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祈りのカタログ・第十二話「結界とは何だろう?」

 人がその霊力を駆使して張る〈結界けっかい〉は祈りの技法のひとつです。
——自分には霊力などないから……。
 と思っている人も、きちんとした手順を学べば霊力と呼ばれる力が強くなって、小さな結界くらいは張ることが出来るようになります。
 一般に、
——霊力は幽霊を見る力だ。
 と、勘違いされています。幽霊を見るのは霊視力を持つ人だけです。霊力のことではありません。生きている人には、強さの違いがあるだけで霊力そのものは宿っています。人に何の霊力もなければ、それは、もう、人とは呼べません。しいて呼ぶならば〈死人しびと〉と呼ぶのが正しいです。
 霊的な力を取り除いた存在を〈死人〉と呼びます。この時、体から霊的な力が抜け出して、その姿を見せるモノは〈死人〉ではなく〈亡霊〉の方です。つまり〈死人〉とは、人から基本的な霊力を抜き去った、ただの抜け殻のことを意味しています。そして、抜け出した霊の方を〈亡霊〉と呼ぶのです。ちなみに、この亡霊の内、美しいのを、おおむね〈幽霊〉と呼びます。

 さて、〈結界〉と言う言葉に対して、あなたは、どう言うイメージを持っていますか?
 何やら不思議な霊力で魔物が入って来れなくなるエリアを作ることでしょうか?
 それとも、やはり不思議な霊力で特別な誰にも見えないエリアを作って、その中に隠れてしまうことでしょうか?
 そう言う〈結界〉もあります。最初から、そのような高度な〈結界〉のことを書いていても、興味のある人はいるかも知れませんが、実用的ではありません。たとえ、方法を知ったとしても、多くの人に出来ないことだとしたら、いくら書いても意味そのものがありません。今回は実用的な〈結界〉の基本について書いてみようと思っています。
 まず、〈結界〉は〈祈りのひとつ〉であることを心の中に留めておいてください。
 これから張る〈結界〉が、もし、相手に破られるとしたら、それは結界を張った人の心が弱いからです。
 今回、張る〈結界〉は人間に対して作用するものです。もちろん、〈結界〉の種類の中には、魔物や、幽霊に対して作用するものもあります。しかし、たとえば嫌いな知人がいたり、不都合なことをする知人がいたりした時、この〈結界〉を使うと便利です。なぜ便利かと申しますと、その人が近づけなくなるからです。

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