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デザインリサーチを通じた課題設計〜 #建築合宿2018 を通じて

こんにちは、デザインリサーチャーの浅野翔〈あさのかける〉です。普段は新規事業開発やブランディングなどに携わっています。
今回は先日、ジュリストとして学生のワークショップに参加するなかで気づいた、「デザインするためのデザイン」としての課題設計について取り上げてみます。

建築合宿とは

建築合宿とは、学部1-2回生が中心となり、全国から120名ほどの学生が1週間程度で与えられた課題に対して建築設計を提案するものです。1グループ4-5名のグループワークで、建築学生は1人で設計課題を行うのが一般的なため、不慣れなグループワークは他校の学生とワイワイと取り組むためとても刺激的です。

私も9年前の学生時代に参加しており、当時は関西から70名程度が参加し、住宅課題が出されました。敷地設定を谷尻誠さん、設計手法を藤村龍至さんが出されていました。

最近の建築合宿では、この課題設定も自らで行うようになっており、難易度も高いものになっています。今年の課題は北梅田地区で街に繰り出し、第1課題でフィールドワークを通じてエリアに潜在している「なにか」を見つけ、第2課題で「変化」をさせるというものでした。

フィールドワークからどう「なにか」を見つけるか

初日は私を含めて3名の講師が30分のショートレクチャーを行いました。私は3つのプロジェクトから手短にインタビュー調査、行動観察、エスノグラフィ調査など「問いの設計」について紹介。

十分な説明はできなかったのですが、最終講評を見る限りでは学生たちは各々で街に眠る課題と可能性を探り出してきたようです。写真をたくさん撮りながら街の「隙間」を見つけたり、花壇やフェンスに腰掛けるなどの「無意識な動作」を切り取ったり、賑やかなエリアらしくグランドレベルの「アクティビティ」などに着目したり。

「なにか」を見つけるためには、事前にカテゴライズを決めながら深くリサーチするか、乱雑にたくさんのデータを集めてからグルーピングしてトピックを定めていく方法が考えられます。前者は経験や勘が必要ですが、短時間のリサーチが求められるときに有効です。後者は広く浅くやることで取りこぼしや可能性と課題が漏れることを防ぐことができます。マンパワーが必要ですが、今回ようなのワークショップに向いているかもしれませんね。「なにか」を見つけてきたら次に分析を通じてきちんと言語化することが大切です。私なら次のようなフォーマットに当てはめてみるかもしれません。

私たちが街で見つけた「なにか」とは○○です。この「なにか」が街を行く人の○○な行動を促しており、この地域が持つ○○という課題/可能性を引き起こしていると考えられます。具体的には、①ほにゃらら、②ほげほげ、③〜〜、のような事例が見つけられました。この課題を解決するため/可能性を高めるために、次の課題では○○の変化を与える操作を行います。

「なにか」をどのように変化させるか

フィールドワークで得られた課題や可能性を建築的に回答することがワークショップのミソです。そのために、どのような設計が必要でしょうか。今回のような抽象的な課題では、やみくもに空間設計をするのではなく、改めて設定を見直すことが求められます。

例えば、どこの敷地やビルディングタイプが価値を最大化できるか?いつの時代を想定するのか?どんな人たちが利用しているのか?どんなシーンや環境で使用するのか?つかうことでどんなアクティビティを引き起こすのか?などがそれにあたります。

その設定をきちんと意識しながら、ラフな模型やスケッチを通じてアイデアを抽出し、議論を深めていくことができるのではないでしょうか。時間の制限や経験から少し難しいかもしれませんが、アイデアを出しながら少しずつその設定そのものを見直すことも大切です。なによりも手を動かしながら考えること、小さな失敗を積み重ねながら収束していくことが大切ですね。講評会では「ディストピア」というキーワードを用いて説明しましたが、ときには極端な設定「もしも〜ならば」を出した方がより効果的な場合もあります。

「問いの設計=課題設計」をおこなうこと

卒業設計は課題設定を自ら課し、建築設計を通じてこれからの未来を築く建築的回答が求められます。建築設計はクライアントがいることで成立する事業のひとつですが、その設計を通じてなにを提示していくかは職能として答えるべきものであると私は考えています。与条件はクライアントごとに変わりますが、「なぜ建築設計をするのか」はひとそれぞれ。そのときに今回のようなワークショップは考えるきっかけを与えてくれたのではないでしょうか。

デザインリサーチを通じて問いを立てることとはすなわち、課題設計をすること。これは新規事業開発やブランディングでも同様です。「なぜ私(たち)はこの事業を興すのか」は、事業やブランドの強みを最大化させ、意思決定の重要な材料となります。問いとシナリオを生み出す今回のワークショップから、ひとりでもデザインリサーチの面白さに触れていたらうれしいです。

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