【小説】神社の娘(第16話 君の名前、漢字、ひらがな、カタカナ、なんだ)
風のように去った二人を見送り、橘平は家に戻った。
居間では桜が手寧に紅茶を飲んでいた。
お抹茶飲んでるみたい、と橘平はその姿を見て思った。
「紅茶、おいしいよ」
「あ、うん、ありがとう。桜さんは急ぎの用事ない?」
「うん。お茶をいただいたら帰りますね」
こうして二人きりになったのは、あの雪の日以来だ。橘平は桜の横に座り、自分が淹れた紅茶を飲む。しーんとした部屋に、ティーカップをソーサーに置く音が響いた。
「ねえ、桜さん。メッセージアプリのアカウント教えてほし