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有明の月

今、住んでいる家では、私が寝ている部屋は東向きに窓があり、トイレはその反対側、西向きに窓がある。

私は毎朝、起きたらまずはトイレに行く。最近は日照時間が長くなり、日が昇る時間も早くなってきたけれど、私が起きる時間(6:20)はまだ薄暗い。したがって、朝一番にトイレに行くとき、まだ窓の外は暗い。しかし今朝、まだ暗いはずの窓の外に、なにかとても明るい光が見えていた。あんなところにライトなんてあったかな。トイレの窓ガラスは磨りガラスなので、その光源が何なのかはっきりとはわからない。でも、いつもとは違う光がそこにあることは、寝起きのぼんやりとした意識でもわかった。なんだろうと不思議に思い、確かめようと窓を開けたら、朝の冷たい空気とともに室内に入り込んできたのは、満月の明かりだった。そうか、昨日の夜は満月だったんだ。昨日の夜は雲に隠れて見えなかった満月が、まだ薄暗い朝の空に、煌々と輝いていた。夜空に見る満月はもちろん良いけれど、朝一番に見る満月もまた良いものだ。

夜空を明るく照らす月や星は、昼間はその姿は見えない(月は昼間でも見えることはあるけれど)。けれど、その光や存在がなくなったわけではない。太陽の光が明る過ぎて、月や星の光が見えないだけ。自分たちの瞳に映るものだけがこの世に存在しているわけではなく、瞳に映らなくても、そこに存在しているものは、無数にある。それに気づくことができるかどうか、それを意識することができるかどうか。それだけで、人生や命に対する向き合い方が変わってくる。より、豊かになれる。そんな話を、ちょうど先週、知人の話でも聞いたところだった。

朝月夜 ぼんやりかすむ 君の顔

有明の月を見つめながら、いろんな人の顔を思い出すともなく思い出した朝だった。