ツイッター小説に手を出してみる 1 鴉野 兄貴 2019年3月20日 19:31 おっさん冒険者が若返り美少女とイチャイチャするより無理せず怪我せずをモットーに二十年冒険者やっているおっさん冒険者がデビュー時から悪縁の妙齢の美女とつかず離れず程よくいちゃついてほどほどに活躍する話— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 19, 2019 「今日は何処に行くんだ。ダンジョンか」若者のからかいを愛想よく受け流しダッカードは歩く。腰には鉈と採集に使う道具類。大仰な剣などは既に質に預けている。『幸運な』ダッカードは冒険者である。齢は四〇歳。一五で都を出て二十五年間を冒険者として過ごしてきた。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 ほかの冒険者の多くは還らぬ人となり幸運な幾つかの仲間は不具を抱えて慈愛神殿に集う列の人になるさらにいくばくかの豪運のものは宿の用心棒や店を構えて破産し志半ばでそこそこの財を持って故郷に帰れたものは畑を耕す中ダッカードは無理せず安全にそして人のためになることを信条に生きてきた。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 冒険者の中では異端と言える。信仰厚くたまに拾ったお金や拾得物を彼が信仰する幸運神殿に寄進している姿を散見する。幸運神の数少ない『使徒』は拾得物の持ち主履歴を知る奇跡を授かっているというがダッカード以外の人々にとって幸運神殿の生臭坊主に使徒は居らずは周知の事実である。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 この世界の『幸運な』という言葉には『お人好し』『神々に愛されしもの』などと言う意味があるがダッカードはその名に恥じない男であった。当然未だ独身である。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 ダッカードは日が昇るより早く起きる。愛用の鉈を腰に、現地で手編みしたと思しきカゴに芝や焚き付けになる小枝などを詰めて、採集した薬草や鉱石は丁寧に処理して慎重に運ぶ。二十歳を過ぎてから素材採集を間違えたことはない。品質管理もよく卸し先はダッカードを喜んで迎える— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 酒やゲームの誘いをなんとか振り切り、引退し不具を抱えた友人たちに卸し先からもらった酒や煙草を持っていく。ダッカードは酒も煙草もやらない。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 ならば女遊びはどうかというと若い頃は先輩や悪友に無理矢理誘われて一度は体験したのだがその後は全くであり、明日の命が保証されず有り金は全て使い呑む打つ買うと過ごす冒険者仲間たちからは変わり者として通っている。ダッカードには恋人はいない。昔はいたらしいが今はいない。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 ダッカードの出入りする冒険者の店には齢にして四十一になる女店主がいる。荒くれどもの主としては若いが、看板娘だったのはもう二〇年も前のこと。長命種でもない彼女は同年輩の中では美貌を維持しているがこの世界における一般的感覚では行き遅れた婆である。ダッカードや彼女の歳なら孫がいて良い。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 「ようくたばりぞこない。飯できているわよ」ドンと残飯の作り直しを出して愛想もよこさないリンダにダッカードは丁寧にお礼をいうと「遅くなってすまない」と言って『まだ何故か暖かい』食物を口に運ぶ。「今日は角のダーマさんところのおばあちゃんに薬を作って持って行った」匙を口から離す。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 リンダが『何故か泥が入っていない』水を持ってくる。少しくたびれている目元に少しの笑みを含ませ、ダッカードをからかう。「あのおばあちゃん、ダッカードの憧れだったものね」二十五年も前の話を蒸し返されて無精髭を曇らせるダッカードに果物を押し付けるリンダ。「昼からも仕事するだろ」— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 ダッカードは果物を風邪を患った知人の息子に渡して道を歩く。ゴミだらけの道はダッカードが週末に掃除するようになって随分綺麗になった。彼が歩くと街の人々は挨拶してくれる。如何な厄介ごとでも命の危険がなくば引き受けてくれる彼は皆に慕われている。この世界において薪は『エルフの恵み』と— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 皆は言う。燃料を得るには森に入らねばならぬが伐採を気ままに行うわけにはいかないこの世界において人類の生活圏や産業の限界は限りなく制限されている。危険な森に入り、そこいらで拾った人を思わせる岩に祠を作り、エルフに感謝してわずかな薪を燃やすこの世界の人々にとって昼を過ぎて暖かい食べ物— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 は魔法の産物と言って良い。ダッカードはその暖かいサンドイッチを口に運び、エルフの祠に詣でて昼の仕事を始める。神殿の喜捨、夫を亡くした老婆の世話、慈愛神殿の塵や糞便掃除の手伝いなどだ。終われば慈愛神殿でサウナの施しを受けられる。ダッカードにとって唯一の癒しと言える— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 齢にして四十だがダッカードの身体は未だ均整を保っている。日頃の節制の賜物である。愛用の鉈はもはや身体の一部となり、腰に下げていてもその気配を見せない。昔は魔剣や聖鎧、鏡盾や神輪を持っていたようだがこの十年、質屋の飾りとなっている。若者たちはダッカードが質に預けた魔剣を眺めて呟く— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 「いつかおれがあの剣を買うんだ」若者たちは領主の城が買えるほどの値段の装備たちの主が普段からかっている中年冒険者と知らない。リンダは時々ダッカードをからかう若者たちをたしなめるが、若者たちは「おっかさんだけずるくね」とぼやいて酒を口に運ぶ。その酒はダッカードが護衛した商人が— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 運んだ代物である。リンダほどの美貌の持ち主が未だ独身なのは不思議な話だが、昔付き合っていた男が女遊びをして以来、言いよる男たちを退け今に至る。さすがに看板娘は返上し、今は三代目の看板娘であるミーナを育てているところだ。ミーナの両親は冒険者であったがある日を境に戻ってこない— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 皆は死んだというがダッカードは骨もなかったと報告している。またミーナを可愛がっていたことから捨てたわけでもないだろうとリンダは述べており、ミーナは少々幼いが看板娘としての職と神殿の手習いとの往復を繰り返しつつ両親を待って五年が経つ。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 最近おもちゃを喜ばなくなったミーナだがダッカードが帰るとじゃれついてくる。それを呆れて眺めるリンダがまた残り物の作り直しを二人に渡して夕刻はすぎていく。『最初の剣士』を讃える歌と皆の乾杯を持って営業を終えたリンダは一人寂しい夜を過ごす。昔は彼女の部屋に忍び込もうとする男もいたが— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 最近は全くない。とは言っても衰えたとはいえこの美貌である。用心しない理由はない。リンダの部屋の扉をノックする音にリンダは眉を寄せる。明日は早いのに誰だ。「リンダ。飲まないか」あんた呑まないだろと悪態をついてリンダは急いで白粉をはたく。多少のシミやシワもあるがこの歳なら愛嬌だ。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 赤らんだ頰は酒が残っているからだとリンダは年甲斐なく想って戸を開く。「いい酒を貰えたからリンダに」ダッカードが入ってくる。リンダはダッカードが自分を抱くことを若い頃は警戒し、少し歳を取ってからは期待し、今ではすっかり諦めている。ダッカードは彼女を親友か何かと思っているのだろう— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 かつての恋人はたった一回の仲違いから彼女を抱いたことはない。女遊びもしない。男としてどう過ごしているのか少々疑問ではあるがそれがダッカードという男である。「酒だけ?」思わずついてしまった悪態に「いいつまみもある」干し肉を手に子供のように笑うダッカード。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 歴戦の冒険者であるダッカードがこのような笑みを見せるのはリンダの知る限り一人しかいない。「仕方ないわね。いただくわよ」苦笑いしてダッカードを寝台に座らせ、リンダは水を取りに行く— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 月が夜空を照らし星が見守る中、かつての恋人たちは盃を手に明日の幸せを祈り合う。太陽がまた昇る朝までのわずかな時を楽しみ、また夜を待つ。— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 「ダッカード、寝不足」二人を父母のように慕う少女が呆れている。リンダは既にうつらうつら。「リンダ、仕事してよ」大きな桶を手に少女はぼやく。「さっさとくっつけ。バカ親ども」(終わり)— 鴉野 兄貴@自宅毒臭豚居NEET→警備バイト (@KarasunoAniki) March 20, 2019 ダウンロード copy #小説 #Twitter #ファンタジー小説 #異世界 #ラブコメ #ハイファンタジー #冒険者 #中年独女 1 自称元貸自転車屋 武術小説女装と多芸にして無能な放送大学生 記事をサポート