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あじさいの「あ」は「あなただからいい」

読みもの「 あじさいの『あ』は

『あなただからいい』 」



深夜2時。
蛙は一体いつ寝るのでしょう。

田んぼに水が入ってから
かれこれずっと鳴いているような
気さえします。

一体いつ寝るのか。

昼間のうだる暑さの中
ふっと眠くなったりするのでしょうか。
なんせ、彼らは梅雨に元気。

さて
そんな梅雨時に

あちらこちらで
パッとマルチカラーの宝石のように
鮮やかに咲き誇る花があります。

あじさいです。

数年前のこと。

その年は「から梅雨」でした。

ピーカン照りの中
あじさいの名所と言われる場所に
出かけてはみたものの

山全体のあじさいが
見事に全員「げんなり」としていました。

まるで
炎天下で校長先生の
ロングなお話を聞いている
中学生のようなだるさ。

人間である私たち家族も
だんだんと口数少なく、

帰り際の茶屋で
あれよあれよという間に溶けた
かき氷由来の赤い水を
うらめしく啜り

「げんなり」と
帰路に着いたのでした。

その数日後。
雨がようやく降ったその日。

傘をさして
ポストに郵便を出しに行った道すがらに

私は
しとしと雨にぬれている
あじさいを見ました。

「あれ?!輝いている!」(笑)

やはりあじさいは
どんより曇りや、ちょっぴり雨の日にこそ
輝くのだなと納得しました。

雨の日にこそ輝く花が
あるなんて
神様は粋なことを考えたもんだ。

ピカピカ晴れステージが似合う人もいれば
しっとり雨ステージが似合う人もいる。

今いる場所で
今ひとつ咲ききれず
しっくりこなくても、

自分にもちゃんと
輝ける場所ってのがあるのかもしれない。

あじさいの「あ」は
「あなただからいい」の「あ」
なのかも。


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