ててて見本市と大日本市から学ぶ、無意識に訴えるコミューニケーションの設計
短しい時間ですべてを説明することは難しい。エレベーターピッチよろしく30秒前後で自分たちの活動とプロダクトまたはサービスをきちんと伝え、3〜5分と対話をする準備ができているか。イベントに頼ることなくその準備をするためには、①視覚コミュニケーションで創造を喚起させることができているか、②文字情報と発話コミュニケーションのバランスを考えられているか。この2点が大切なのかもしれません。
東京に向かったのは、どちらもあまり大きくないけれど、芯の強い見本市である「ててて見本市」と中川政七商店らしさが溢れた「大日本市」というふたつの見本市に参加するためです。バイヤーとしてではなく、産地として出店することを想定したり、産地のイベントにお声がけできる方を探る目的がありました。どちらも初めての参加で、東京の集客力や求心性には毎度ながらとても驚かされます。
ててて見本市は出す方も買い付けする方も見て学ぶ方も熱意を感じる独特な雰囲気。出店物のクオリティが高いけれど、あえて雑多な雰囲気を醸し出しているのか、ごちゃっとした印象を感じました。広場での日曜マーケットのような、でも緊張感のある空間は、出店者の決意が見えてきます。
コミュニケーションの動線設計をマルチメディアでおこなう
会場や道幅が出店者や来場者に対して狭いので、ひとりあたりにかけられる時間はよほどでもない限りとても短いです。ましてや別の人と話しているときに過ぎ去る人の方が多い。
うまいなと思う出店者は伝えたい内容をまとめたコミュニケーションボードを掲示しつつ、リーフレットを側に置き、Q&Aを先に潰して本題に入れるようなコミュニケーションの動線設計がなされていました。
プロダクトをサイトんするだけに留めず、生活でのシーンを想定した、あるいは使うユーザーを想定しているのかなと思うところもあり、すごいなと驚いた次第です。自然の誘導からイメージの喚起まで、これをしてから始まる対話の質は高いものとなることは創造に難しくありません。
プラットフォームが醸し出す雰囲気を邪魔せずに個性を伝える対話スキル
次に出向いた大日本市はさすがの中川政七商店ディレクションです。淡い配色パターンやシンプルに価値を訴求するネーミングはどこも御多分に漏れない統率感はててて以上です。バナーを会場で統一しているのでごちゃつきも少なく、ちょっと大人な雰囲気を感じる者でした。
その上で驚いたのはスタッフの対面スキルの高さです。てててと比べてゆったりとした構成をとる大日本市は(時間が遅かったせいもあるけど)、各地から訪れるショップスタッフに少し長めに話を聞くことが可能です。ポップや店構えを工夫しても、圧倒的な場の攻勢に飲み込まれてしまっているようにみえたのですが、なんせ聞かせる話し方をされるのです。
要点をつまんで次々と商品の説明をつなぎ合わせるトーク力は圧巻でした。流れるようなトークの中で、こちらから質問を引き出させ、また新たな展開を生み出すこと。これはシミュレーションをしっかりしているのかなと思います。
漫才師の矢野兵藤の兵藤さんは、巧みな話術で有名ですが、ネタ一本きちんと書き出して修正を加えて「すべらない話」まで作り上げると話をされていました。同じように彼らもまた営業トークの分岐と接続のシナリオをつくり、その上をいったりきたりしながらまるで自然な対話に感じさせているのかもなと深読みしてしまうほどです。
目と口のコミュニケーションの裏側にある、無意識を意識的に操作することと書くと怖いですが、それほどまでに用意周到なコミュニケーションは滑らかでした。滑り出した先にクロージングをまっていたり、次なるタッチポイントを用意する。全国から東京に集まり切磋琢磨している産地の力強さとしたたかさを学ぶ1日でした。
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