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Woven Cityのインパクト: 逆転するヒエラルキー

トヨタが発表したWoven Cityプロジェクトに興奮している。自動運転実装に向けた規制緩和に業を煮やしたトヨタが、自腹を切って実証実験できる「都市」の開発に着手したからだ。世界的に開発が進められる大小さまざまな「モビリティ」に注目が集まる一方、日本で中心となる経産省や国交省の意思決定は遅く大規模な実験はまだこれからといったところだろう。閉鎖的と言われがちなトヨタが「オープン」な試みを始めたら、国や地方行政、メーカーやスタートアップ、研究者、もちろん僕たち国民にも大きなインパクトを与えるんだろう。

これまでの規制緩和や社会実験は国や地方行政がやるものだった。メーカーや研究者はそのサポート役でしかなかったが、今回の試みはそのヒエラルキーが逆転するかもしれない可能性を秘めている。企業が道路交通法の及ばない(であろう)「私有地」で実験し、そのデータを元に規制緩和や参入障壁の低下を促すことができることにつながるからだ。加速する社会の前に意思決定の遅れはどんどん悪目立ちし始め、複雑で巨大な社会課題の前ではもはや対応しきれなくなっている。小さな実験を繰り返すことのできる基盤と財源、そのどちらもあるトヨタがプラットフォームとしてWoven Cityを、他の組織などにどう開放するかが大きなポイントだと思っている。

トヨタが取り組むプロジェクトの背景には、例えば、2050年には地球3個分のエネルギーが必要とされるときに移動のイノベーションをどう生むのか。世界的に今の東京以上に人口が都心部に集中するとされる予測にどう対処するのか。総高齢化社会における移動を誰がどのようにサポートするのか。どれも一企業や行政がカバーできる範囲を超えている。下手したら国の政策を左右する技術がGAFAMに独占されてしまうかもしれないという恐怖から、MaaSの実装が社運を握るトヨタも参入したと見るべきだろう。

一方、コネクテッドな生活は監視社会に通じると批判的な見方もできるだろう。時代が追いついた頃にはディストピアSFさながらの風景が待っているかもしれない。しかし、それはトヨタだから、Googleだから、Appleだからと大差はない。このまま「優しく殺される」くらいならば、僕は試行錯誤できる可能性に投資したい。そのためにも、Woven Cityがどこまで透明性を確保するのか、セキュアな環境を整備できるのか注目していきたい。この点はMaaS実現に向けて国交省でも議論が始まっている

次世代ガバメント」にもあったが、これからの時代は大きな政府に期待はできないし、小さな政府では資本主義経済からこぼれ落ちる痛みを見て見ぬふりをする。第3の見過ごさないシステムをインストールするきっかけとして、大きな一歩だ。僕が活動する名古屋市の有松は、学区単位で高齢化の進行も早く、歴史観光拠点と名古屋市が位置付けられたこともあり、モビリティは重要なテーマのひとつだ。インクルーシブな未来を目指して、この機会を生かしていきたい。

めっちゃいい↓
「都市とモビリティ 〜自動運転車時代の都市を考える〜」メモ(トヨタ「Woven City」をきっかけにver)@FUKUKOZY
https://note.com/fukukozy/n/nf9a0b3654dbe


ここから蛇足

少し話は変わるが、未来の都市像をイメージを持って想像することは建築家の得意分野だった。ル・コルビュジエの「輝く都心」や、丹下健三の「東海メガロポリス構想」などが最たる例だ。しかし、社会が成熟する中でビックピクチャーを描く建築家は影を潜め、ことさら日本では新自由主義社会を生き抜く実務建築家の道が太くなってきた。そんな中、世界的なスターアーキテクトであるBIGが、世界的な大企業のトヨタと手を組んで未来構想をするなんて夢にも思っていなかったのは僕だけではないはずだ。

ビャルケ・インゲルスのプレゼンは、貪るように彼らの設計する建築を見ていた時と相変わらずかっこよかった。どこまで彼らの組織にいる、あるいはパートナーとなる、フューチャリストやコンサルタントが洞察を与えているかは分からないが、未来の一端を生き生きと見せている。自動操縦自動車やスローモビリティが生活と結びついた先にある「当たり前な生活」を、建築家という職能で語っている。建築の未来を明るくするような話題に少しホッとする自分がいた。

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