貴方に仕えると決めた夜
○窓から紅い月の光が差し込む、店奥のテーブルの席にて
ヴラド・アルカード「ふぅ、今宵の紅い月を観ながら飲む血のワインは格別に美味い」
ルナ・ダンピール「ふふふ、そうですわねご主人様」(全く、呑気で可愛いものですね。私は貴方に近づいたのは殺す為だというのに、それを知らずにワインを楽しむだなんて……)
ヴラド「ルナ? どうしたんだい?」
ルナ「いえ、何でもございませんご主人様。それよりも、今宵はハロウィンですわね。ご主人様は何か仮装でもしないのですか?」
ヴラド「何を言っているんだルナ? 俺は吸血鬼、人間のように仮装などせずとも充分にハロウィンを満喫出来るではないか」
ルナ「そういえばそうでしたね。申し訳ございません。生憎私は人間とのハーフなものですから、純血のご主人様よりも考え方が人間寄りなのかも……」
ヴラド「まあいいさ。それよりも_________そんな茶番で誤魔化せるとでも思ったか? 俺も随分と舐められたものだな」
ルナ「あの、ご主人様。一体何の話をしていらっしゃるのでしょうか?」
ヴラド「しらばっくれるな。俺が何も知らないとでも思ったか? 吸血鬼ハンター。お前は俺を殺しに来たんだろう?」
○ヴラド、銀のナイフをルナの目の前でチラつかせる。ルナ、慌ててスカートの下のレッグホルスターを探る。
ルナ「な!? いつの間に!?」
ヴラド「どうやら俺を甘く見過ぎた様だな。ルナ」
ルナ「……」
ヴラド(さて、どう来る?)
ルナ「……負けました」
ヴラド「え?」
ルナ「ターゲットにこちらが命を狙っている事を見破られた上に、武器を封じられた状態では私に勝ち目はありません。それに私は貴方と過ごすうちに、その……いつの間にか貴方に絆され、迷いが生まれてしまいました。その時点で私は既に吸血鬼ハンター失格です。貴方は勝者で私は敗者、どうぞ煮るなり焼くなり好きにして下さいませ」
ヴラド「……そうか。ならこれまで同様、俺に仕えろ」
ルナ「え?」
ヴラド「俺は最初からお前が俺を殺す為に近づいたということを知っていた。あえてお前を招き入れたのは最初は興味本位だったが……お前と今まで過ごしてみたら、やはり俺の従者はお前しかいないと思えてきてだな……」
ルナ「えぇ!? ……こんな私で良いのですか!? 私は貴方を騙して殺そうとしたというのに……」
ヴラド「この俺自身が、お前が良いって言っているんだよ!」
ルナ「……うぅ、ありがとうございます! そして改めて、これから末永くよろしくお願い致します、ご主人様!」(やっぱり、私はこの人に勝てそうにありませんね)
○ハロウィンの夜、私は貴方に生涯忠誠を誓うと心に決めた。
登場人物
ヴラド・アルカード:吸血鬼の男。500歳以上。銀髪紅眼の美丈夫。
ルナ・ダンピール:ダンピール(吸血鬼と人間のハーフ)の美女。年齢不詳。黒髪紅眼の吸血鬼ハンター。
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