うどんの好み
あれは小学校4年生か5年生の頃、ほぼ毎朝を言っても良いぐらい、うどんを食べていた時期がある。
なぜそんなにうどんにハマっていったのか、今考えても思い出せない。当時からしても「なんでこんなに食べるようになったんだろう…?」と、我ながら不思議に思っていたぐらいだ。
食べ方は常にざるうどん。シマダヤのうどんを茹でて、当時、家にあったガラスの、表面がザラザラの器に盛って食べていた。もう30年も前のことになる。ミスタードーナツの景品だったのか、ガラスの底にキャラクターの浮彫のようなものがあった気もするが、詳細は覚えていない。夏休みの朝、私はそれをズルルとすすり、塾の夏期講習へと向かって行った。
具も薬味も、ほとんど使わなかったと思う。今のようにネギだの天ぷらだの、ガンガンにサイドを足すということをしていなかった。少年時代の私は、それだけうどんに対して非常に純粋だったと言える。それが大人になり、東京に染まり… 嗚呼、私はすつかり汚れてしまつた。
この小学校の頃の経験は、私自身を「麺好き」と自覚させるに至った。ラーメン、冷やし中華、パスタ、そしてうどん… 何かの折につけて麺類を食べることが増えていった。麺を食べないからと言って禁断症状が出る、幻覚が現れたり暴れたり… ということは一切ないが(その点は安心してほしい)、麺類を食べない期間が続くのはなんだか寂しい。
ちなみに蕎麦も好きだったが、数年前にアレルギーが発覚して食べるのを止めてしまった。蕎麦自体は食べても何も無かったのだが、蕎麦茶や蕎麦湯を飲んだとき、全身に痒みが現れてしまったのである。これは本当に悔しかった。私が財前五郎ならば、
などとでもしたためているところであった。ちなみに現在は完全に蕎麦断ちをしているので、その点についても安心してほしい。
小学校時代のうどんブームが過ぎ去った後も、当然のようにうどんは食べている。最近で言うと外食では最寄り駅にある丸亀製麺を利用する機会が圧倒的に多いだろうか。家で食べるときは、長いことシマダヤ政権が続いていたが、一時期、そのコシに憧れて冷凍うどんを愛用していたこともあった。テレビでもうどんの食レポを見ると「コシがあって美味しい〜♡」と言っていたし、私もすっかりコシの信者となっていた。ちなみにテーブルマークは加工デンプンという形で、コシを出すためにタピオカ粉の使用を公表している。
その後再びシマダヤに戻したが、調べたらシマダヤも「加工澱粉」を使用しているとのことで、ひょっとしたら同じことなのかもしれない。ともあれ私も、家でうどんを茹でては「コシがあって美味しい〜♡」と言ってたとか言ってないとか。薬味を入れ天ぷらを入れ、不純になってしまったが、不純は不純なりにうどんの味を愉しんでいた。
その嗜好に変化が生まれたのは、当時SNSで交流があった福岡の方に「福岡には柔らかいうどんがある」と聞いたことである。また、マキタスポーツさんが「10分どん兵衛」を提唱したことも大きかったと思う。
「うどんはコシがあって当たり前」だと思っていた自分は、まるで新種の生物を発見したかのように興味が湧いた。その証拠に、なんということだろう、私も「8分赤いきつね」なるものを作っているではないか!
しかし上述の通り、買ってくるうどんには加工澱粉が入っているため、自作でもしない限りなかなか「柔らかいうどん」にありつくことはできない。現実には多くのお客さんが「コシ」を求めているのだろうし、それを入れないと麺がちぎれてしまうとか、商品としての問題もあるのかも知れない。
それだけに始めて福岡のバスターミナルで「牧のうどん」を食べた時は衝撃的だった。
ちなみに2017年に愛媛松山で「アサヒ」の鍋焼きうどんを食べたときの、煮込まれた柔らかい麺もなかなかの衝撃があった。衝撃のあまり、Amazonで「アサヒ」と同じアルミの小鍋を買ってしまったぐらいである。
そして最近は乾麺にも手を出している。両親が時々通販で買ったりすることはあるが、自分自身で買うということはあまりしてこなかった。
きっかけはYouTubeで、100万人登録の「けんた食堂」を観ていて、ふと「乾麺のうどんも良いな…」と思えたのである。
スーパーの乾麺コーナーの前で「けんた食堂」のYouTubeショートを再生しつつ、動画で使っているものと同じ日清の乾麺を購入。さすがにめんつゆまでは作れず、市販のツユを使用したが、あとはほぼ同じレシピである。麺を茹でて冷水で締め、豚肉を茹でている鍋の中にうどんをくぐらせる。めんつゆにはネギと生姜。
豚の出汁をうどんに吸わせるので、いわゆる冷しゃぶうどんとも違う。一度冷水に通しているので、熱盛とも少し違う。面白く、不思議で、そして美味しい味わいだった。
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