あじさいの「あ」は「あなただからいい」
読みもの「 あじさいの『あ』は
『あなただからいい』 」
深夜2時。
蛙は一体いつ寝るのでしょう。
田んぼに水が入ってから
かれこれずっと鳴いているような
気さえします。
一体いつ寝るのか。
昼間のうだる暑さの中
ふっと眠くなったりするのでしょうか。
なんせ、彼らは梅雨に元気。
*
さて
そんな梅雨時に
あちらこちらで
パッとマルチカラーの宝石のように
鮮やかに咲き誇る花があります。
あじさいです。
*
数年前のこと。
その年は「から梅雨」でした。
ピーカン照りの中
あじさいの名所と言われる場所に
出かけてはみたものの
山全体のあじさいが
見事に全員「げんなり」としていました。
まるで
炎天下で校長先生の
ロングなお話を聞いている
中学生のようなだるさ。
人間である私たち家族も
だんだんと口数少なく、
帰り際の茶屋で
あれよあれよという間に溶けた
かき氷由来の赤い水を
うらめしく啜り
「げんなり」と
帰路に着いたのでした。
*
その数日後。
雨がようやく降ったその日。
傘をさして
ポストに郵便を出しに行った道すがらに
私は
しとしと雨にぬれている
あじさいを見ました。
「あれ?!輝いている!」(笑)
やはりあじさいは
どんより曇りや、ちょっぴり雨の日にこそ
輝くのだなと納得しました。
雨の日にこそ輝く花が
あるなんて
神様は粋なことを考えたもんだ。
*
ピカピカ晴れステージが似合う人もいれば
しっとり雨ステージが似合う人もいる。
今いる場所で
今ひとつ咲ききれず
しっくりこなくても、
自分にもちゃんと
輝ける場所ってのがあるのかもしれない。
あじさいの「あ」は
「あなただからいい」の「あ」
なのかも。