「道成寺」前編~お能と謡曲のお話Vol.4
訪れた場所とそこにまつわるお能・謡曲の物語
初回は竹生島、2回目は奈良大神神社の三輪、3回目は青森善知鳥神社と、
そこから少し時間があきましたが、今回4回目に選んだのは、
和歌山県紀勢本線きのくに線の道成寺駅から徒歩すぐ
天台宗のお寺道成寺です。
2018年の夏 まだ7月でしたが、とても暑い日でした。
ということで、この季節になると思い出す場所でもありますので、
当時の記録からです。
無人駅~御本堂までの道
わたくしが尋ねた時は、三重県の花の窟屋神社によった帰りでした。
花の窟屋神社についてはこちらを
ということで、紀勢本線上りで道成寺駅に着きました。
下りの場合、和歌山駅から普通にのっても1時間15分程度でつきます。
駅は小さな無人駅。そこからすぐの所に、ちょっとしたお土産物屋さんがならぶ参道と、普通の民家もならぶ道。
駅から多分、7~8分歩いた辺りでお寺の石段が見えてきます。
凄い急な石段だと身構えましたが、案外少なく、62段あるそうです。
そしてこれは後で知りましたが、「この階段はのぼりやすく、おりやすい」と言われているそうです。
何?ご利益?なんて思いそうですが、実は石段の両脇にある左右の土手が平行ではなく、上に向かって八の字のように開いているそうです。
これにより、石段の頂上が近くに見えるように工夫されているそうです。
でも、わたしの場合は、これが「急な階段と見えてしまった」からこそ、
「その割にはすぐだった」と言う意味で登りやすかったのかもしれません。
頂上には赤い山門、仁王門がありまして、そこをくぐります。
そこでまた素敵だと思ったのが、その正面、まっすぐ先、目の前に本堂があるのです。しかもかなりオープンな印象を与えてくれます。きっと実際には見えないはずですが、一番奥の中央に祀られている仏様の姿が、もうそこから見えるような感じ。
参道から石壇、次に仁王門、そして本堂には千手観音様と続きますが、全部が一直線に配置されているそうです。これも知らずに登ったのですが、そこに立った時の心地よさと言いますか、清々しさといいますか、なぜかとても
晴れやかな気持ちになる所でした。もしかしたら、まっすぐに歩んできて、その正面に観音さまがいてくれるからなのかもしれません。
音声での配信はこちら よかったらきいてみてください
正式には天音山 道成寺。
大宝元年(七〇一年)に創建された、和歌山県最古の寺です。
ご本尊は千手観音さまですが、そのお顏がまた美しいのです。
1300年変わらず、ご本堂にいらっしゃるとか。
宝物殿以外はそのまま境内に入れて。お参りもできて、
お寺には浄瑠璃などの元になった安珍清姫物語の絵巻物もあるそうです。
ただ創建のお話はこちらではなく、髪長姫の物語が別にあります。
が今回は能謡曲に関してなので、また別の機会に譲ります。
駅から境内の映像はこちらからどうぞ👇
道成寺に伝わる安珍清姫物語
延長六年(929)のことだそうです。
奥州から熊野詣に来た修行僧がいました。名を安珍さんといいます。
安珍は旅の途中に泊めてもらった庄司(後の庄屋や名主のようなもの)の娘・清姫に一目惚れされたそうす。
しかし困った安珍は困ってしまい、熊野からの帰りに、再び立ち寄ることを約束して旅立ったそうです。
清姫は待ちました。しかし、約束の日に安珍は来ません。
そこで帰っていく安珍を追いかけて、そして追いつきます。
でもその時すでに清姫は鬼のようだったそうです。
「おのれはどこどこ迄やるまじきものを」と言い、
安珍は「南無金剛童子、助け給え」と祈りました。
そしてそこからは、死闘です。
安珍は日高川に至り、船で渡って逃げようとします。
船頭さんは、追いかけてきた清姫を渡らせません。
すると清姫は、毒蛇となって川を渡ります。
そして道成寺まで逃げついた安珍です。
お坊さんが安珍をかくまいます。
そこで梵鐘の中にかくれました。
すると蛇がやってきて、鐘を撒き、竜頭をくわえて、火焔をあげます。
その鐘の中で安珍は焼け死にます。
その後、清姫は我に返ったのでしょうか。入水して自ら亡くなります。
その後、住持は、二人が蛇道に転生した夢を見たそうです。
そこで、法華経供養を営んだところ、二人が天人の姿で現れ、
熊野権現と観音菩薩の化身だった事を明かした、ということです。
これが、お寺に伝わるお話です。
けれど、お能のお話になると、少し背景が違っています。
物語だからこそなのか、お能の方が切なく感じます。
ちなみにこの清姫のお墓とされるところが熊野古道の中辺路の
富田川の横にあります。熊野本宮に向かうバスの中から見て、
とても気になっておりましたが、まだ行ったことはありません。
たくさん子どもたちが水浴びしている大きな川も近く、温泉もあったので、いつかまた出かけたいと思っています。
ということで今日はまず前編、
道成寺への旅記録とそこに伝わる安珍清姫のお話でした。
後編へつづく…
【このシリーズの過去投稿】よかったらのぞいてみてください
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