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【海のナンジャラホイ-41】海藻の国際シンポジウムの話 (3)

海藻の国際シンポジウムの話 (3)

食べます食べます

朝のセッションの開始は午前9時か8時半で、プレナリーセッションが終わると10時頃から30分のモーニングティータイムです。そのあと2時間講演があって、1時間の昼食、午後の講演が始まって2時間経つとアフターヌーンティータイムが30分、そして最後の2時間の講演があって午後5時ごろに1日の終了となります。
つまり、講演日は1日に3回食べる時間があるのです。いずれも立食形式で、自分で好きなだけ皿に取って食べ、好きなものを飲むことができます。限られているのは時間だけ。ティータイムは2種類くらいのケーキや菓子と丸ごとの果物(リンゴ・洋ナシ・桃)が食べ放題(写真1)、ランチタイムには大皿料理がいろいろあって、パンもカットフルーツもあって、取り放題で食べ放題・飲み放題(写真2)。

写真1:ティータイムの様子(顔はボカしてあります)
写真2:ランチタイムの様子(顔はボカしてあります)

ティータイムのスイーツは1個にしようと思いつつも抑えられるはずもなく、ランチタイムの大皿料理も1巡だけで止めようと思いつつも、2巡目を止められるはずもなく。毎日ホテルで朝食を済ませてから、会場に出かけるし、ホテルに戻ったら夕食も食べるわけなので、実質的に1日にたっぷり5食を毎日食べ続けることになり、帰国したら、体重が5キロ増えていました。これから、減量調整に入ります・・・。 

息抜きの日

今回のシンポジウムは20日から25日までで、講演日は20-21日と23-24日でした。講演のある日には、9時または8時半の開始時刻に間に合うようにホテルを出ます。そして、夕方の5時くらいまで幾つかの会場を巡りながら講演を聞きまくります。ほぼ終日建物の中に籠っているわけです。周辺観光すらする余裕がないのです。そんなわけで、ど真ん中の22日は講演のない息抜きの日になっていました。
自由に過ごして良い日なのですが、大会の実行委員会で用意してくれたツアー(エクスカーション)が6種類ばかり用意されていました。2時間くらいホバート周辺を散策するツアー、半日でボノロング野生生物保護区を見学するツアー、イーグルネックへの終日ダイビングツアー、船での沿岸クルーズとポートアーサーの終日見学ツアーなどです。研究室の学生2人はダイビングツアーに出かけましたが、私は沿岸クルーズに参加しました。

予備知識なく申し込んだので、遊覧船でのゆったりした航海を想像していたのですが、実際は全く違っていて、ほとんどジェットコースターのようなスリリングで強烈な体験でした。大型のモーターボートに1列4名で10列ばかり、概ね40名くらいがぎっしり座らされました(写真3)。海水を被っても大丈夫なようにと、頭から裾までをすっぽり覆う赤いレインコートを着用させられます(写真4)。

写真3:高速ボート
写真4:赤いコートの人々

救命胴衣着用はなしです。救命胴衣の所在と付け方だけは教えてくれました。生姜を原料にした酔い止めが希望者に2錠ずつ配られて、シートベルトをガッチリ締めさせられて、出発です。ボートの後部には250馬力の船外機エンジンが3台並んでいて、猛烈な勢いで走り始めました。ものすごいスピードで走っては、見学ポイントに至ると停まることを繰り返しました。高くそそりたつ崖を眺め、イルカの群れを追い、アザラシの群れを見て回りました。要所要所で停止しては、左舷と右舷に公平に見学ができるように旋回するのです。野生のイルカやアザラシの出現はもちろん感動的でしたが、アザラシのすみかの付近で海面付近に見え隠れするコンブの仲間の褐藻類タスマニア・ブルケルプ (Durvillaea potatorum) の実物が見られたのは嬉しかったです(写真5)。

写真5:タスマニア・ブルケルプ (Durvillaea potatorum) 

ジャイアントケルプの密生が見られることも期待していたのですが、これはダメでした。それぞれの見学ポイントでは、スタッフが色々と詳しい解説をしてくれたのですが「ジャイアントケルプは昔は船が動けないほど海面まで覆って密生していたのだけれど、最近ではすっかり姿を消してしまい、今は漁業者たちが海中にロープを張って養殖を試みている」ということでした。その養殖ロープについているジャイアントケルプを船上からなんとか見ることはできました(写真6)。

写真6:養殖ロープについているジャイアントケルプ

クルーズの時間はなんと2時間半にわたり、けっこう寒かったので、だんだんトイレに行きたくなりました。船から降りると、他の皆さんもご同様だったようで、そろってトイレに駆け込みました。

そのあと訪れたポートアーサーは世界遺産に認定された19世紀の監獄遺跡で、興味深かったのですが、海に面していたので、海岸に降りるとヒバマタ目の褐藻類でネプチューンのネックレスと呼ばれる Hormosira banksii が生えていました(写真7)。

写真7:ネプチューンのネックレスと呼ばれるHormosira banksii

夏なので、元気のない時期ではありましたが、これも本でしか見たことがなかったので、スキップしたい気持ちになりました。 


○o。○o。 このブログを書いている人
青木優和(あおきまさかず)
東北大学農学部海洋生物科学コース所属。海に潜って調査を行う研究者。

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