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佐藤佐吉演劇祭2022参加作品『なんとなく幸せだった2022』上演台本

はじめに

かるがも団地 佐藤佐吉演劇祭2022参加作品『なんとなく幸せだった2022』

相模大野の高校で同級生となった男女7人+1人の、およそ10年間の悲喜こもごもを描いた青春群像ポップジャムコメディです。

ポップジャムコメディってなんやねんって話なのですけど、その昔『ポップジャム』というNHKの音楽番組がございまして、要は懐かしいお歌を沢山添えながらお届けするコメディという気持ちでつくりました。
劇の中でもカラオケが一つのモチーフとなっています。

昨年8月の第5回本公演終了後、キャストオーディションを開催。
過去最大数の応募があった中から(たいへんたいへん恐縮ながら)選ばせていただいた方々を中心に、2022年の今、このフレッシュな座組でこそ描ける青春群像を目指して創作をしました。

劇場公演は連日の満席(正直こんなの初めてでちょっとびっくりしている)、配信版も含めて、動員は過去最多を記録することができました。
スタッフさんも第5回公演に引き続き、外部の方に大変なお力添えをいただきました。プロフェッショナルな皆様の技のおかげで、さらに豊かで鮮やかな劇の時間・空間を実現できるようになっていくのが本当に嬉しいです。

沢山のご観劇本当にありがとうございました。毎度のことながら、よろしければどこかで感想を聞かせてもらえると嬉しいです。

藤田恭輔

おしらせ(2022/4/22 藤田)
○舞台写真と制作後記を追加しました。お待たせしてしまい失礼いたしました。舞台写真は全てのシーンを網羅しているわけではございませんのでご了承ください。写真は稲垣隼さんに撮影いただきました。いつもありがとうございます。

○併せて台本中の記載に関して、改訂前の台本データを参照しておりましたため、複数の箇所に誤記があり、この度修正をさせていただきました。
修正箇所は本記事のおわりにまとめて記しております。
お買い上げくださいましたお客様には謹んでお詫び申し上げます。

佐藤佐吉演劇祭2022参加作品『なんとなく幸せだった2022』上演台本

作:藤田恭輔(と言いつついつも座組全員で推敲しています)
脚本協力:宮野風紗音・古戸森陽乃
記録写真:稲垣隼

■当日webパンフレット・演出のことば■
劇場へのご来場・配信版のご購入をいただき、
誠にありがとうございます。

『なんとなく幸せだった』というこの劇は、
かるがも団地の3人がかつて属していた劇団時計にて、
2015年に30分の短編として上演したのがはじまりです。

大卒して劇団を旗揚げ後、2019年に第2回公演として上演し、
そして今回で3度目となります。
青春群像劇というパッケージや、モチーフとしてのカラオケなど、
幾つかの要素は引き継ぎつつも、
繰り広げられる人間模様は毎回全く違うものをこしらえてきました。
『2022』も再演ではなく、また別の劇としてご覧いただければと思います。

15歳から25歳までのお話です。
私自身がこの劇と共に、登場人物たちと共に歳を重ね、
26歳になった今回、とうとう彼女ら彼らを追い越してしまいました。

すべてが思い出になってしまったことを少し寂しく思いながら、
今日もいつも通り私を生きていこうと思います。
どうぞごゆっくりご覧ください。

【登場人物】※太字の役だけ追えれば大体大丈夫です。

2-3年 C組

瑶樹(町田瑶樹)/生徒/演劇部員/大泉洋/蓬田  ……………………… 北原州真
梅(大野梅子)/生徒/演劇部員 …………………………………… 冨岡英香(もちもち)
伊勢ちゃん(伊勢原ひより)/生徒/演劇部員/和久田アナ/コロス  ………………………………………………………………………  信國ひろみ(バケツまみれ)
文乃(片瀬文乃)/生徒/タクシー運転手/コロス/渋沢の先輩 … 中嶋千歩
黒川くん(黒川稜介)/生徒/藤井風/渋沢の上司/コロス …………… 森将人
渋沢(渋沢崇之)/生徒/演劇部員/写真家/コロス ……………… 岡本セキユ
ミカド(厚木里緒菜)/生徒/演劇部員 …………… 遠さなえ(あっかんベイベ)

ほか
朋華さん(千歳朋華)/注射先生/生徒 …………………………… 谷川清夏(1999会)

先生/生徒/演劇部員(ユリカ)/コーヒー坊や(・コーヒー王子こと柴田純平)/川口春奈/梅子の上司/ヨガ講師/綿貫 ………  宮野風紗音(かるがも団地)
ラジオ番組/島村楽器店員 ………………………………… 古戸森陽乃(かるがも団地)*
*声のみの出演


第一幕:2012.04.- 2015.03.


   役者たち入場してきて、各々スタンバイする。
   宮野が前説。

宮野 (前説を終えて)ここからの進行はこちらのお嬢さんにバトンタッチします
梅子 はい、頑張ります
宮野 それでは私はあちらにハケます

   宮野、退場。

梅子 こんばんは(こんにちは)。本日はご来場いただき誠にありがとうございます。肩の力を抜いて、楽しんでいっていただけたら幸いです。

私は梅子といいます。大野梅子。3月生まれなので、ま梅子となったんですけど、ちょっと古くさいっていうか渋い感じ、桜とか桃とかがよかったなって偶に思います。

今日は私が高校に入ってから今日までの、10年くらいの話をします。ありきたりな私たちの、ありきたりな10年の話です。

では、始めます。7年前のことです

○教室(2015年3月)

   テロップ『2015.03.』
   3年C組の教室。卒業式を終えて、最後のホームルームである。

帝 みんなと離れるのは、さびちいけど、う、う、(泣いてて何言ってるか分からない)
先生 ありがとねぇ帝、ずっと学級委員やってくれてね
梅子 級長の帝です。あ、あだ名です、帝王の「帝」でみかど。いつからか私たちの学年を席巻していたので、みんな帝って呼んでました

   帝、sit down.

先生 丸2年、担任として皆さんと一緒にこの学び舎で過ごすことができて幸せでした。艱難汝を玉にす(とか)。じゃ、解散っ

   生徒たち、ぞろぞろと退場。
   一人教室にぽつんと残っている梅子。
   瑶樹が歩いてくる。ハンカチで手を拭いている。

瑶樹 あれ?
梅子 ……

   瑶樹、教室を見渡す。
   窓から外をのぞくとみんなが帰っているのが見える。

瑶樹 え、え……?え解散した?
梅子 うん……みんな待ってたけどあんまり来ないから
瑶樹 うっそ、え、うわー、やらかしたー、やずっと腹くだしててさ、式の時ももう限界で
梅子 知ってる
瑶樹 えーマジか……ましょうがねえな、みんな、部活の集まりとかあるしな。あれ大野さんは?放送部
梅子 先週送別会しちゃったから

   二人、ほくそ笑んでいて、

瑶樹 そっか、なんかあっけないよな
梅子 そうだね……
瑶樹 じゃあ俺帰るわ
梅子 (意を決して立ち上がり)……町田くん
瑶樹 (振り返って)……?

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