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播磨陰陽師の独り言・第404「神農さんのこと」

 11月22日~23日は、大阪の道修町どしょうまちの少彦名神社で、神農祭があります。
 大阪の一年は、十日戎ではじまり、神農祭で終わります。そのことから、神農祭は「止めまつり」とも呼ばれています。
 本来の神農祭は、冬至の日に行われていました。冬至は新暦の12月21日ですが、その日は旧暦では。11月の20日前後にあたります。その旧暦が、新暦とごっちゃになってか、今では11月の終わりに行われるようになりました。昔から〈冬至の日の祭り〉としてではなく、〈11月22日のお祭り〉として知られていたからだと思います。
 この祭り、大阪では愛着をこめて〈神農さん〉と呼ばれています。神農さんは、漢方薬の神さんです。漢方薬は、今では薬関係の仕事をしている人々が崇敬しておりますが……かつては播磨陰陽道でメインで祀られる神の一柱でした。
 お医者さんなのことを、古い言葉で〈薬師くすし〉と呼びます。これは、薬を作るからです。薬は、薬師の神である〈少彦名すくなひこなの神〉の与えるものとされています。この少彦名の神が、中国から来た神農神と習合して、神農信仰となっていく訳です。
 ネットの神農さんの説明には、

——神農祭で授与される、五葉笹に吊るされた張子の虎が有名である。文政五年(1822年)、大坂でコレラが流行したが、道修町の薬種仲間が疫病除薬として『虎頭殺鬼雄黄圓ことうさっきうおうえん』と言う丸薬を調合し、少彦名神社の神前で祈祷して、罹患者りかんしゃなどに施した。
 その時に合わせて、五葉笹に付けられた張子の虎を配布した。その丸薬の効能が高かった為、張子の虎の御守がよく知られるようになった。五葉笹には、表面に〈祈願・家内安全・無病息災〉と記された赤い紙札、〈薬〉の文字印が腹に押された張子の虎、少彦名大神御靈と記された布製の神札、花詞《はなことば》の札が付けられている。

 とあります。
 播磨陰陽師は、播磨の国の軍師の一族の末裔です。播磨で軍師と言えば、黒田官兵衛公が浮かびます。公は、播磨陰陽師たちを手足のように使い、霊符と目薬を広めて情報を得たのです。そのことからも、昔から播磨の陰陽師たちの中には、薬に詳しい一派がいました。今では遠い昔のお話しですけど……朝十時から夜八時まで神農祭があるそうです。

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