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家事か仕事か?『家事か地獄か』から学ぶ。

旦那さんから、職場の上司が話していたという武勇伝を聞いた。

「自分たちが若い頃は、夜中の一時二時まで働いていた!だからこそ、今の人脈がある!」

だから、もっと頑張れ、とのこと。

私も娘も、それを聞いて目が点になった。

「家族はたまったもんじゃない」と、思わず言い返してしまった。

だから定年過ぎた今も、家に居場所がなくて天下りみたいな感じでここにいるんじゃないか…とまでは、さすがに言えなかったけど。

稲垣えみ子『家事か地獄か 最後まですっくと生き抜く唯一の選択』を読んだ。

著者の稲垣えみ子さんは、朝日新聞社を50歳で退職し、そこから冷蔵庫も洗濯機も炊飯器もない生活にたどり着いた。とにかく、家電に頼らず生きている方。

そんな生活はもちろん真似できないけれど、この本を読むことでほとんどの人の家事に対するイメージが180度変わると思う。
今現在、一家の家事を担っている人にとっては、老後の不安が確実に減ると思う。反対に、家事を一切任せてしまっている人にとっては、まさに地獄を見ることになるかもしれない。

家事をするということは、すなわち自分の面倒を自分でみることである、と著者は言う。

自分の面倒を自分でみる
これがほんとうの
お金に頼らない生き方

今の私の目標は、最後まで幸せに生きること、すなわち死ぬまで家事をやり続ける、自分で自分の面倒をみて生きていくことだ。
そのためには身の丈にあった暮らしをすればいい。

稲垣えみ子『家事か地獄か』説明

 家事ができるとは、一言でいえば「自分のことは自分でできる」ということ。日々健康で美味しいものを食べ、すっきり片付いた部屋で自分に似合うこざっぱりしたものを着て暮らす。その人は「家事ができる人」だ。
 その人は間違いなく幸福だ。…家事ができることは最も確実な自己投資であり、…究極のセーフティネットである。…一寸先は闇の世の中でも、臨機応変に泰然として生きていける。
 家事を人に丸投げしている人は、これほどの宝を自ら投げ捨てているのである。

稲垣えみ子『家事か地獄か』

家のことができるって、当たり前のようでそうではない。死活問題である。子どもだって大人だって。著者の高齢の両親についても触れられており、「家事」は介護問題や終活にも密接につながっているのだということを痛感した。

著者は、おわりにの章で「総理、してますか?」と問うている。

 もし、私が総理大臣だったならー。
 最大の政治課題として、まず家庭科教育の充実・普及を図るネ。

…だって長時間労働も格差問題も少子化も老後不安も、どれもこれも大元をたどれば、結局は「お金がなきゃ人生どうにもならない」「でも十分なお金が手に入りそうにない」という矛盾と不安からやってくるものである。

…でも絶望なんかする必要はないのだ。

 要は、お金などそんなになくとも、今も将来も安心して幸せを手に入れる「手段」を誰もが持てれば大丈夫なんじゃないでしょうか。…


 …現実的に考えて、今必死になって探さなきゃいけないのは、「お金以外」の我らを幸せにしてくれる資源・鉱脈(🟰家事)の発掘なんじゃないでしょうか?

 …我が国の経済の舵取りを担うエライ方々は、もしかして、家事をやっていないんじゃないだろうか?

稲垣えみ子『家事か地獄か』

前述の上司には加えて、育児をやっていなかったんじゃないだろうか?と問いたい。

そういう時代だった、と言われたらそこまで。もちろん、時代が変わったから、夜中まで働くことにこれほどの拒否反応が起こるのだろう。当時の主婦はどう思っていたのかは分からない。

この先、どんどん時代は変わっていく。
どうなるかなんて誰にも分からない。

でも、歳を重ねて老いや死に向かっていくのは誰もが同じ。

やっぱり老後は不安である。
それでも、小さく暮らしていれば、できるだけ長く、自分のことは自分でやれるし、そんな自分に誇りを持って生きられるはず。

細く長く。私は今後そんな生き方をしたいと思った。


家事を担っていない人にこそ、読んでもらいたい一冊。

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