。目覚ましの1時間前に目が覚めて、あとは細切れ睡眠。しばらくすると、ご飯の味がしなくなった。砂利を噛んでいるようなという表現は良い得て妙である。お酒の量が増えたのは言うまでもない。ひたひたとうつが忍び寄ってきていたのに、無知というものは怖いもので「こんなの営業やってる人なら普通」だとさえ思っていた。

 やばいと思ったのは、好きなものにトキメキを感じなくなった時だ。まず、音楽が聴けなくなった。集中して聴くことができない。何度もリピートしたはずの曲ですら、サビまでもたない。もともと女声ヴォーカルが好きで、男性ヴォーカルはほんの少しだったけれど、女声すら聴けなくなった。本も読めなくなり、映画も観ることができない。テレビなんて論外で、何に対しても興味を持てなくなった。ここまできたら心のダムは放流が止まり、不安感が溜まるばかり。

 そしてヤツがやってきた。

 長くなりそうなので、まずはここで一度切りたいと思う。ここまでで言いたいことはただ1つ。「うつは誰にでもやってくる」ということ。自分は関係ないと思っていようが、ストレス耐性は高いと考えていようがヤツには関係ない。確かに、なりやすい人もいればそうでない人もいる。油断大敵とはこのことで、昨日までニコニコしていた人が翌日動けなくなるというのは身近なことなのだ。この後も何度も繰り返すが、絶対的な予防法などない。この記事がきっかけでも良いのでいろんな事例に触れてもらい、シグナルを見逃さないことが重要としか言いようがない怖い病気なのである。


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