ずっと忘れないよ

昔に言われた言葉ほど残っている。

小学校の時、運動会で徒競走に出ることになった。私はもともと走るのがだいだいだいの苦手で、すっごく遅くて、50メートル10秒とかだったからあまり乗り気ではなかった。
でも、1人一回はでなきゃいけない種目だったから、嫌々参加した。

嫌々参加したものの、私は練習した。
学校の先生が授業で少し面倒みてくれたからだ。
私個人にというよりは、そういう、頑張ろうって言う雰囲気が全体であって、先生は、とにかく頑張るんだよって、苦手かもしれないけど精一杯やるんだよって言ってくれた。
体育の授業はびりっけつだったけど全力で走った。先生は、私が目一杯走った後、アドバイスをちょっとずつくれた。怒鳴ったりしなかった、否定したりしなかった。

運動も運動会も苦手だったけど、精一杯頑張ろうと思えた。

運動会当日、徒競走のプログラムがきた。 私は全力で走った。正直今思い出しても手を抜いたなんてことはなかった。私の精一杯だった。

結果はもちろんドベだった。
けど私はそんなに不服じゃなかった。
すごく苦手だったけど、全力で走ったって思えたから。小学生の私には大きかった。
そして1番の理由は、担任の先生が「よく頑張ったすごいね!!」と褒めてくれたからだ。
私は嬉しかった。結果こそ出なかったのだけど、全力でやりきったのを見てくれていたのが嬉しかった。あの時の先生の声を覚えている。私の頰を包みながら笑顔で言ってくれたことを覚えいる。

私は息切れしていて、あまり喋れなかった。              でも心がすっきりしていて、なんとなく心地が良くて「走るのも悪くないなあ」なんてことを我ながら調子よく思っていた。単純だったけど大切なことだったと今は思う。

そのあと、両親が私のもとに来てくれた。                まだ息切れしていたから、あまり話はしなかったのだけど、父親が私に言った。


「あれはもう少し頑張れただろ」

ずっと忘れないよ。

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