夏越の大祓
昼間、探しものをしていた。井上陽水の「夢の中へ」を歌いながら、カバンの中も机の中も探したけれど、それは見つからなかった。
代わりに、他のものを見つけた。精麻だ。
これは確か、去年の夏頃に買ったような記憶がある。友人が精麻飾りのワークショップに参加した後、私にも一緒に作ろうと声をかけてくれて、彼女の家で精麻飾りを作った。その出来栄えがあまりよくなかったのでもう一度作り直したいと思い、後日自分で購入したものだ。けれど、買うことに満足してしまうタチの私は、精麻を買った後、そのまま作らずに放置していた。そして、いつの間にか日々は過ぎていき、結局、精麻飾りを作ることなく、私はイギリスへと旅立った。
イギリスへの引越し荷物のどこかに精麻を突っ込んでいた記憶はあったけれど、あえてそれを探して、精麻飾りを作ろうという余裕は、この半年間なかった。けれど、夏越の大祓の今日、それを見つけたのだ。
これは、今日、精麻に触れて、紐を撚って、精麻飾りを作ることで、心身を清めて、この半年間の穢れを祓えということなのではなかろうか。私お得意の妄想のはじまりだ。
と、いうことで、精麻飾りを作ることにした。精麻飾り作りを教えてくれた友人にLINEで作り方を尋ねた。時差はあれど、彼女からはすぐに返事が来た。わかりやすい写真や動画を送ってくれた。彼女はいつも、仕事がはやい。
何度かメッセージをやりとりしていたら、神聖なる精麻飾りの話をしていたはずなのに、いつの間にか、下ネタへと変わってしまっていた。なぜそうなったのだ。こんな調子で心身を清められるのか、オイ。と我ながらツッコむ。
その後、なんだかんだと家の用事をこなしていたら、夜になってしまった。時刻は8時半。今から作って、今日中にできるのか?なんせ私は超不器用で、工作や制作が大の苦手なのである。そんな私がその時間から人生2度目の精麻飾りを始めてしまった。
はじめのうちは、やり方もなんだかよくわからなくて、あーこれはやっぱりあかんやつや、今日中には終わらんやつや、と感じていた。
しかし、友人に送ってもらったリンクや写真をよくよく見直し、無心で紐を撚り続けていたら、いつの間にか紐ができていた。昨日に引き続き、私、やればできる子!
さぁ、紐はできた。今度はそれを二重叶結びという形に結ぶのである。これまた苦手な作業だ。髪の毛の編み込みもできない、紐を結ぶと言えば、ちょうちょ結び一択の私。結べる気がしねー。
いや、でも待てよ。紐を作るのも、思っていたよりもずいぶん早くできたではないか。今日の私なら結べるに違いない!アイキャンドゥーイッ!と自分に言い聞かせたら、本当にできてしまった。やっぱり、私、やればできる子!
今回も、完成度はあまり高くないけれど、前回作った時よりは、とても上手くできたと思っている。しかも1人で!
いや、違う。1人じゃない。彼女が日本から手伝いに来てくれていた気がする。昼間、彼女と交わした精麻飾りから下ネタトークへのくだり。そのやりとりで改めて、物理的、時間的距離に左右されない、彼女と私の心の距離の近さを感じていた。なんと言うのだろう。気が合う、とかそういうレベルの話ではなくて、どこかで繋がっている感覚。少し大袈裟に言うのならば、テレパシーが通じるような感覚かもしれない。いや、現実にはテレパシーなんて通じてないんだけれど、いつかなにかが私の中で覚醒した時に、彼女とならテレパシーを感じ合えるのじゃないかという感じ。テレパシーでも、下ネタトークになっちゃうのかな。ちなみに、その感覚を夫に対して感じたことは、一度もない。
話が大きく逸れたけれど、今日は、そんな彼女の氣をもらったと感じるのだ。その氣が、不器用な私を助けてくれたのだ。これは私のいつもの妄想ではなく、確信だ。
そんなこんなで、無事に夏越の大祓の日に、精麻飾り作りを完了した。これで、この半年間の穢れは祓われ、これからの半年間も、無事に過ごせるだろう。
二重叶結びに願ったのは、みんなが楽しく元気で過ごせること。きっと、叶う。いや、叶える。