御伽怪談第一集・第五話「耳をすますと」
一
不穏な事件の多かった寛政の頃(1790年代)、越ヶ谷宿にあるサムライが住んでいた。実名を公表する訳にはいかない。とりあえず宮園白水とでも呼ぶことにしておこう。白水の竹馬の友に、面高文五之助がいた。
ある秋のこと、文五之助は白水の住む越ヶ谷宿の屋敷を訪れ、普請奉行の視察の仕事を兼ねて三泊ほど世話になることとなった。
白水は元々江戸の生まれである。だが、三男だったこともあり、何年か前、越ヶ谷の武家屋敷に入り婿したのだ。
越ヶ谷宿は野鳥の多い土地として知られて