見出し画像

留置場では主に事件物、犯罪物の読書にはまる

一方で、その頃の私は、留置場で老眼鏡を借りられることを知り、官本(官公庁の本ということだろう。何かにつけ、面倒臭い「官語」が出てくる)を借りるようになり、次第に読書にはまっていく。

元々、私は本は大好きだったが、結婚してから、やがて離婚し現在に至るまで、仕事に追われ、ほとんど本は読んでいなかった。

留置場では主に事件や犯罪物を始めとするすさんだものを中心に読むことになった。自分がこういった環境にいるせいか、どうしても興味の対象がそちらへいってしまうのだろう。

留置場では本は9時から19時半まで借りることができたのだが、その間私はずっと本を読み続けることになる。1日に1冊読んでしまうこともざらで、遅くとも2日以内に1冊の本を読み切っていく。そうすることによって、

狂おしいほどの、遅々として進むことのない時間の流れを自分の中でコントロールすることが可能になったのである。

留置場では事件物、犯罪物の小説やドキュメンタリーが多くあり、

このセレクトってどうなん?
とも思ったが、刑事施設としての留置場の性質、そもそもの一般的な警察官の人種を考慮すると、今なら理解できなくもない。

一方、拘置所と刑務所にも事件や犯罪物の小説などもあったが、自己啓発書や良書に属する内容のものも多く含まれていて、そのセレクトは、なるほどなとうなずかされる面もあった。さらに、刑務所では特別官本と称して、願せんを出せば聖書なども借りることができた。

そうして、私は拘留期間を通じて、その都度、不思議なくらい良い本に巡り合っていくことになる。

話は戻る。留置場で借りた本の極めつけは、実際に起きた凄惨な事件を題材にした小説📖『ケモノの城/誉田哲也』(双葉文庫)だった。Rさんの薦めで借りて、おもしろかったのだが、内容があまりにも酷すぎて、もう二度と読みたくない一冊だった。

実際にあった事件とは、2002年に起きた北九州連続監禁殺人事件であることを、その後、📖『完全ドキュメント 北九州連続監禁殺人事件/小野 一光』(文藝春秋 ¥2420)を紹介する新聞の記事で知ることになる。
👉この本の紹介記事の筆者は、「この本を薦めるべきかどうか迷う」という。~📰2023.5.7 読売新聞 朝刊~

さらに出所後に📹YouTubeの動画、Wikipediaで詳細を知り、愕然とする。この事件の背景はたいへん複雑だが、この事件に関して私の頭の中から離れないのは、恐らく多くの人たち同様、

なぜ人はそこまで洗脳されてしまうのか?
ということだ。

さらに、この事件と同様に人を洗脳することによって起きた尼崎事件の詳細も、最近になってYouTube動画で知ることになる。

他に、📖『もう時効だから、すべて話そうか 重大事件ここだけの話/一橋 文哉』(小学館文庫)という歴代の世間を騒がせた事件に関するエピソードを綴った本があり、その中の、

死刑囚が最期の首に縄をかけられる瞬間に本能的に抵抗する
というくだりが怖過ぎた。

自分自身が囚われの身であるせいか、何だか読んでいて真に迫るものがあるのだ(🔗💠「死刑論」(📖P60『2023.3.8~』👉テーマがテーマなだけに、追って、整理した上で公開を検討させていただきたいと考えております。よろしくお願い申し上げます。)

さらに、これも同じく、何年も全く読んでいなかった新聞を読むようになっていた。閉ざされた環境に閉じ込められているせいか、事件や犯罪に限らず、やたらと世の中のことに興味が沸き、検察までを往復する護送者の中から見る
フツーの人、一般民衆の姿さえもが恋しくてたまらなくなっていた。

こんな感情は今まで生きてきた中で初めてだった。

テレビも、もう何十年も見ていなかったから、新聞で久しぶりに見る各界の有名人たちの顔が(自分が記憶しているより)老けているのを見ると、時の流れがそこはかとなく感じられ、感慨深いものがあった。

🔗💠「シャバに恋して」(📖P.57『2023.3.8~』
🔗「シャバに戻ったらやるべきこと」📖P16『2022.8.22~』


サポートありがとうございます。カルマ・ショウと申します。 いただきましたサポートは作品を完成させるために大切に使わせていただきます。尚、体や精神を病んでらっしゃる方、元受刑者など社会的弱者の方々向けの内容も数多く含むため、作品は全て無料公開の方針です。よろしくお願い申し上げます。