御伽怪談第ニ集・第五話「不名誉な噂〈前編〉」
一
その昔、ろくろ首は病気だと思われていた。しかも、単なる病などではなく、化け物となる病である。深い業を持つ者が罹るとされ、感染ると誤解されていた。そのため、もし、ろくろ首であることが分かれば大変なことになった。謂のない差別を受けたのである。もちろん、本当のろくろ首かどうかは問題ではなかった。噂になっただけでひどい扱いを受けることとなった。このような悲劇にも似た境遇から幸福になった者がいた。
宝暦(1750)の頃のこと。少ない元手で貸本屋をして世渡りする若者が増え